【完結】エリート産業医はウブな彼女を溺愛する。

花澤凛

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揺るぎない気持ち

一難去ってまた一難

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 私達は翌日の昼を過ぎてもまだベッドの中にいた。昨夜いっぱいシたのに、彼は全然満たされていないらしい。むしろ、もっと私が乱れる様子を見ていたいんだ、と堂々と仰った。

 「…も、無理デス」

 それでも背後から抱き抱えられて下からゆっくりと潜り込んでくる熱を受け入れる。

 彼は「動かないから」としばらく私のお腹の中でじっとしていたけれど、逆に私が落ち着かなくなる。

 「…動かないの?」
 「動いてほしい?」
 「………この場合いつ終わるの?」

 エッチって男性が吐き出せば終了って思ってたんだけどちがうのかな。

 「終わらないね」
 「…それは困る」
 「どうして?」

 覗き込んだ視線が細く鋭く笑う。
 口元は穏やかなのに瞳の奥が獰猛な猛禽類みたいでゾクゾクした。

 「……何も、出来なくなるから」
 「してる」
 「それは柾哉さ、だけ、…ぁ、」

 弄られてふくふくしている蕾に手が伸びる。
 
 (挿いって、弄られて、キスされて…!?♡)

 下腹部から這い上がるシグナルに身体を震わせる。一度達した身体は二度三度と簡単に上り詰めた。

 「すっかり身体ができあがったね」
 
 抱えられた脚を下されて胎内に含んだまま身体がうつ伏せになる。柾哉さんがその上からのしかかっていて臀部の柔らかさと対照的に硬く骨張った彼の骨盤が密着した。

 「…っぁ、ぁあっ、」
 「果穂、ほらそんなに締め付けないで」
 「む、り、…ひゃんっ!」
 「腰、揺れてるよ。じっとして」
 「…っ、イジワル…!」

 うつ伏せで腰を突き上げたまま顔だけで後ろを向いた。柾哉さんが楽しそうに私を苛めている。表情はトロトロとひどく甘いのに嗜虐心を隠そうとしないニュアンスがまた私を喜ばせた。

 「でも好きでしょ?」
 「ん、すき♡」
 「果穂ドエムだから…、ほらまた動く。まだこのまま」
 「だってぇ…っ♡」

 付き合ってまだ二ヶ月。それでも私はいろんな彼の顔を見てきた。普段のクールな彼も素敵だけど、恋人わたしにはとても優しくて甘い人。

 そして、本当はとてもエッチでナチュラルドエス。でもそのドエス加減は全然嫌じゃない。むしろ私を苛めて楽しんでいる表情も、苦しそうに呻く様子もとても色っぽくて可愛くて撫で回したくなる。

 
 
 「ギュッとしたい」

 彼が抜けてしまわないように気をつけながら起き上がった私はそのまま身体を捻って柾哉さんに抱きついた。しかし、そう簡単にはうまくいかず、お腹の中から彼が出て行ってしまう。

 「抜けちゃった、」
 
 ちゅるん、と液体の膜を被ったソレが猛々しく天を向く。柾哉さんのお臍のあたりでふるりと震えるソレが可愛くて手を伸ばした。

 「果穂…っ、」

 柾哉さんの脚の上に跨ると静かに腰を下ろす。彼の肩に片手をついて、もう片方の手で丸い頭を撫でながら自分の中に引き寄せた。途端に柾哉さんの眉間に皺が寄る。

 「くぁ、…っ、」

 ひと呑みにした彼を煽るように腰を揺らした。縦揺れの方が好きらしいが、脚が辛い。ぐちゃぐちゃになった下生えを擦り付けるように腰を揺らすと喉の奥から唸めき声が聞こえた。

 「…っ、果穂、」

 洗いざらした黒髪に手を通す。くしゃくしゃに撫で回して唇を押し付けた。薄く空いた唇が私を誘っている。騙されるまま差し込めば、熱くて柔い弾力のあるものに絡みとられた。
 
 「…っ、ふン…っ」
 
 鼻から抜ける声が甘く掠れて焚き付ける。並々に注いだコップから水が溢れるように、彼が穿つそこから愛液が溢れ落ちた。四肢を汚し粘着質のある液体が肌の密着を促す。

 薄目を開けて見つめた先には、獰猛さを忍ばせた欲以上のものをたたえた瞳が私のことを探るように見つめていた。

 目が合って嬉しくて彼を締め付ける。離れたくない、と駄々をこねる子どものように彼の腰に脚を巻き付けた。グッと下腹部か押し付けらて揺れが大きくなる。小刻みに様子を伺っていたそこはもう、操縦士を失った暴れ馬車のようだった。

 「ぁあ、っ、…っ、あぁんっ、ひぁっ、」

 酸素を求めた唇はそれでも銀糸に繋がれてすぐに蓋をされた。唇の端から漏れ落ちる声が、生き物のように跳ねている。柾哉さんの片手が波打つ胸の膨らみを包みこみ柔く揉みしだき始めた。その手つきはひどく優しくて、腰の動きと裏腹なのがひどくもどかしい。

