16 / 39
第ニ章:暴け真実、取り戻せ記憶
8
しおりを挟む
「これで、大丈夫……なのか?」
一吹がそう言って肩で息を整える。恐怖が貼り付いたその顔は、少し青い。
「……大丈夫とは断言出来ないけれど、廊下にいるよりは安全だと思うわ」
「一時的には助かったってところか……」
北原が汗を拭いながら気が抜けたようにそう零した。
俺はまだ警戒を解くことが出来なかった。あの得体の知れない何かが、すぐ側でこちらの様子を伺っているような気がしてならなかったからだ。
アレが何なのかは分からない。だが、心を凍りつかせるような、『死』を感じさせたような雰囲気は、忘れることが出来ない。旧校舎の地下で見た墓標とは、また違った恐怖を感じた。
「雅ちゃん、大丈夫……?」
「あぁ、意外と大丈夫だよ。あずは怪我ない?」
「うん……ごめんね、私、動けなくて……」
「いいって。それより、そこはごめんじゃなくてありがとうって言ってくれた方がアタシは嬉しい」
「……ありがとう」
「どういたしまして」
床に座り込んだ二人はそう会話すると、緊張感の中でもふと笑みを咲かせた。そのせいか、少しだけ空気が軽くなったような気がする。先程まで聞こえなかった生徒たちが活気よく部活動に取り組んでいる声も、今は遠くから聞こえてきていた。
「北原、そのままだといけないから手当てしようか?」
「うーん……それがさ、あんな鋭い斧で斬られたのに、今は何ともないんだよね?」
「え、どういうこと……?」
「確かに斬られた時はめちゃくちゃ痛かったし、血も出てるなぁって感じがしたけど、今はそんなにというか……」
北原は赤く染まった制服を見つめながら小首を傾げる。傷を受けた本人が一番不思議そうにしているが、周りでそれを聞いていた俺達も訳が分からないといった顔をしている。
「……雅、ちょっと脱いでみろ」
一吹が神妙な顔つきで言った瞬間、北原の鉄拳が一吹の顔面にめり込んだ。
あれは絶対に痛い。ものすごい音がした。
「てめぇ、セクハラとかいい度胸だな」
「ご、誤解だっての! 傷見せてみろって意味だよ! お前が脱いでも何も面白くねぇから!」
「それはそれでなんかムカつく言い方だなこの野郎!」
二人は状況も忘れて大声で言い争いを始める。どう考えても一吹の言い方が悪いだろうに。俺は呆れながら二人を見つめていた。
「ふ、二人とも……」
「……騒いだらあの化け物に気づかれるかもしれないわよ?」
夕凪の一言に、騒いでいた二人もあたふたしていたあずもピタリと動きを止めた。もはや呪文に近い。
だが、彼女の言う通りだった。
今は一時的に逃れられているが、俺達の居場所に気づいたら迷いなくこの扉を蹴破ってくるだろう。
保健室は一瞬にして静まり返り、再び緊迫感が襲った。
「……雅ちゃん、手当てしよう」
「ありがと、あず」
あずが救急箱を取り出して北原の隣にしゃがみこむ。北原は礼を言うと、上着を脱いでブラウスの袖を捲った。
「え……?」
「どういうことだ……?」
あずと北原が驚愕の声を上げる。
「どうかしたの?」
「……傷が無い」
「は……?」
北原の動揺した声に一吹が素っ頓狂な声を上げた。北原が指を指すから覗き込めば、確かに言った通りそこには傷痕が無かった。
本当は怪我などしていなかったのか。
一瞬そう思ったが、制服には明らかに血が染み込んでいる。それに、あの斧が北原の腕を斬りつける瞬間もこの目で確かに見ていた。
それなのに、北原の肌には傷一つついていない。程よく日焼けしたその素肌には、血がべっとりついているにも関わらず、切り傷一つ見当たらなかった。
「お、お前、まさか人間じゃ……」
