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ワクワクどきどき
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王族主催のパーティーは、定期的に行われる。慰労パーティーのようなものなので、他の公のパーティーと比較し、そこまでおおがかりでも派手でもない。
とはいえ、わたしたち侍女たちにとって大変な行事のひとつであることにかわりはない。それから、料理人や執事たちにとっても、である。
立食とはいえ、料理や酒が盛大に振る舞われる。それは他国から国賓を招くときでも同様で、招待客は好きな料理を好きなだけとって立ったまま、あるいは数少ない席に座って食べる。
今回のパーティーもまた立食である。
わたしたち侍女は、どのようなパーティーでもほどよい緊張感とともにプレッシャーを感じている。当日、どのような担当になったとしてもミスやハプニングはつきものだ。つねになにかが起こるのが王宮の行事。なにも起こらない、ということの方が稀である。
ちなみに、前の人生でのわたしは、厨房から会場まで飲食物等を運ぶという担当が多かった。どのような規模のパーティでも、それをほぼひとりでこなしていた。というか、ひとりでさせられていた。なぜなら、飲食物の運搬という作業は、地味なわりには一番体力と気力を消費するからである。
はやい話が、みんなからその仕事をおしつけられていた。
イヤな招待客の対応もさせられていた。招待客の中には、酒癖が悪かったりかならずといっていいほど絡んでくる人が一定数存在する。そういう人たちにかぎって、自分だけの為に飲食物を運ぶよう要求する。飲食物を持ってこさせ、そこで理由をつけては絡んでくる。招待客のリストにそういう迷惑行為をする常習者が含まれていると、みんながわたしを担当にしてしまう。というわけで、そういう招待客の数が多ければ多いほど、わたしは多忙をきわめる。
若いときならまだしも、殺される前にはパーティー後は足腰が立たなくなっていた。
そのつど、歳は取りたくないものだとつくづく情けなくなった。
それはともかく、ミスやハプニングがつきもののパーティーではあるけれど、今回も例外に漏れずさっそくハプニングが起こった。
しかもパーティーを明日に控えたというタイミングで、である。
お忍びでこのカニンガム王国を訪れているディーマー帝国の皇族が、よりにもよってパーティの当日にやって来るという。あくまでもお忍びで。それでも別室に席を設け、ちゃんとした料理を振る舞うという。
その一報は、宰相ジョエルから通達がきた。
じつは、ディーマー帝国では宗教上の理由で獣肉は口に出来ない。
が、ジョエルはその重大な情報についてはいっさい伝えてこなかった。
わたしがたまたま知っていたにすぎない。
前の人生で読んだ本の内容を覚えていたのだ。
ジョエルがただ単純に伝え忘れたのか、わざと伝えなかったのかはわからない。
いずれにせよハプニングといってもいいこの案件をのりきることが、副侍女長でありこのパーティーの采配を任されているわたしの責務である。
そう前向きに意識を向けることにした。
そうすると、ワクワクどきどきするとともにますます燃え始めた。
いまの人生のわたしにとって、ハプニングがいい刺激になるらしい。
とはいえ、わたしたち侍女たちにとって大変な行事のひとつであることにかわりはない。それから、料理人や執事たちにとっても、である。
立食とはいえ、料理や酒が盛大に振る舞われる。それは他国から国賓を招くときでも同様で、招待客は好きな料理を好きなだけとって立ったまま、あるいは数少ない席に座って食べる。
今回のパーティーもまた立食である。
わたしたち侍女は、どのようなパーティーでもほどよい緊張感とともにプレッシャーを感じている。当日、どのような担当になったとしてもミスやハプニングはつきものだ。つねになにかが起こるのが王宮の行事。なにも起こらない、ということの方が稀である。
ちなみに、前の人生でのわたしは、厨房から会場まで飲食物等を運ぶという担当が多かった。どのような規模のパーティでも、それをほぼひとりでこなしていた。というか、ひとりでさせられていた。なぜなら、飲食物の運搬という作業は、地味なわりには一番体力と気力を消費するからである。
はやい話が、みんなからその仕事をおしつけられていた。
イヤな招待客の対応もさせられていた。招待客の中には、酒癖が悪かったりかならずといっていいほど絡んでくる人が一定数存在する。そういう人たちにかぎって、自分だけの為に飲食物を運ぶよう要求する。飲食物を持ってこさせ、そこで理由をつけては絡んでくる。招待客のリストにそういう迷惑行為をする常習者が含まれていると、みんながわたしを担当にしてしまう。というわけで、そういう招待客の数が多ければ多いほど、わたしは多忙をきわめる。
若いときならまだしも、殺される前にはパーティー後は足腰が立たなくなっていた。
そのつど、歳は取りたくないものだとつくづく情けなくなった。
それはともかく、ミスやハプニングがつきもののパーティーではあるけれど、今回も例外に漏れずさっそくハプニングが起こった。
しかもパーティーを明日に控えたというタイミングで、である。
お忍びでこのカニンガム王国を訪れているディーマー帝国の皇族が、よりにもよってパーティの当日にやって来るという。あくまでもお忍びで。それでも別室に席を設け、ちゃんとした料理を振る舞うという。
その一報は、宰相ジョエルから通達がきた。
じつは、ディーマー帝国では宗教上の理由で獣肉は口に出来ない。
が、ジョエルはその重大な情報についてはいっさい伝えてこなかった。
わたしがたまたま知っていたにすぎない。
前の人生で読んだ本の内容を覚えていたのだ。
ジョエルがただ単純に伝え忘れたのか、わざと伝えなかったのかはわからない。
いずれにせよハプニングといってもいいこの案件をのりきることが、副侍女長でありこのパーティーの采配を任されているわたしの責務である。
そう前向きに意識を向けることにした。
そうすると、ワクワクどきどきするとともにますます燃え始めた。
いまの人生のわたしにとって、ハプニングがいい刺激になるらしい。
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