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一、知ってる? (3)
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「……誰もいない」
なにもなかった。
「ほら、お化けなんていないんだって。帰るぞ」
そう言ってムツ君もゴローちゃんもスタスタと物置を出て行ってしまう。私は一人残されるのが怖くて、足早にドアをくぐったんたけど……。ドアバンバン……、じゃないや。ドアトントンなんてやっぱりいないんだ。だって何も起きなかったし。
「あれ? ナナ?」
皆がどんどん下駄箱へと向かう中、ナナだけが物置のドアを見ている。ドアトントンがこなくて落ち込んでいるのかな? だけど、おばけなんて現実にいるわけないし。
「ナナ、行こうよ」
「クク」
「なに?」
「ねぇ、ドアから音が聞こえない?」
「え?」
私はナナの指差した物置のドアに視線を向けた。
「私はなにも……」
聞こえない。そう言いかけた時、下駄箱に向かうみんなの足音が聞こえなくなった。
下駄箱についたのか、もう聞こえないほど遠くに行ってしまったのか、わからない。
だけど、その音と入れ替わるように違う音が聞こえてくる。
トントントントン、トントントントントン。
それは、誰もいないはずの物置の中からドアを叩く音だった。
「き、きゃああああっ!!」
本当に、おばけっ!?
「ククも聞こえたよねっ!? トントンしたよねっ! 遊びましょっ」
そう言ってナナはドアノブに手をかけ、あろうことかドアをあけようとしてる姿に私は思わず目を疑った。
「な、ナナっ! なにをしているのっ!?」
「え、ドアトントンに会おうと思って」
「や、やめなよっ! 本当に連れていかれちゃうかもしれないんだからっ!」
もう、冗談じゃない。
だって、私は聞いたんだから。
「えー。でも、せっかく来てくれたのに?」
「いやっ。私、ナナがいなくなったら悲しいよ……っ。ナナがいなくなったら……」
私はナナを抱きしめながら、悲しい想像に体を震わせた。
おばけも怖いけど、友達がいなくなるのだってもっと怖い。
「クク……」
「おい、どうしたんだ?」
中々こない私達を見に来たムツ君たちに、今起きた話をする。ゴローちゃんは怖がっていたけど、ハッチとムツ君は顔を合わせると「開ければよくないか?」と言って、私が止める間もなく物置のドアを開いた。
「あっ」
ムツ君があげる声に、私はびくりと体を震わせる。
本当に、いた……?
ドアトントンが、いた?
「カラーコーンが倒れてる。ドアの近くだから、これが当たってコンコン聞こえたんじゃないか?」
「で、でも何度もトントン聞こえたよ?」
「聞き間違いじゃない? 怖いと思い込んでてさ」
「でも……」
ナナも一緒に聞いていたよね? と、思って隣を見るもナナは短いため息一つだけで。
「なーんだ。勘違いか」
と、納得したみたい。
「早く帰ろっ。お腹空いたーっ」
「ああ。ククも行こう」
「あ、うん……」
一緒にいたナナが言うなら、勘違いなの、かな……。
でも、本当に……?
※ ※ ※
家に帰って、宿題、ごはん、お風呂をすませてベッドに潜り込んだ後でも、私はあの音のことをずっと考えている。
トントン。誰かがノックをしている音に私は聞こえた。けど、物置の中には誰もいなかったし、皆気のせいって……。
忘れよう、考えるのをやめようと思えば思うほど、気になるし考えちゃう。
こんなの、寝られない。
その時だ。
トントン、トントン。
と、ノックをする音が聞こえたのは。
まさかと思って、私はベッドの中に深く潜って息を潜めた。
私の家に、きちゃったの? どうして? 誰か、誰か助けてっ!
ガチャっと扉が開く音がした。
ドアトントンが……っ!
