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僕は小さい頃から動物達が大好きだった。だがしかし、重度のアレルギー持ちで、動物と触れ合うなど以ての外。近づくだけでも難しい。家族にはもふもふとした動物に近づこうとする度に止められた。触りたい、仲良くなりたい、という欲ばかりが募っていく。

大きくなる頃には何度も痛い目をみた経験もあって、危険性も理解していたし、無理に近付いたりはしなくなっていた。それでも動画などで動物を見るのだけはやめられない。

今だって高校の昼休憩にスマホで猫の癒やし動画を見ている。猫じゃらしに飛びつく猫様。気まぐれに寄ってきて、こちらから近付けばするりと逃げ出す。そんな姿が愛らしい。あー、猫飼いたい…。でもイヌも可愛いんだよなぁ。あんなに懐いて貰えたらもうすごく可愛がる自信がある。

「…はぁ…僕だってもふもふしたい…したいよぉ…」

「まーた動物の動画かよ。お前ってホント動物好きだよなー。飼育員とか目指すのかよ!」

「あはは、まぁね。」

高校に入って知り合った友人未満の知り合いに声をかけられたのを、軽く流す。

飼育員…そんな憧れの職業につけたらどんなに良かったか。だが体質の問題で不可能なことは分かりきっている。叶わない夢は見ない主義なのだ。それでも好きでいるのは辞められず、今も未練がましく癒し系動物動画を見ている訳だけど。

今日も今日とて退屈な授業を受けて、部活にも入っていない僕はさっさと家へと帰る。帰宅する道中、ふと視界に入った野良猫。真っ黒な美しい毛並みに目を奪われる。目で追っていくとその子が道路に飛び出していく。

道路には勿論車が走っている。その子は驚いたようでその場で止まってしまう。迫る車。今なら助けられる!僕は咄嗟に駆け出す。そして猫を抱き抱えて車を避けることには何とか成功した。

猫は僕の腕の中でもぞもぞと動き、元気に走っていく。それを見送る僕はといえば、地面に打ち付けた身体が痛くてたまらない。意識が朦朧としてきた。頭も打った気がするので、打ちどころが悪かったのかもしれない…。

これで人生終わり…?

ああ、でも最後に良いことをして死ぬなんて悪くない。家族を悲しませるのは本意ではない。けれど、僕はこれでいいと思えた。思ってしまった。だってあの場で猫を見捨てる選択をしたら一生後悔して生きていくことになると思ったのだ。

親不孝者でごめん…。大切に育てて貰ったのに恩返し出来なかったなぁ。でも猫を助けて死んだと知ったら僕らしいと、納得してくれる気もする。



~~~~よ
~~~~~!!
いい加減目を開けよ!!

そんな声が頭に響いて微睡んでいた意識が覚醒する。ゆっくりと目を開く。目を開けたものの、状況がよく分からない。ここはどこで、目の前にいる大きな猫様はなんだ…?

夢か?夢なら取り敢えず撫でておこう。暖かく、ふわりとした感触。はわわ…これが夢なら覚めないでくれ…。恋い焦がれた猫様の毛並み最高。いつまでも撫でてられる。

「おい…いつまでそうしているのだ?確かに我の毛並みは魅惑的だが、そろそろ話をするぞ。」

「……いま喋りました?」

「ああ、我は獣神だからな、話すぞ。」

「そうなんですね、スリスリしてもいいですか?」

「…真剣に話を聞け。」

「やっぱり駄目ですか…?」

「そ、そんなにしょげるでない!!我が悪いことをしているようではないか!もう良い!好きにしろ!」

「っ!!良いんですね!では…失礼して…」

ふわぁぁぁ…久し振りのこの感覚…たまらん…もふもふを摂取するには苦しみが伴ったはずなのに、今日はいつまで経っても大丈夫だ。やはりこれは夢!こんなにリアルな感触があるなんて不思議だけれど、堪能しておかないと勿体無い。

もふもふもふもふもふもふ…すぅー…はぁ…猫は吸うもの…。もふもふもふもふ…

猫様も喉を鳴らして喜んでくれている。なんてウィンウィンな関係!もっと撫でさせて頂こう。

「グルルル…ハッ!おい、いつまでやっておるのだ…そろそろいいだろう!離れよ!」

「っ!待って…あと、後少しだけ…御慈悲を!猫様!」

「も、もう嫌じゃ!」

「でも気持ちよさそうに撫でられてくれてたじゃないですか…」

「駄目なのだ!!なでられるために呼んだのではない!」

「むぅ…分かりました…」

距離をおいて、猫様改め、獣神様と向き合う。そして訳のわからないこの状況を説明して貰う。







_________

おまけ 撫でられる獣神様

くっ…あの人間…動物と触れ合えていなかったというのに撫でるのが上手すぎる…。気持ちよかったぁ!もっと撫でられていたくなってしまったではないか!不覚にも喉を鳴らして喜んでしまった。恥ずかしい///

だがしかし、あの人間へのご褒美としてまた撫でられてやるのも悪くないな、うん。決して我がまた撫でられたいわけではない。ない筈だ…。

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