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パトリック、カニンガム王国を堪能す
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パトリックの要望で食事会の翌日に王都見物をした。それからもパトリックとその従者たちを、王都内や王都近郊を案内した。
王都から一番近い葡萄酒で有名な生産地へは、アレックスもいっしょに行った。
アレックスは、王子として視察したのである。
彼は、その訪問を公務にしてしまった。他の公務とうまく調整し、周囲に迷惑をかけることなく葡萄酒の生産地を巡って来た。もちろん、巡ることじたいはひっそりと行った。関係者以外には知らせなかった。
葡萄酒の生産地を訪れると、パトリック主従がおおよろこびしてくれた。
じつは、パトリックたちはお酒に弱くはない。なにより、大好きらしい。とはいえ、パトリックも含め節度のある飲み方をする。けっして飲みすぎたり、ましてやだれかさんのように性質が悪いというわけではない。
とにかく、パトリック主従はさまざまな葡萄酒の試飲をし、やはりその辺りの名産品であるチーズも試食させてもらった。
パトリックたちは、驚くほど上機嫌だった。
とくにパトリックは、葡萄酒も豊富な種類のチーズもおおいに気にいったようである。
あるワイナリーでは、気さくで太っ腹な青年オーナーがわたしたちを全力で迎えてくれた。彼は、葡萄酒だけでなくチーズやフルーツを大盤振る舞いしてくれた。そして、そのオーナーはパトリックのことを気に入った。パトリックもまた、そのオーナーを気に入った。ふたりは、すっかり仲良くなった。
その青年オーナーはパトリックのことを気に入ったあまり、パトリック主従に馬車一台分の葡萄酒を馬車ごと贈ってくれた。もちろん、オーナーが個人的にパトリック個人にたいしてお土産にと贈ってくれたのである。
もちろん、なにかしらにたいする賄賂などではない。あくまでも「友情の証」、としてである。
パトリックはいたく感動し、めちゃくちゃよろこんだ。
彼は、葡萄酒にたいして感動したりよろこんだのではない。
そのオーナーの気持ちにたいしてである。
「わがディーマー帝国と直接取引をしたい」
パトリックは、そんなことを言いだした。
そして、彼はさっそく従者のひとりに手配をさせた。
じつは、彼の従者の中にディーマー帝国の大商人の跡取りがいる。諸国を巡っている間、なにかあるごとにその跡取りと商談をさせ、いい条件で買い付けたりディーマー帝国の名産品を売ったりしているとか。
ここでは、葡萄酒を定期的に買い付ける商談をまとめたようだった。
その青年オーナーは、予期せぬ大口の顧客を獲得したことにおおよろこびしていた。
というわけで、そのようにいろいろ巡ったり体験したり学んだりした。
パトリック主従は、彼ら自身も驚くほど滞在していたのである。
その間の彼らの食事は、例の大豆料理だけでなく野菜や魚もふんだんに使ったりアレンジして提供した。その為、王族などわが国の人たちにも使える新メニューがずいぶんと増えた。
せっかくだから、今後もそういったメニューを駆使するらしい。
料理長は、バリエーションが増えておおよろこびしている。
それはともかく、パトリック主従がそろそろ帰国するという。
パトリックは、いよいよもって皇太子として本格的に公務に従事しなければならないらしい。「そろそろ戻って来い」と、帰国を促されているという。
その日は、パトリックと王宮内の図書館で本談義をした。
アレックスは会議があるので、わたしがパトリックの相手を仰せつかったのだ。
「ナオ、話がある」
もうそろそろ本談義を終えようかというタイミングで、パトリックが真剣な面持ちで言った。
王宮の図書室は、めったに人が訪れることはない。この日もずっとふたりきりだった。
おおきな窓から強烈な夕陽が射しこんでいて、パトリックの野性的な美貌が真っ赤に染まっている。
それがまた見事なまでに彼の野性美を強調している。
そんな彼を、うっかり見惚れてしまうところだった。
王都から一番近い葡萄酒で有名な生産地へは、アレックスもいっしょに行った。
アレックスは、王子として視察したのである。
彼は、その訪問を公務にしてしまった。他の公務とうまく調整し、周囲に迷惑をかけることなく葡萄酒の生産地を巡って来た。もちろん、巡ることじたいはひっそりと行った。関係者以外には知らせなかった。
葡萄酒の生産地を訪れると、パトリック主従がおおよろこびしてくれた。
じつは、パトリックたちはお酒に弱くはない。なにより、大好きらしい。とはいえ、パトリックも含め節度のある飲み方をする。けっして飲みすぎたり、ましてやだれかさんのように性質が悪いというわけではない。
とにかく、パトリック主従はさまざまな葡萄酒の試飲をし、やはりその辺りの名産品であるチーズも試食させてもらった。
パトリックたちは、驚くほど上機嫌だった。
とくにパトリックは、葡萄酒も豊富な種類のチーズもおおいに気にいったようである。
あるワイナリーでは、気さくで太っ腹な青年オーナーがわたしたちを全力で迎えてくれた。彼は、葡萄酒だけでなくチーズやフルーツを大盤振る舞いしてくれた。そして、そのオーナーはパトリックのことを気に入った。パトリックもまた、そのオーナーを気に入った。ふたりは、すっかり仲良くなった。
その青年オーナーはパトリックのことを気に入ったあまり、パトリック主従に馬車一台分の葡萄酒を馬車ごと贈ってくれた。もちろん、オーナーが個人的にパトリック個人にたいしてお土産にと贈ってくれたのである。
もちろん、なにかしらにたいする賄賂などではない。あくまでも「友情の証」、としてである。
パトリックはいたく感動し、めちゃくちゃよろこんだ。
彼は、葡萄酒にたいして感動したりよろこんだのではない。
そのオーナーの気持ちにたいしてである。
「わがディーマー帝国と直接取引をしたい」
パトリックは、そんなことを言いだした。
そして、彼はさっそく従者のひとりに手配をさせた。
じつは、彼の従者の中にディーマー帝国の大商人の跡取りがいる。諸国を巡っている間、なにかあるごとにその跡取りと商談をさせ、いい条件で買い付けたりディーマー帝国の名産品を売ったりしているとか。
ここでは、葡萄酒を定期的に買い付ける商談をまとめたようだった。
その青年オーナーは、予期せぬ大口の顧客を獲得したことにおおよろこびしていた。
というわけで、そのようにいろいろ巡ったり体験したり学んだりした。
パトリック主従は、彼ら自身も驚くほど滞在していたのである。
その間の彼らの食事は、例の大豆料理だけでなく野菜や魚もふんだんに使ったりアレンジして提供した。その為、王族などわが国の人たちにも使える新メニューがずいぶんと増えた。
せっかくだから、今後もそういったメニューを駆使するらしい。
料理長は、バリエーションが増えておおよろこびしている。
それはともかく、パトリック主従がそろそろ帰国するという。
パトリックは、いよいよもって皇太子として本格的に公務に従事しなければならないらしい。「そろそろ戻って来い」と、帰国を促されているという。
その日は、パトリックと王宮内の図書館で本談義をした。
アレックスは会議があるので、わたしがパトリックの相手を仰せつかったのだ。
「ナオ、話がある」
もうそろそろ本談義を終えようかというタイミングで、パトリックが真剣な面持ちで言った。
王宮の図書室は、めったに人が訪れることはない。この日もずっとふたりきりだった。
おおきな窓から強烈な夕陽が射しこんでいて、パトリックの野性的な美貌が真っ赤に染まっている。
それがまた見事なまでに彼の野性美を強調している。
そんな彼を、うっかり見惚れてしまうところだった。
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