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最近、そんな彼と食事をしたり監視されたりということがない。
彼はいま、王都に行っているからだ。
いまのところまだ戻ってこない。
じつは王都で不穏な空気が流れていて、彼はその様子を見に行ったらしい。
具体的には、反乱が起こりそうなのだとか。
その話を彼にではなく、彼の執事からきいた。彼のことは、スタンフィールド侯爵家の使用人たちから情報を得ている。
彼の過去について。現在について。
(お姉様、大丈夫なのかしら?)
反乱のことを聞いた瞬間、姉のことが頭をよぎった。
彼のほんとうに愛するレディだから。
彼女は、王太子妃として王宮にいる。
反乱といえば、王族が危険にさらされることになる。
姉になにかあれば、彼が悲しむだろう。絶望するだろう。
彼には、そんな思いをさせたくない。
彼には、そんな苦しみやつらさを味あわせたくない。
だからこそ、姉の無事を祈るしかない。
とにかく、この日も戻ってこなかった。
書き終えた手紙は、なぜかこの夜はいつもの箱に放り込むのではなく机の上に置いた。
それから、夜着に着替え、眠りについた。
が、心がざわめいてなかなか寝付けなかった。
これもまた、いつもとは違った。
彼はいま、王都に行っているからだ。
いまのところまだ戻ってこない。
じつは王都で不穏な空気が流れていて、彼はその様子を見に行ったらしい。
具体的には、反乱が起こりそうなのだとか。
その話を彼にではなく、彼の執事からきいた。彼のことは、スタンフィールド侯爵家の使用人たちから情報を得ている。
彼の過去について。現在について。
(お姉様、大丈夫なのかしら?)
反乱のことを聞いた瞬間、姉のことが頭をよぎった。
彼のほんとうに愛するレディだから。
彼女は、王太子妃として王宮にいる。
反乱といえば、王族が危険にさらされることになる。
姉になにかあれば、彼が悲しむだろう。絶望するだろう。
彼には、そんな思いをさせたくない。
彼には、そんな苦しみやつらさを味あわせたくない。
だからこそ、姉の無事を祈るしかない。
とにかく、この日も戻ってこなかった。
書き終えた手紙は、なぜかこの夜はいつもの箱に放り込むのではなく机の上に置いた。
それから、夜着に着替え、眠りについた。
が、心がざわめいてなかなか寝付けなかった。
これもまた、いつもとは違った。
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