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街中の子供たちが集まってきている。時間にはまだ早いけれど、やっぱり楽しみだもんね。かくいう僕だってこうして早朝に目覚めて、こうして早めに神殿に馳せ参じている。

せっかく早くついたから、先に獣神様にご挨拶を、と思ったんだけど、今は祝福の準備で神殿には立ち入れないんだってさ。というわけで特にやることもないまま、スキル授与の祝福が始まる時間まで待っていく。

「ククリは獣神様の熱心にお祈りしてるし、きっと良いスキルを貰えるよ。」

「うん、ありがとうスー兄。」

「今更だけど、守護石はちゃんと持ってるね?」

「うん、ここにあるよ。」

「ん、なら大丈夫だね。」

ママとパパもクーも付き添いで来てくれているから、僕らから一定の距離を置きつつも注目が集まっている。やはり人の視線や気配はあまり得意ではなくて、視線を遮るように立ってくれる皆の気遣いが嬉しい。

「クー、撫でさせてー」

「こん」

一心不乱になでていると少しずつ心が落ち着いていく。クーは大人しく僕に撫でられてくれていた。そうしているうちに、神官さんが出てきてスキル授与を受ける人の受付と案内を開始した。最後の方に入ることにして、クーのもふもふに埋もれて過ごす。

神殿の大広間に集まった家族たち。そして、祝福を受ける予定の子供たちが揃っている事を確認したらしい神官さんが祝福を開始する旨を伝える。

「お待たせいたしました。これより祝福の儀を執り行います。7歳になられたお子様は前に集まってください。」

「いってらっしゃい!」

「うん、いってくる。」

少し緊張した面持ちで、少年少女たちが前に歩いていく。その中に僕も混じって、家族から離れて前へ出る。僕は緊張して、少し足が震える。けれど大丈夫だというようにスー兄が背を押してくれて、少し落ち着いた。

そして神官さんの指示に従って、各々守護石を取り出し、祈りの姿勢を取る。僕も手の中に守護石を握り、祈る。みんなが祈ると、守護石が光始める。僕の手の中の守護石も光を放つ。

光が収まったら祝福は終わりで、光が収まると子供たちは親元に戻っていく。僕も見守ってくれていたみんなの所へ戻る。そしてその後は各々スキルの確認をしたり、祝福をくださった神様にお礼をしたりする。

「おかえりククリ」

「うん!ただいま」

「じゃあ改めてお祈りをして帰るか。」

「うん!」

「ククリはどんなスキル貰ったのかな?楽しみだねぇ!」

「ふふっスー兄の方がうれしそうだね。」

「うん、ククリのお祝い事だからね。」

ふにゃふにゃの笑顔を浮かべるスー兄が可愛い。手を繋いでくれて、そのまま手を引かれる。その途中横から声がかかる。見た目的にはスー兄と同年代くらいだろう。

「おい、お前本当にスイか?」

「……ククリ行こう。」

「無視かよ!!本人だなこりゃ…」

「だぁれ?」

「ふふっククリは知らなくてもいいんだよ。俺も知らない人だし。」

「でも…スー兄のこと知ってるみたいだったけど…」

「チッ…こんな時に声掛けやがって…。」

スー兄が小声で何かをぼやく。全然聞き取れなかったけど、なんて言ったんだろ?スー兄の知り合いなのかな。元気な人っぽい。赤髪で筋肉質な感じだ。

「おー、可愛い子、俺はスイの同級生のレンドーレだ。よろしくな!」

「…スー兄がいつもお世話になってます。スー兄の弟のククリです。」

「おう…なんかすげぇ丁寧な挨拶するな。あのスイの弟なら、そんなもんか?」

「黙りなよ。早くどっか行って。ククリに関わらないで。」

「お前…弟溺愛してるって本当だったんだな。」

「うるさい。ククリが可愛いのは当たり前だし、可愛い子を可愛がるのも当たり前でしょ。」

「ははは!面白れー!あの冷血王子がこんなこと言うなんてな!」

「はぁ…面倒くさい。…ククリ、行こう。」

「うん。」

スー兄はなんだか嫌そうだったので、スー兄に従って離れることにした。けど、今度会えたら学校でのスー兄のこととか聞いてみたいな。スー兄って学校でのことほとんど話してくれないし。









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