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良き関係

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 わたしがパトリック主従を客殿へ送ることになっている。

 すでにパトリックの従者たちは食事を終え、わたしたちのいる食堂の前で待ってくれている。

 パトリックたちの荷物は、本殿の客室から客殿の彼らの寝室へと運んでもらっている。


 パトリックは、アレックスと握手をしている。

「アレックス、明日あらためて話をしよう」
「もちろんだとも、パトリック。今夜、会えてよかった。是非ともきみの冒険の続きをきかせてもらいたいものだ」
「おいおいアレックス、冒険の続きだって? きみは、正式に皇太子に即位する前の遊学とか見識を広める歴訪の数々とか、そんなふうに言えないものかね?」
「おっと、すまなかった。そうだった。きみは、真面目に諸国を見聞してまわっているのだったな」
「そうさ。だから、万が一にも母国の皇帝から確認の連絡がくるようなことがあれば、しっかり伝えてくれよ」
「そうしよう」

 キラキラ光り輝いているふたりは、別れ際になるまで冗談を言い合っている。

 とてもいい関係だと感じた。まさかこのふたりが初対面だなんて信じられないくらい、ふたりの様子はしっくりきている。

 相性がいいに違いない。

 そんなふたりを見ていると、わたしまでうれしくなってくる。

 どうしてかはわからないけれど。

(だけど、そうよね。アレックスもこのままいくと王太子になる可能性が高い。というか、王太子になるに違いない。将来国を統べることになるふたりが仲がいいのは、おたがいの国にとってもいいことよね)

 そういうことになる。

(って、ちょっと待って。アレックスが王太子から国王になったとしたら? 将来待ち受けているのは、国王の座を奪われて幽閉からの毒殺? そうなると、わたしがまた彼を殺すことになるの?)

 そういうことになるのでは?

「ナオ、待たせたね。では、パトリック主従を客殿へ案内して欲しい。ナオ、どうした? またボーッとしているのかい?」 

 とんでもないことを思いついて愕然としていたものだから、アレックスにささやかれるまで気がつかなかった。

「殿下、申し訳ありません。まだ終わっていないのに、すこしだけホッとしてしまっていました。殿下は、はやくパーティーへ」

 内心の焦りをごまかす為、アレックスにパーティーに合流するよう促す。

 その瞬間、パーティー会場である大広間から歓声がきこえてきた。

(もしかして、ジョエルが例の発表をしたのかしら?)

 いまの歓声は、もしかするとジョエルが彼自身の娘のキャロラインとアレックスとの婚儀の発表をしたから起こったのかもしれない。
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