「ちょっと、もう寝ちゃったの? 寝るなら電気を消しなさいよ」
「……ママ?」
ベッドから起き上がれば、ママが不思議そうに私を見ている。
「他に誰があなたの体操服を持ってきてくれるの? 机の上に置いておくから、明日の朝に仕舞っておいてね。おやすみなさーい」
そう言って、ママは電気を消して部屋を出ていく。
なんだ。ママか。そうだよね、そうだよね。おばけなわけないよね。そう笑うと、なんだか物置の音も聞き間違いだったと思えてくる。
ああ、ちょっと眠くなってきたかも。
私は枕を直して目を瞑る。段々と意識が遠のく中、音が聞こえた。
トントン、トントン、トントン。
またママかな? そう思って、私はそのまま意識を手放した。
けど、何時までたってもドアは決して開かなかった。
なにもなかった。
「ほら、お化けなんていないんだって。帰るぞ」
そう言ってムツ君もゴローちゃんもスタスタと物置を出て行ってしまう。私は一人残されるのが怖くて、足早にドアをくぐったんたけど……。ドアバンバン……、じゃないや。ドアトントンなんてやっぱりいないんだ。だって何も起きなかったし。
「あれ? ナナ?」
皆がどんどん下駄箱へと向かう中、ナナだけが物置のドアを見ている。ドアトントンがこなくて落ち込んでいるのかな? だけど、おばけなんて現実にいるわけないし。
「ナナ、行こうよ」
「クク」
「なに?」
「ねぇ、ドアから音が聞こえない?」
「え?」
私はナナの指差した物置のドアに視線を向けた。
「私はなにも……」
聞こえない。そう言いかけた時、下駄箱に向かうみんなの足音が聞こえなくなった。
下駄箱についたのか、もう聞こえないほど遠くに行ってしまったのか、わからない。
だけど、その音と入れ替わるように違う音が聞こえてくる。
トントントントン、トントントントントン。
それは、誰もいないはずの物置の中からドアを叩く音だった。
「き、きゃああああっ!!」
本当に、おばけっ!?
「ククも聞こえたよねっ!? トントンしたよねっ! 遊びましょっ」
そう言ってナナはドアノブに手をかけ、あろうことかドアをあけようとしてる姿に私は思わず目を疑った。
「な、ナナっ! なにをしているのっ!?」
「え、ドアトントンに会おうと思って」
「や、やめなよっ! 本当に連れていかれちゃうかもしれないんだからっ!」
もう、冗談じゃない。
だって、私は聞いたんだから。
「えー。でも、せっかく来てくれたのに?」
「いやっ。私、ナナがいなくなったら悲しいよ……っ。ナナがいなくなったら……」
私はナナを抱きしめながら、悲しい想像に体を震わせた。
おばけも怖いけど、友達がいなくなるのだってもっと怖い。
「クク……」
「おい、どうしたんだ?」
中々こない私達を見に来たムツ君たちに、今起きた話をする。ゴローちゃんは怖がっていたけど、ハッチとムツ君は顔を合わせると「開ければよくないか?」と言って、私が止める間もなく物置のドアを開いた。
「あっ」
ムツ君があげる声に、私はびくりと体を震わせる。
本当に、いた……?
ドアトントンが、いた?
「カラーコーンが倒れてる。ドアの近くだから、これが当たってコンコン聞こえたんじゃないか?」
「で、でも何度もトントン聞こえたよ?」
「聞き間違いじゃない? 怖いと思い込んでてさ」
「でも……」
ナナも一緒に聞いていたよね? と、思って隣を見るもナナは短いため息一つだけで。
「なーんだ。勘違いか」
と、納得したみたい。
「早く帰ろっ。お腹空いたーっ」
「ああ。ククも行こう」
「あ、うん……」
一緒にいたナナが言うなら、勘違いなの、かな……。
でも、本当に……?
※ ※ ※
家に帰って、宿題、ごはん、お風呂をすませてベッドに潜り込んだ後でも、私はあの音のことをずっと考えている。
トントン。誰かがノックをしている音に私は聞こえた。けど、物置の中には誰もいなかったし、皆気のせいって……。
忘れよう、考えるのをやめようと思えば思うほど、気になるし考えちゃう。
こんなの、寝られない。
その時だ。
トントン、トントン。
と、ノックをする音が聞こえたのは。
まさかと思って、私はベッドの中に深く潜って息を潜めた。
私の家に、きちゃったの? どうして? 誰か、誰か助けてっ!
ガチャっと扉が開く音がした。
ドアトントンが……っ!
「ちょっと、もう寝ちゃったの? 寝るなら電気を消しなさいよ」
「……ママ?」
ベッドから起き上がれば、ママが不思議そうに私を見ている。
「他に誰があなたの体操服を持ってきてくれるの? 机の上に置いておくから、明日の朝に仕舞っておいてね。おやすみなさーい」
そう言って、ママは電気を消して部屋を出ていく。
なんだ。ママか。そうだよね、そうだよね。おばけなわけないよね。そう笑うと、なんだか物置の音も聞き間違いだったと思えてくる。
ああ、ちょっと眠くなってきたかも。
私は枕を直して目を瞑る。段々と意識が遠のく中、音が聞こえた。
トントン、トントン、トントン。
またママかな? そう思って、私はそのまま意識を手放した。
けど、何時までたってもドアは決して開かなかった。
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