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しおりを挟む今日は三日月かぁ。綺麗だなぁ。ぼんやりとそんなことを考えながら夜空を見上げる。
「眠れないの?香夜」
「んー、なんとなく目が冴えちゃって」
「そっか。まだ起きてるなら上着取ってくる。体冷えるといけないし」
「うん、そうだね。明日は結婚式なのに風邪でも引いたら大変だもんね」
「ん、どうぞ」
「ありがと。」
窓から月を眺めていたら秋夜が上着かけてくれて、そのうえ暖かい飲み物も持ってきてくれた。いたれりつくせりだね。その後、後ろから抱き締められた。
「ねぇ秋夜、明日からは家族だね」
「ん、そうだね。やっと家族になれる」
「うん…えへへ…なんか緊張…?してるみたい」
「ん…大丈夫だよ。香夜愛してる」
「俺も秋夜のこと愛してる。」
「ふふっ可愛いね。耳赤くなってる。」
「もー!頑張って言ったのに!ばかぁ!」
「ん、ごめん。言われ慣れてないから…俺も照れた」
「…そっか。秋夜も照れたんだ。ふふっ」
「…そろそろ寝るよ。明日も早いから」
「うん、そうだね」
ベッドに移動して横になるけど、眠気はやってこない。見兼ねた秋夜が寝かしつけるようにとんとんと背を叩いてくれる。秋夜の体温と大好きな香りにだんだんと落ち着いてきた。寝れそう…。
「おやすみ」
「…おや…す…み…」
今日は明日に備えてエステや美容院、眉毛サロンなんかに行って、身なりを整えていたからね。疲れていたんだろう。眠れないと言っていたが、直ぐに眠ってしまった。俺に身を預け眠る香夜の首に手を這わせる。
細い首筋に大きく付く歯型。愛しい香夜が俺のものだという証。
明日には法的にも俺の奥さんだ。自由だった香夜を縛り付けていっている自覚はある。もっと嫌がると思ったんだけど…香夜は俺のことを受け入れ許してくれる。甘えている自覚はあるけど、直すつもりもない。
「もっともっと…甘やかして依存させたい…香夜…大好き」
俺の名前を呼ぶ声が、俺を見つめる視線が、俺に触れる体温が、俺を誘惑する香りが…全てが俺を好きだと示してくれる。それでも束縛していないと気が済まないんだから…俺は相当執着が強いんだろうな。我ながら呆れるくらいだ。
明日は家族だけの式だ。そして正式に入籍も終わらせる。そしてまた来週友人を招待しての式の予定だ。天気も晴れのようだし、いい日になりそうだね。
目覚めると隣には朝日に照らされてキラキラしている秋夜がいた。銀に輝く綺麗な髪だよなぁ。それにこの顔立ちも…今は閉じられている紫の瞳も。全てが大好きで。本当は俺みたいな平凡な男が相手にされるわけ無い。けれどこんなにも愛されてる。
「ふふっ幸せだな。ありがと秋夜。チュッ」
「ん、そんなんじゃ足りないよ香夜」
腰砕けになるくらいキスされて、満足したらしい秋夜が先に起き出していった。
「おはよう香夜。ご飯作っとくね」
「…はぁ…はぁ…おはよ…ありがと」
俺が起き出した頃には、目玉焼きにベーコンが添えられ、スープ、パンの並ぶ朝食が完成していた。その朝食を食べて、準備のために会場へ向かう。
「シオンさん、春夜さんおはようございます!」
「おはよー!」「おはよぉ」
「楽しみですね!」
「うん!めっちゃ晴れてるし、結婚式日和だね!ハルが晴れ男なお陰かなぁ?」
「俺どっちかといえば雨男だけどねぇ。まぁ晴れてよかったよ。」
「香夜、行くよ」
「あ、うん。じゃあまたあとで!」
「うん!あとで写真撮ってもらおうねー!」
「はいはい、シオンも行くよぉ。可愛くしてあげるからねぇ」
「うん!ハルありがと」
秋夜に丁寧に化粧を施され、髪もセットされる。どうやら俺のことを誰にも触られたく無かったらしいので、任せることにした。俺も秋夜の衣装選んだし、見様見真似で秋夜の髪もセットした。うん…まぁまぁじゃない?とはいえ、素の秋夜の良さ故だろうな。
隣の部屋で同じようにセットなんかをしていたシオンさんたちに会う。父と母達も控え室に来てくれて、一緒に写真を撮った。
「シオンさん!すっごい可愛いー!!」
「香夜、あんまり動かないの。崩れちゃうよ」
「あ!うん」
「香夜ちゃんも可愛いよ!えへへ!写真撮ってハル」
「うん、じゃあ並んでねぇ」
シオンさんとのツーショットも秋夜とのツーショットも、4人でも、両親とも撮って、満足した。絶対良い写真だよね。よし、いっぱい部屋に飾ろ!!
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