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しおりを挟む"おねだり"したらいいっていう鳴海の言ったことは正しかったし、秋夜は俺の言うとおりにしてくれた。まぁ恥ずかしかったけど…命には代えられない。秋夜が殺そうとするのをやめてくれたのは良かったんだけど…俺は別の問題に直面していた…。
誘拐犯たちの命は救われたが、今度は俺が危機に直面している。簡単に言えば、どうやら秋夜はラットになっているらしい。まるで猛獣に睨まれている気分だ。学校の部屋に戻るのかと思ったけど、車の中から見ている景色は見慣れないものになっていく。
どうやらたどり着く先はホテルのようだ。春夜さんへの電話でそう話していたから間違いは無さそうだ。高級ホテルだけあって、設備が整っていてΩやαのフェロモンも漏れないように設計されているのだそう。ラットを起こしている以上、すぐにでもどこかに入って落ち着いた方がいい。このホテルは春夜さんが手配してくれたらしい。今回の件の後始末も任せたと言っていたから、そっちの心配はしなくてもいいんだけど。
「秋夜、ここ…」
「黙ってて」
「うん…」
フロントでのやり取りもそこそこに、支配人が出てきてすぐに部屋に通された。電話すれば色々頼めるみたい。俺をおいて隣の部屋に行こうとする秋夜。ハァハァ吐息を切らしている…まるで獲物を前にしてよだれを垂らす猛獣のようだ。
「…香夜…ごめん…俺…はぁ…あっちの部屋にいるから…絶対に近づかないで…」
「えぇっ!!俺も一緒に…」
「…だめ…」
「なんで…?」
「…ふぅ…酷いことしたくない…から…」
「…いいよ…それで秋夜が楽になるなら…もともと今回のことは俺のせいだし…」
ちょっと怖い…でも…俺は秋夜のこと信じてる。それに、一人で過ごすのはキツイって知ってる。Ωになって日が浅いけど、それでもヒートの辛さはわかってる。こちらを見る瞳の中に普段の秋夜の優しさが垣間見える。
たぶん相当我慢してくれている。ぎゅっと握られた手を見ても明らかだ。ふるふると震えてとても力が込められているのが分かる。その手を取って、そのままベッドに倒れ込む。秋夜もろとも倒れ込んだので、二人分の重みにベッドが沈みこむ。
咄嗟に手をついてこちらに体重をかけないようにしてくれた秋夜は流石だな。床ドンみたいな姿勢だ。顔も近くなってドキドキする。けれどまだだ。俺はそのまま誘惑を続けることにする。自分の服に手をかける。そしてボタンを外していく。
効果はあったらしい。秋夜が俺の服に手をかけて、力を込める。そしてそのまま服は無残に引き裂かれた。まぁ、俺が煽ったんだけど。
「…くそっ…もう知らないから…」
「うん…来て秋夜」
食べられるみたいなキス。激しくかき回されて、キツく吸われる。痺れるような快感…気持ちいいところが全部知られている。両手で耳を塞がれて、頭の中で音が反響する。舌同士が絡み合う音、そしてお互いの息遣いだけが響く。柔らかな舌で上顎をくすぐられるとぞわぞわして…声が漏れる。
「んぅ……ふっ…はぁ…」
「はぁ……はぁ……」
「んん…はぁ…はっ…」
「…ん…もっと…香夜…」
いつもよりも乱暴に求められている。その事実が俺を増々興奮させる。いつもよりも乱暴ではあれど、その手つきは優しく俺に痛みを与えることはない。ただ快感だけを只管に与えられる。
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