黒豹拾いました

おーか

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村育ちで自然が好きだった俺は独り立ちするなり、金を貯め、ようやく自分の城を手に入れた。まぁ、小さな城になってしまったが…。

それでも十代にして、森の辺りにキッチンとベッド、トイレ、お風呂場といった最小限のみの家を建てることができた。材料集めなどもしたからな。その甲斐あって、安く済んだのは良かった。

今日からここに住むことができるのだと、上機嫌で家の掃除をしていた。それが済むと、森に散歩がてら、食材採取に向かう。

昼間の穏やかな雰囲気の森は木漏れ日が差し込んでいる。散歩日和だな。が、小動物の気配がない。森の様子がどこかおかしい。今の所何もないが…進んでみるか。

警戒心を強めつつ、小さな危険のサインも見落とさないように、意識を巡らせる。森の中腹辺りまで来た頃、風に流されてきた臭い。

……血の香りがする…。何か魔物でも出たか…?このあたりに強い魔物はそう居ない筈だが…。どちらにしろ、自身の住んでいる森の様子は知っておかなくてならない。どうにもならないにしても冒険者ギルドに報告しなくてはならない。

危険は承知で血の匂いの濃い方へと歩をすすめる。剣に手を掛け、気配を出来るだけ消し去って近づいて茂みから顔を覗かせる。

「なっ…」

「みー!…みー…」

「これは…」

血みどろになりながらも、腕の中に囲いこむようにして子猫を守ったらしい大型の肉食獣らしきものが倒れていた…。もう少し早ければ助けてやれたのかもしれない。しかし発見した時にはもうすでに息絶えていた。

赤子だろう子猫はみーみーと鳴きながら、親の亡き骸の側にいた。しかし子猫の方も怪我をしているらしいな。

「お前、大丈夫か?」

「み…?」

「もう亡くなってる…すまないが助けてやれない。けれどお前のことは助けてやれる。一緒にくるか?」

言葉が伝わっているのか分からないが、暫し亡き骸を見つめた子猫は俺の方に歩いてきた。確かめるように見つめれば確かな意思が感じられた。

「抱き上げるぞ。お前のスピードで進んでいると日が暮れるかもしれないからな。」

「みー」

返事が返ってきたので手のひらに収まりそうな小柄な猫を抱き上げた。そして傍らにある亡き骸を収納魔法に収める。あとできちんと弔ってやりたいからな。

運ばれながら腕の中で眠ってしまった子猫。随分汚れているし疲れていたんだろう。帰ったら洗って手当てしてやらないとな。帰り着いた頃には少し日も暮れて来ていた。

すぐに湯を沸かし、子猫を洗う。抱き上げてみてわかったが、そこそこの大きさだ。そこまで小さな子でも無いのかもしれない。土で汚れていたのを洗い流すと美しい漆黒の毛が姿を表した。

「ふぅ…よし、綺麗になったな。」

生活魔法で乾かしてやって、手当を終えた。俺は冒険者ギルドに報告に行かなくてはならないんだが…ひとりぼっちでこの子を置いていくのもなぁ…と迷った末、結局連れて行くことにした。

子猫を抱いて歩き出す。街まではそこまで距離はないが、もう夕暮れだからな、急いだほうがいいだろう。日も完全に落ちる頃街に辿り着いた。子猫も寝ているし揺らすのも可哀想だと走れなかったので、1時間ほどかかってしまった。

慣れたようにギルドに立ち入る。一瞬視線が集まったが俺だとわかるとすぐに視線が散っていく。まっすぐ受付に向かう。座ってるのはいつもの受付嬢だ。

「タカミ様、このような時間に珍しいですね。本日のご用件承ります」

「ああ、森で少し気になることがあって、その報告に来た」

「かしこまりました。少々お待ちください。」

そう言って奥に下がって行った受付嬢は、上司を伴って帰ってきた。そして俺はその上司に直接報告するように言われ、部屋に通された。

「森で気になることがあったのだそうですね。詳しくお聞かせ願えますか?」

「ああ、今日森へ行ったらとても静かで生き物の気配を感じなかった。そのまま奥へ進むと大型肉食獣の死体とこの子がいた。何か凶暴な魔物なんかがやってきた可能性もある。」

「…なるほど…情報提供ありがとうございます。こちらで調査させていただきますので、森へは近付かれませんようお願い致します」

「ああ、わかった。暫くは街に留まるよ」

「ええ、それがいいでしょう。それから情報提供についての謝礼はまた後日お支払させていただきます」

「わかった」

これにて報告の義務は果たしたので、ギルドを出る。そして自分の城を得るまで世話になっていた宿に向かった。家が完成して早々外泊とはなぁ…。だが命には替えられない。調査が終わるまで街で大人しくしていることにしよう。

それにしてもよく寝ている。ここまで全く起きる気配もない。過酷な経験をしたのだから仕方がないか。次に起きたときには美味しいものを沢山食わせてやろう。俺もさっさと休むか。 



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