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2章 ~過去 カールとエリザベート~
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大人たちの話が聞こえていたのだろう。ルイを囲んでいたプレストンがこちらを振り返る。
「陛下が伯母様を守ってくれたの?陛下は強いんだ!」
プレストンはエリザベートを「伯母様」、カールを「陛下」と呼ぶことにしたようだ。慣れ親しんだエリザベートはともかく、初対面のカールを「伯父様」と呼ぶのは抵抗があったらしい。
大人たちの話がどのように聞こえたのかわからないが、まだ騎士に憧れる年齢のプレストンにはカールがお姫様を守る騎士のように思えたのかもしれない。
「そうねぇ。王族には敵が多いから……」
前王妃が頬に手を当てて息をつく。
実際には武力で襲いかかられるより政治的な駆け引きや精神的な重圧を受けることの方が多いが、プレストンの夢を壊さないように言葉を濁してくているのだ。
カールはエリザベートに危険がないよう剣の腕を磨いたけれど、決して騎士のように強いわけではない。ただもしものことがあった時に、助けが来るまで持ちこたえられるよう今も剣の鍛錬は続けている。
それがエリザベートを守ることに繋がると知っているのだ。
そんなところまで伝わったのかはわからない。
だけどプレストンは大きく頷くと決意した顔で声を上げた。
「決めた!僕は将来騎士になる!騎士になってルイを守るよ!」
その言葉に、隣に座っていたフランクも声を上げる。
「じゃあ僕も騎士になる!僕もルイを守りたい!」
「フランクは駄目だよ。フランクは伯爵家を継ぐんだから」
「ええーっ!」
どうやらプレストンやフランクにはルイが守らなければならない存在に写ったようだ。
まだ赤ん坊なのに、危険の多い王族というのが琴線に触れたのかもしれない。庇護欲が掻き立てられているのだろう。
確かに伯爵家を継ぐフランクが騎士になるのは難しいが、次男のプレストンなら騎士になるのも良いだろう。
「王族を守る近衛隊に入るには相当な鍛錬が必要だぞ。おまえにできるのか?」
リチャードが問いかける。
プレストンは力強く頷いた。
「明日から鍛錬の時間を増やす!絶対近衛隊に入るから!!」
「そうか。それじゃあ頑張れ」
「うん!!」
そんな父子のやり取りを大人たちは微笑ましく見つめている。
プレストンはエリザベートやルイと同じく金色の髪に青色の目だ。
ルイも大きくなったらプレストンのようになるのだろうか。そんな想像を働かせる。
だけど騎士を目指すのならプレストンが入学するのは騎士学院かしら?
そう遠くはない未来に思いを馳せてエリザベートは微笑んだ。
「……それで、そなたたちはどうなのだ?子は考えているのか?」
前国王がマクロイド公爵夫妻へ問いかけた。
マクロイド公爵も婚姻を結んでから2年経っているが、まだ子に恵まれていない。
子を急かすような時期ではないが、父親として懸念していることもあるのだろう。マクロイド公爵もわかっているようで鷹揚に頷いた。
「そうですね。わたしもそろそろ良いかと思っています」
マクロイド公爵は王籍を離れる前から第一王子が王位を継ぐべきだという信念を持っていた。
その言葉の通り学園を卒業後すぐに王籍を離れたが、そのせいでカールの跡を継ぐ王子がいない状態だった。
もしルイより先にマクロイド公爵家に男子が生まれていたら、その子が次期王太子だと囁かれていただろう。それくらいエリザベートが子を生むとは思われていなかったのだ。
マクロイド公爵はその状況を避けるために子を作らないようにしていたのだろう。
「お2人の子であれば、聡明で美しい子でしょうね」
エリザベートがそう言うと、マクロイド公爵夫妻は顔を見合わせ恥ずかしそうに微笑んだ。
「陛下が伯母様を守ってくれたの?陛下は強いんだ!」
プレストンはエリザベートを「伯母様」、カールを「陛下」と呼ぶことにしたようだ。慣れ親しんだエリザベートはともかく、初対面のカールを「伯父様」と呼ぶのは抵抗があったらしい。
大人たちの話がどのように聞こえたのかわからないが、まだ騎士に憧れる年齢のプレストンにはカールがお姫様を守る騎士のように思えたのかもしれない。
「そうねぇ。王族には敵が多いから……」
前王妃が頬に手を当てて息をつく。
実際には武力で襲いかかられるより政治的な駆け引きや精神的な重圧を受けることの方が多いが、プレストンの夢を壊さないように言葉を濁してくているのだ。
カールはエリザベートに危険がないよう剣の腕を磨いたけれど、決して騎士のように強いわけではない。ただもしものことがあった時に、助けが来るまで持ちこたえられるよう今も剣の鍛錬は続けている。
それがエリザベートを守ることに繋がると知っているのだ。
そんなところまで伝わったのかはわからない。
だけどプレストンは大きく頷くと決意した顔で声を上げた。
「決めた!僕は将来騎士になる!騎士になってルイを守るよ!」
その言葉に、隣に座っていたフランクも声を上げる。
「じゃあ僕も騎士になる!僕もルイを守りたい!」
「フランクは駄目だよ。フランクは伯爵家を継ぐんだから」
「ええーっ!」
どうやらプレストンやフランクにはルイが守らなければならない存在に写ったようだ。
まだ赤ん坊なのに、危険の多い王族というのが琴線に触れたのかもしれない。庇護欲が掻き立てられているのだろう。
確かに伯爵家を継ぐフランクが騎士になるのは難しいが、次男のプレストンなら騎士になるのも良いだろう。
「王族を守る近衛隊に入るには相当な鍛錬が必要だぞ。おまえにできるのか?」
リチャードが問いかける。
プレストンは力強く頷いた。
「明日から鍛錬の時間を増やす!絶対近衛隊に入るから!!」
「そうか。それじゃあ頑張れ」
「うん!!」
そんな父子のやり取りを大人たちは微笑ましく見つめている。
プレストンはエリザベートやルイと同じく金色の髪に青色の目だ。
ルイも大きくなったらプレストンのようになるのだろうか。そんな想像を働かせる。
だけど騎士を目指すのならプレストンが入学するのは騎士学院かしら?
そう遠くはない未来に思いを馳せてエリザベートは微笑んだ。
「……それで、そなたたちはどうなのだ?子は考えているのか?」
前国王がマクロイド公爵夫妻へ問いかけた。
マクロイド公爵も婚姻を結んでから2年経っているが、まだ子に恵まれていない。
子を急かすような時期ではないが、父親として懸念していることもあるのだろう。マクロイド公爵もわかっているようで鷹揚に頷いた。
「そうですね。わたしもそろそろ良いかと思っています」
マクロイド公爵は王籍を離れる前から第一王子が王位を継ぐべきだという信念を持っていた。
その言葉の通り学園を卒業後すぐに王籍を離れたが、そのせいでカールの跡を継ぐ王子がいない状態だった。
もしルイより先にマクロイド公爵家に男子が生まれていたら、その子が次期王太子だと囁かれていただろう。それくらいエリザベートが子を生むとは思われていなかったのだ。
マクロイド公爵はその状況を避けるために子を作らないようにしていたのだろう。
「お2人の子であれば、聡明で美しい子でしょうね」
エリザベートがそう言うと、マクロイド公爵夫妻は顔を見合わせ恥ずかしそうに微笑んだ。
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