 
 「おはよう、果穂」
 「…おはよ、いまなんじ?」

 柾哉さんにふたたび散々苛められたせいで起きたらさらに時間が経っていた。なんて爛れた生活をしているんだろう、なんて思いながらも幸せなので構わない。

 「もう三時過ぎたよ」
「…どおりでお腹が空くわけだ」

  とは言いつつも、感覚的にはお腹の中にまだ何かいる。もちろん物理的に彼のゴニョゴニョはしまわれてしまったけど蠢いている気がするのは明らかに度が過ぎたせいか。

 「…果穂がナチュラルに煽るから」
 「私のせいにしないでよ」

 ぶーっと唇を突き出すと「ごめんね」とキスをくれる。
 キスしてくれたからいいよ、と胸を張れば小さな笑い声と共にいやらしくも何もない、軽いキスが落ちてきた。

 さっきまであれだけぐずぐずになっていた蜜口も今はそれ以上必要としていない。それは彼の瞳を見ても一目瞭然だった。

 「お詫びに、カルボナーラ作るよ。お風呂入っておいで」
 「うん」
 
 柾哉さんは一足先に起きて身支度を整えたらしい。それでも気になってずっと私の傍にいてくれらしい。

 「無理させたって自覚はあるから」
 「それを言うなら私も」
 「うん。半分は果穂のせい」

 真面目に真顔で言うから思わず吹き出してしまった。

 「本当、小悪魔果穂は怖い」
 「果穂ちゃんはスイッチが入ると柾哉さんを可愛がりたくてしょうがないんです」

 まだ寝転がったまま柾哉さんを抱きしめる。私が冷えないよう、柾哉さんがいつものTシャツを着せてくれたらしく布ごしに感じた彼の体温がほんのりと伝わってくる。その心地よさに浸っていると腕の中で柾哉さんがもぞもぞと動き出す。

 「…制限なく抱けそうだから離れる」
 「えー。もうちょっとギュッと、して?」
 「……ほんと小悪魔」

 結局私たちはその後一時間ぐらいただくっついたまま取り止めのない話をして過ごした。 

 
 
 空腹に耐えきれなくなったのは一体どっちだったか。どちらにせよ私はお風呂も入っていなかったので、慌ててお風呂に入る。いつもなら柾哉さんも一緒に入るけど、先に入ったからと一人で入ることに。(ちょっと寂しい)

 もう慣れてしまった男性用のシャンプーのノズルを2回プッシュしてあわ立てて髪を洗う。鏡には先日からさっきまでイタシタ痕が映っている。白い肌によく映えるそれを撫でながら身体を丁寧に洗った。

 「いい加減にしてくれよ」

 お風呂から出てきてリビングに戻ると柾哉さんが器用に笑顔で怒りながら電話をしていた。言葉遣いが砕けているからきっと親しい人なんだろう。

 不思議に思いつつ、部屋から出て行こうとすれば首を横に振られた。
 どうやら出ていかなくていいらしい。しかし話を聞いていていいのかどうかと迷った。

 きっと不安そうに見ていたからだろう。柾哉さんは耳から携帯を離して「姉さん」と教えてくれた。それならばと大人しく椅子に座る。テーブルの上にはすでにパスタが出来上がっていた。

 「とりあえず切るから」

 やれやれと溜息を吐き出しながら柾哉さんは電話を切った。その表情はひどく面倒くさそうだ。

 「どうしたの?」
 「茅野が親父に泣きついたって連絡があった」
 「え?」
 「それだけだったらよかったんだけど、果穂のことを色々悪く言った上、『別れさせ屋』を使って別れさせると息巻いているらしい」
 「はぁああああ?!」
 
 思わず大きな声がでてしまったのは仕方ない。だってそんな「別れさせ屋」なんて、まるでドラマのような話だ。

 「父は茅野を小さな頃から可愛がっていたから余計に彼女の味方だ」
 「え?つまり幼馴染ですか?」
 「いや、初めて会ったのは…たしか高校生の頃だったか」

 柾哉さん曰く、柾哉さんのお父様と茅野さんのお父様は友人同士でよく会っていた。そして、茅野さんのお父様は娘を溺愛していた。娘の友人に男はいらない、というぐらいに。
 
 それもあり茅野さんは中高とお嬢様学校だった。大学も本当は女子大の医学部にと勧められていたんだけど、彼女はそれは「嫌」と突っぱねた。「医師になるなら男性の患者もいるから慣れておかないでどうする」とお父様を説き伏せたんだとか。

 「まあきっとそれはあくまで建前だと思ってる。本心はチヤホヤされたかっただけじゃないか。世間一般的に見れば美人な部類だろうし。あ、誤解しないでほしいけど、あくまで世間一般で俺の好みではないし、茅野をそんな目で見たことは一切ないから」

 柾哉さんの言葉の最後の「ない」にすごく力が篭っていて思わず笑ってしまった。
 
 「誓って」
 「はい、信じます」
 「うん。俺は果穂が好きだから。見た目も中身も俺の好みドンピシャ」
 「ふふふ」

 さっきまでたくさん愛された。今だってまだお腹の奥で彼を感じている。
 下腹部を撫でているととろりとした瞳が私を見つめていた。きっと今柾哉さんにお願いすれば、もう一度寝室に戻ってたくさん愛を囁いてくれるだろう。
 だけど今はとりあえずお腹が空いた。柾哉さんとの戯れはキリがなくて終わりが見えないから困る。

 
 


 
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