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しおりを挟む紅茶を飲み終わった咲人さんが授業に行くために退室していって、やっとこの部屋に来た用件について話し始める。秋夜さんが先に話しだした。
「三野瀬さんに聞きたいことがあって、この子、中学3年になってやっとΩだってわかったらしくて…それでこの学園に来たらしいんだけど。αとかΩに慣れてないんだよね。」
「そうか…それで?」
「ここに来てからザワザワするらしくて、抑制剤合ってないのかもしれない。見てやって欲しい。」
「わかった。それで如月くんは、自覚症状は他に何かあるか?」
「いえ、ないです。でも抑制剤は効いてると思います。」
「まぁ調べてみるか。少しあっちのベッドで寝てくれるか?心拍なども測っておこう。発情期の目安になったりするからな。」
「はい」
先程座っていたベッドに服をはだけさせて寝転ぶ。何故か秋夜さんも一緒に来て、心拍計測器を秋夜さんに貼り付けられた。何でそういう知識あるんだ…?というか、この貧相な身体を見られるの恥ずかしいんだが…。どうやら少し時間がかかるようで、そのまましばらく寝ているように言われた。
寝転んでいる香夜に聞こえないように、二人で小声で会話をする。本命の相談事はそちらだし。香夜のことを紹介しておこうと思ったのもある。まぁスマホの連絡でも良かったけど、どうせなら直接話したかったし。
「三野瀬さん、あの子俺の運命なんだけど。自覚ないっぽいんだけど。」
「…本当に?」
「確実だと思うけど。俺が間違えるとかないし」
「…だろうな…それでもう囲ったのか。」
「そう。」
「あの子は、無自覚ながらもお前のことを受け入れているようだけどな。良かったな」
「それはいいんだけど、他のαにも無防備すぎんだよね。色々教えてやって欲しいんだけど」
「わかった、昼の時間にでも教えてやるか」
「ありがと、三野瀬さん」
「ああ、そろそろ終わったか」
「そうですね。外してきます。」
「ああ」
番、それも運命ともなれば、αの独占欲や執着は凄まじい。三野瀬が如月に触れないようにしているのもそのためだった。三野瀬は番を持たないαであるからだ。如月に佐久間の匂いがつけられている時点で、一定の距離を取るように心掛けていた。そのために器具の取り付けなども佐久間に任せていたのだった。
あの世話を焼く様子から見て、本当に番なのだろうな。番のΩの世話を焼きたがるのは、αの習性だからな。求愛行動の名残りのようなものだな。こんなに露骨にアピールされて気付かないあたり、如月はなかなかの鈍感のようだな。ザワザワするとか言っていたのも、当然だろう。番が隣にいるのだから。
「如月、君はΩやαについてのことを知らないらしいな。」
「あ、はい」
「暇なお昼にでも来るといい。基本的なことから教えてあげよう」
「はい!ありがとうございます!」
教えてもらえるのか!それなら、学園で誰かに聞かなくても大丈夫だな!有り難いや。その後、フェロモンなども計測器で測って、発情期が近くなったらわかるような機器と抑制剤、緊急避妊薬を渡されて、保健室を出た。
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