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3章 〜過去 正妃と側妃〜
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数日後、カールが戻ったとの知らせがあり、いくつかの箱が届けられた。
カールからの土産物だという。
大きなものではないが、それぞれが美しくラッピングされていた。
「陛下がこれを私に?!」
カールからの土産だと聞いたルイザは声を上げた。
それと同時にカールから何か贈られたのはこれが初めてだと気がついた。
百合の宮にあるのはどれも伯爵家にいた頃とは比べ物にならないような高級品だが、すべてルイザが購入したものだ。
これだけのものを揃えられるだけの予算を与えられて感激していたが、それは側妃に与えられたものでルイザを思ってのものではない。
だけどこれは違う。
カールがルイザを思って選んでくれたのだ。
懐妊を告げたあの日から顔を合わせてないが、ルイザのことを忘れたわけではないとわかって嬉しかった。
「陛下は何を贈ってくださったのでしょう。楽しみですね」
傍に控えていたミザリーも嬉しそうにルイザへ声を掛ける。
王宮を抜け出したあの日から、ルイザはミザリーを傍に置くようになった。
何も知らなかったのは二人だけ。百合の宮でルイザの気持ちをわかってくれるのはミザリーだけだとわかったからだ。
ルイザはウキウキと包みを開けていく。
出てきたのは色とりどりの美しい瓶だった。
「これは香油?こっちはボディクリームね。それにこれは香水だわ」
ルイザは箱に入っていたカードを見ながら一つずつ手に取っていく。
カードには異国の言葉とこの国の言葉で商品の用途が書かれていた。
「まあ、まだ開けていないのにとても良い香りがしますね」
「ええ、本当に素敵だわ」
ルイザとミザリーが嬉しそうにはしゃいだ声を上げる。
だけど後ろに控えていたイーネは、それがカールの選んだものではないと気がついた。
カールは閨の時、エリザベートが愛用している香油やクリームをルイザが使うように仕向けているのだ。
香りで誤魔化して何とかルイザを抱いている。
初夜の日から既に何ヶ月も経っているが、何も知らないルイザは与えられた品を気に入り、継続して今も使っていた。
ルイザの性格であれば、今後閨の時はこれらの品を使おうとするだろう。
その時、エリザベートと違う香りのルイザをカールは抱けるのだろうか。
土産を選んだのは侍従だろうが、寝室で一悶着起きるところを思い浮かべたイーネは余計なことをしてくれたと密かに息をついた。
侍従としては、万が一にも同じ国の特産品を持った正妃と側妃が鉢合わせることがないようにと、カールが買い物をした店を避けて土産物を選んだのだが。
閨の秘密を知らない侍従には避けようのない問題だった。
「こちらの包みは何かしら?化粧品とは違うみたいね」
ルイザは少し離れたところに置かれた包みへ手を伸ばす。
香油やクリームが入っていた箱は上品な色の紙で包まれていたけれど、こちらはカラフルな袋に入れられていた。
「こちらは陛下より生まれてくるお子様への贈り物でございます」
ルイザの問いにイーネは卒なく応える。
持参した侍従から報告を受けているのはイーネなのだ。
「陛下がこの子に?そう………」
ルイザは膨らんだ腹に手を当て、顔を綻ばせる。
一度も会いに来てくれない父親だけど、カールもこの子のことを思ってくれているのだ。
ルイザはその後すぐに贈り物のお礼を伝える手紙を書いた。
「とても嬉しいです」「大切に使います」「生まれてくる子の為に色々揃えているのですが、陛下も一緒に選びませんか?」
そう書いたけれど、結局返事が届くことはなかった。
カールからの土産物だという。
大きなものではないが、それぞれが美しくラッピングされていた。
「陛下がこれを私に?!」
カールからの土産だと聞いたルイザは声を上げた。
それと同時にカールから何か贈られたのはこれが初めてだと気がついた。
百合の宮にあるのはどれも伯爵家にいた頃とは比べ物にならないような高級品だが、すべてルイザが購入したものだ。
これだけのものを揃えられるだけの予算を与えられて感激していたが、それは側妃に与えられたものでルイザを思ってのものではない。
だけどこれは違う。
カールがルイザを思って選んでくれたのだ。
懐妊を告げたあの日から顔を合わせてないが、ルイザのことを忘れたわけではないとわかって嬉しかった。
「陛下は何を贈ってくださったのでしょう。楽しみですね」
傍に控えていたミザリーも嬉しそうにルイザへ声を掛ける。
王宮を抜け出したあの日から、ルイザはミザリーを傍に置くようになった。
何も知らなかったのは二人だけ。百合の宮でルイザの気持ちをわかってくれるのはミザリーだけだとわかったからだ。
ルイザはウキウキと包みを開けていく。
出てきたのは色とりどりの美しい瓶だった。
「これは香油?こっちはボディクリームね。それにこれは香水だわ」
ルイザは箱に入っていたカードを見ながら一つずつ手に取っていく。
カードには異国の言葉とこの国の言葉で商品の用途が書かれていた。
「まあ、まだ開けていないのにとても良い香りがしますね」
「ええ、本当に素敵だわ」
ルイザとミザリーが嬉しそうにはしゃいだ声を上げる。
だけど後ろに控えていたイーネは、それがカールの選んだものではないと気がついた。
カールは閨の時、エリザベートが愛用している香油やクリームをルイザが使うように仕向けているのだ。
香りで誤魔化して何とかルイザを抱いている。
初夜の日から既に何ヶ月も経っているが、何も知らないルイザは与えられた品を気に入り、継続して今も使っていた。
ルイザの性格であれば、今後閨の時はこれらの品を使おうとするだろう。
その時、エリザベートと違う香りのルイザをカールは抱けるのだろうか。
土産を選んだのは侍従だろうが、寝室で一悶着起きるところを思い浮かべたイーネは余計なことをしてくれたと密かに息をついた。
侍従としては、万が一にも同じ国の特産品を持った正妃と側妃が鉢合わせることがないようにと、カールが買い物をした店を避けて土産物を選んだのだが。
閨の秘密を知らない侍従には避けようのない問題だった。
「こちらの包みは何かしら?化粧品とは違うみたいね」
ルイザは少し離れたところに置かれた包みへ手を伸ばす。
香油やクリームが入っていた箱は上品な色の紙で包まれていたけれど、こちらはカラフルな袋に入れられていた。
「こちらは陛下より生まれてくるお子様への贈り物でございます」
ルイザの問いにイーネは卒なく応える。
持参した侍従から報告を受けているのはイーネなのだ。
「陛下がこの子に?そう………」
ルイザは膨らんだ腹に手を当て、顔を綻ばせる。
一度も会いに来てくれない父親だけど、カールもこの子のことを思ってくれているのだ。
ルイザはその後すぐに贈り物のお礼を伝える手紙を書いた。
「とても嬉しいです」「大切に使います」「生まれてくる子の為に色々揃えているのですが、陛下も一緒に選びませんか?」
そう書いたけれど、結局返事が届くことはなかった。
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