52 / 87
52
しおりを挟む街中の子供たちが集まってきている。時間にはまだ早いけれど、やっぱり楽しみだもんね。かくいう僕だってこうして早朝に目覚めて、こうして早めに神殿に馳せ参じている。
せっかく早くついたから、先に獣神様にご挨拶を、と思ったんだけど、今は祝福の準備で神殿には立ち入れないんだってさ。というわけで特にやることもないまま、スキル授与の祝福が始まる時間まで待っていく。
「ククリは獣神様の熱心にお祈りしてるし、きっと良いスキルを貰えるよ。」
「うん、ありがとうスー兄。」
「今更だけど、守護石はちゃんと持ってるね?」
「うん、ここにあるよ。」
「ん、なら大丈夫だね。」
ママとパパもクーも付き添いで来てくれているから、僕らから一定の距離を置きつつも注目が集まっている。やはり人の視線や気配はあまり得意ではなくて、視線を遮るように立ってくれる皆の気遣いが嬉しい。
「クー、撫でさせてー」
「こん」
一心不乱になでていると少しずつ心が落ち着いていく。クーは大人しく僕に撫でられてくれていた。そうしているうちに、神官さんが出てきてスキル授与を受ける人の受付と案内を開始した。最後の方に入ることにして、クーのもふもふに埋もれて過ごす。
神殿の大広間に集まった家族たち。そして、祝福を受ける予定の子供たちが揃っている事を確認したらしい神官さんが祝福を開始する旨を伝える。
「お待たせいたしました。これより祝福の儀を執り行います。7歳になられたお子様は前に集まってください。」
「いってらっしゃい!」
「うん、いってくる。」
少し緊張した面持ちで、少年少女たちが前に歩いていく。その中に僕も混じって、家族から離れて前へ出る。僕は緊張して、少し足が震える。けれど大丈夫だというようにスー兄が背を押してくれて、少し落ち着いた。
そして神官さんの指示に従って、各々守護石を取り出し、祈りの姿勢を取る。僕も手の中に守護石を握り、祈る。みんなが祈ると、守護石が光始める。僕の手の中の守護石も光を放つ。
光が収まったら祝福は終わりで、光が収まると子供たちは親元に戻っていく。僕も見守ってくれていたみんなの所へ戻る。そしてその後は各々スキルの確認をしたり、祝福をくださった神様にお礼をしたりする。
「おかえりククリ」
「うん!ただいま」
「じゃあ改めてお祈りをして帰るか。」
「うん!」
「ククリはどんなスキル貰ったのかな?楽しみだねぇ!」
「ふふっスー兄の方がうれしそうだね。」
「うん、ククリのお祝い事だからね。」
ふにゃふにゃの笑顔を浮かべるスー兄が可愛い。手を繋いでくれて、そのまま手を引かれる。その途中横から声がかかる。見た目的にはスー兄と同年代くらいだろう。
「おい、お前本当にスイか?」
「……ククリ行こう。」
「無視かよ!!本人だなこりゃ…」
「だぁれ?」
「ふふっククリは知らなくてもいいんだよ。俺も知らない人だし。」
「でも…スー兄のこと知ってるみたいだったけど…」
「チッ…こんな時に声掛けやがって…。」
スー兄が小声で何かをぼやく。全然聞き取れなかったけど、なんて言ったんだろ?スー兄の知り合いなのかな。元気な人っぽい。赤髪で筋肉質な感じだ。
「おー、可愛い子、俺はスイの同級生のレンドーレだ。よろしくな!」
「…スー兄がいつもお世話になってます。スー兄の弟のククリです。」
「おう…なんかすげぇ丁寧な挨拶するな。あのスイの弟なら、そんなもんか?」
「黙りなよ。早くどっか行って。ククリに関わらないで。」
「お前…弟溺愛してるって本当だったんだな。」
「うるさい。ククリが可愛いのは当たり前だし、可愛い子を可愛がるのも当たり前でしょ。」
「ははは!面白れー!あの冷血王子がこんなこと言うなんてな!」
「はぁ…面倒くさい。…ククリ、行こう。」
「うん。」
スー兄はなんだか嫌そうだったので、スー兄に従って離れることにした。けど、今度会えたら学校でのスー兄のこととか聞いてみたいな。スー兄って学校でのことほとんど話してくれないし。
60
お気に入りに追加
963
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
オタクおばさん転生する
ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。
天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。
投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)
氷の華を溶かしたら
こむぎダック
BL
ラリス王国。
男女問わず、子供を産む事ができる世界。
前世の記憶を残したまま、転生を繰り返して来たキャニス。何度生まれ変わっても、誰からも愛されず、裏切られることに疲れ切ってしまったキャニスは、今世では、誰も愛さず何も期待しないと心に決め、笑わない氷華の貴公子と言われる様になった。
ラリス王国の第一王子ナリウスの婚約者として、王子妃教育を受けて居たが、手癖の悪い第一王子から、冷たい態度を取られ続け、とうとう婚約破棄に。
そして、密かにキャニスに、想いを寄せて居た第二王子カリストが、キャニスへの贖罪と初恋を実らせる為に奔走し始める。
その頃、母国の騒ぎから逃れ、隣国に滞在していたキャニスは、隣国の王子シェルビーからの熱烈な求愛を受けることに。
初恋を拗らせたカリストとシェルビー。
キャニスの氷った心を溶かす事ができるのは、どちらか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる