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王都見物へ

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 アレックスは、今日は一日中体調がすぐれない。彼は、ここのところの激務で疲れきっている。だから、一日休息を必要としている。

 というわけで、第七王子アレックスは、本日自室でゆっくりすごすこととなった。

 とはいえ、それはごく限られた人たちに伝えられたことである。そして、さらにかぎられた人たち、具体的には近衛隊の隊長と数名の隊員たちには、じつはアレックスみずからがパトリック主従を王都見物に連れて行くと伝えられた。

 アレックスは、いまはまだ王子である。しかし、もう間もなく国王の座を継ぐことになっている。

 いくらお忍びとはいえ、護衛もなく王都内を飛びまわらせるわけにはいかない。

 それは、アレックスにかぎったことではない。

 ディーマー帝国という超大国の皇太子であるパトリックも同様である。

 パトリックがいくらお忍びで諸国をまわっているとはいえ、このカニンガム王国内でなにかあれば王国が責任を問われることになる。

 たとえディーマー帝国が責任の追及をしてこなかったとしても、わたしのいまの人生のアレックスの性格では、だれよりも責任を感じるだろう。彼はきっと、自分自身を責めてしまうに違いない。

 というわけで、アレックスみずから近衛隊の隊長に頼んだ。そして、護衛の隊員をつけてもらった。

 近衛隊の隊長は、アレックスの外出の話をきけば躍起になって護衛をつけたがる。たとえアレックスが護衛を拒否したところで、ぜったいに護衛をつけただろう。もしもアレックスが護衛を拒否をすれば
、ぜったいに外出をさせない。

 アレックス自身は、自分にというよりパトリック主従を守ってもらいたい。

 それは、近衛隊の隊長も承知しているだろう。が、隊長にすれば、そうはいかないということになる。

 かくして、近衛隊でももっとも腕の立つ六名の隊員たちが護衛についてくれ、朝食後に王都の街へ向かった。

 パトリックは、王都内にある観光スポットよりそれ以外のところを見たがった。ディープな部分、というよりか、一般の人々やその生活を見たがった。

 アレックスは、そのパトリックの要望の意図を察した。そして、彼もまたその要望を自分の要望とした。

 その為、アレックスもまた案内される側となった。

 つまり、近衛隊の隊員たちとわたしが案内することになったのである。

 わたしたちは、王都の人たちの生活ぶりがよくわかるところを案内した。

 市場、学校、病院、カフェ、食堂、飲み屋、その他もろもろ、人々の生活に必要不可欠な場所を訪れた。

 アレックスもパトリックも積極的に人々と話をしたり、体験したりした。

 パトリックより、アレックスの方がより積極的だったかもしれない。

 それもそのはず。もう間もなく、アレックス自身が人々の生活のすべてを守らなければならなくなるのだから。いまもそうだけど、引き続き人々から養ってもらうのだから。

 わたしたちは、有意義すぎる一日をすごした。

 学んだだけではない。楽しむことも多かった。

 一日があっという間だった。

 というか、一日では足りなかった。

 まだ一部しか案内出来ていない。見てもらっていない。

 しかし、今日はこの後約束がある。

 そう。ジョエル・マクラウドの屋敷に行かねばならない。

 しかも、おまけをたくさん引き連れて。

 というわけで、約束に遅れないようマクラウド公爵邸へ向かった。
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