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しおりを挟む神殿の中もまだまだ人が多いけれど、獣神様のところは少し並べばお祈り出来そうだった。家族たちと一緒に並んで、一番前までやってきた。相変わらず、獣神様とは似ていない像の前に立つ。そして膝をついて手を組む。
普段は獣神様と心の中で会話するだけだけれど、今日は違っていた。いつの間にか転生前に獣神様と話した場所に来ていた。確かに見覚えのある場所で、目の前にはもふもふの大きな猫様がいたのだった。
「獣神様ー!!お久しぶりです!が、取り敢えず撫でていいですか?」
「久しぶりだなククリ。ふふっ構わん。存分に撫でるといい。」
「やった!んふふー…はぁ…しあわせ…」
「ぐるるる…」
存分に撫で回し、それでも離れがたい。大きな猫様からしか得られないものがある。全身を包んでくれるもふもふ最高…。
「ククリ、そろそろよいか?」
「うん、獣神様」
「まずは7歳おめでとう。」
「ありがとうございます!」
「記念だからな、会えるように力を貯めておいたのだ。久しぶりに会えて嬉しいぞ。」
そっか!今日のために準備していてくれたんだな。僕が会いたいと思っていたのも分かっていて、力を貯めていてくれたんだろう。本当に優しい。獣神様は僕に甘いからな。
「僕もずっと会いたかった!」
「そうかそうか。」
「話が出来るだけでも嬉しかったけど、やっぱり獣神様の姿が見えないと寂しくて…」
「ははは!我からはククリの姿が見えておる。ずっと見守っておるからな。」
「そうなんですね、じゃあいつでも見られてるってことですか?」
「流石にいつでも、と言うわけではないな。我にもやる事があるからな。」
「そうですよね…」
「だが、助けが欲しいときはいつでも呼ぶといい。ククリは我の愛し子だからな。」
「愛し子…」
「ああ、そうじゃ。我の特別目を掛けている子だ。まぁ我の信者は皆、大切に思っておるがな。」
「獣神様の特別…ふふっ嬉しい。」
獣神様に助けを求めなくてはならないような事にはならないようにしたいけれど、獣神様に目を掛けてもらっているのは嬉しい。こんな風に話せるのも、抱き着いても許して貰えてるのも、愛し子だからだとしたら、これからも獣神様に見放されないように慎ましく生きよう。
それからも沢山のお話をして、体感1時間くらいだろうか、あっという間に終わりの時間が来てしまった。もう僕がここにいられる時間は終わりみたいだ。
「ではな、ククリ。沢山話せて良かった。」
「はい、獣神様!また!」
そうして僕の意識は、神殿の中の獣神様の前に戻ってきた。時は殆ど進んでいないみたいで、誰も疑問に思わなかったみたいだ。僕だけの特別な時は、誰にも内緒にしておこう。獣神様との、内緒の楽しい時間は多分人に話して良いものじゃないだろうから。
「帰ろうか、ククリ」
「うん、スー兄」
そう言って僕の手を取るスー兄に従って帰路を歩き始める。
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