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しおりを挟むどこか怒っているような、焦っているような、悲しそうな…そんな複雑な感情が垣間見える秋夜さんの態度に逆らうことなく、手を引かれる。神谷さんと話していたのが、そんなに嫌だったのだろうか…?そこまでのことをしてしまったという自覚はなかった。それに秋夜さん、また威嚇フェロモン出してたし…。神谷さんもキツそうだった。大丈夫だったかな?
でも、威嚇フェロモンを浴びせられた神谷さんよりもずっと秋夜さんの方が辛そうに見える。どうしてだかわからない…。でも離れてはいけないと思った。ここで一人にしたら秋夜さんと如何しようもないほどの距離が出来てしまう。そんな予感。
ただただ黙ってついていく。掛ける言葉は見当たらない。何を言ったら秋夜さんを宥められるんだろうか?果たしてそんな言葉存在するのか?ぐるぐると答えのない問を考え続ける。
いつの間にか寮に戻ってきていたらしい。サッと鍵を開けて中に入ると、玄関で立ち止まる秋夜さん。そんな彼に、今度は逆に俺が秋夜さんの手を引いた。
「入りましょう、秋夜さん」
「……」
「ほら、行きますよ!」
「ん…」
小さく頷いてゆっくりと付いてきてくれる。ソファまで誘導して、座らせたのはいいけど、どうしよ?とりあえず飲み物とか?と思ったが考える間もなく、秋夜さんの足の間に収まった。保健室でもあったなぁ。ぽすぽすと腕を軽く叩いてみるも反応はない。自分から声をかけるのは諦め、秋夜さんからの言葉を待った。
首に頭を埋めていた秋夜さんが少しだけ顔を上げた気配がする。それでもじっとしていると、とても小さな声で、ごめん…と言うのが聞こえた。腕を軽く叩いてあげることで答えて何も言わないでいる。
「香夜…俺さ…駄目かも…香夜が他の奴といるの見るだけで、おかしくなりそう。」
「……はい…」
「なぁ…俺の番になってよ…」
そう乞い願う声は、切なげで苦しそうな響きを持っていた。それが本心なのだと伝えるように…。秋夜さん…震えてる。こんなに弱々しい姿を見るなんて。それに彼がこんな風になるなんて予想打にしなかった…。繊細なところもあるけれど、強くて優しい人だって思ってた…
こんな風に取り乱すなんて…まるで俺のことが…好きみたいだ…。多分気のせいだって。こんなの…俺だって心が揺らぐ。ちゃんと…身を引けるって思ってたのに…。聞かないと…ちゃんと…。
「……秋夜…さん…秋夜さんは俺のことどう思ってるん…ですか?」
「…好き…すげぇ好き…」
「…そう…ですか…考えます。ちゃんと…秋夜さんのこと…どう思ってるのか。」
好き…秋夜さんが、俺を。直接聞いて…しまった…。意識せずにはいられない。俺…秋夜さんのこと…好きなのか…
ああ…やばい…やばい!やばい!…一緒の部屋に住んでるのに…。
両思いだけど…だけど…俺なんかよりも相応しい相手が見つかるんじゃないのか?そんな考えは頭を離れない。
「香夜、俺のこと好きって言って?」
「えと…まだ…駄目です」
「なんで…?ってかまだってことはやっぱり俺のこと好きになってくれたってこと?」
「な!内緒です!」
「ふーん…まぁ、早めに決断してよ。俺と一生一緒にいるって決断。…俺はさ、香夜のこと…逃がす気ないから。」
「……うぅ…秋夜さんは意地悪です…」
「ははっ…今更?」
「もう!笑えるくらい元気ならご飯作ってください!」
「んー、まぁそれくらい良いけど。けど代わりにキス、してよ。」
「…ちゅっ…もう!早くご飯作りに行ってください!」
「ふふっまさかほんとにしてくれるなんて。ありがと」
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