「馬鹿言うなよ! アタシは歴とした人間だっつーの!」
「分かんねぇだろ⁉ もしかしたら知らぬ間に改造されてたとかさ……!」
「そんなことあるわけない! つーか嫌だ!」
青い顔でそう言いはる一吹と、同じように大声で否定する北原。またもヒートアップする二人に、俺が声をかけようとした時、
「ふ、二人とも落ち着いて!」
とあずの怒ったような声が響いた。
「あ、あの影が私たちに気づいちゃうよ……」
「わ、悪いあず……」
あずの鶴の一声は、北原にはよく効く。すぐさま謝罪し、呆れたように見つめる夕凪にも一言謝罪していた。
「……さっきのといい、北原の傷の件といい、そろそろ本格的におかしいよね。もう、世界の秘密を探そうなんて遊び半分ではいられないというか……」
俺がそう零すと、皆も同じように曖昧な表情で同意の目をこちらに向けた。
「マジでさっきの何なんだよ……あんなの、現実にありえねぇだろ」
北原が皮膚に付着した血液を拭いながら言えば、扉に背を預けた夕凪が静かに口を開いた。
「……地獄からの使い魔」
「は?」
「え?」
その言葉に、俺と一吹の声が重なった。夕凪の言葉が、あまりに突飛すぎたからだ。
「本で見たことがあるわ。真っ黒く塗りつぶされた奇怪な存在が地獄には居て、彷徨う人間の魂を地獄へと導くって」
「おいおい、こころ。お前そんなフィクションみたいな話信じてるのか?」
「一吹くんだってさっき見たでしょう?」
「そうだけどよ……地獄からの使い魔って、そんなん信じる方が馬鹿げてるぞ?」
「…………そうね」
混乱した一吹が少し語調を強めて言えば、夕凪は案外あっさりと一吹の言葉を受け入れた。
俺には、あながちその話も間違いじゃないと思えた。非現実的なことなんて、自分たちの生きる理由と世界の秘密に興味を持ち始めた瞬間から、少しずつ目にしているのだ。おまけに、この世に存在するはずのない化け物のようなモノに襲われている。
フィクションの世界の話とだけでは、どうにも片付けられないような気がした。
「……世界の均衡が崩れ始めているのかも」
夕凪が、俯いてそう呟いた。
その声は、どうやら一番近くにいた俺にしか聞こえなかったらしい。夕凪の言葉の意味は理解できなかった。
世界の均衡?
崩れ始めている?
夕凪は、この世界についてやはり何か知っているらしい。その言葉もあくまで彼女なりの推測なのかもしれないが、俺には世界の秘密を知ったうえでの発言に聞こえた。
「夕凪、あのさ……」
「あー! オレ分かったかも!」
俺が彼女に訊ねようとした時、一吹の大声が重なる。遮られた俺は彼の名を呼び、苦笑した。
「いきなり大声出すなよ、あずがビビるだろうが」
「す、すみません……」
「一吹、何が分かったの?」
「もちろん、オレたちがこの世界で生きる理由と世界の秘密だよ!」
一吹は自信満々に胸を叩いた。だが、その顔はそれほど嬉しそうではなかった。
「まぁ、あくまで仮説なんだけどさ。さっきの化け物と、北原の傷で思いついたというか、察したというか……。オレたちさ、やっぱ人体実験か何かに利用されてんだよ」
「人体実験?」
あずが震えた声で聞き返した。
「あぁ。おそらく、不死身になるとか、スペックの高い人間を生み出すとかそんな感じ。既に体に何らかの処置は施されていて、今はその実験段階みたいな。北原がアイツに斬られたのに傷一つなかったのは、治癒能力が格段に上がっているか、そもそも傷がつかない……不死みたいな体にされてんじゃねぇかって思って」
「お前、まだアタシが人間じゃないって疑ってんの?」
「そういうわけじゃない。ちゃんとした人間さ。ただ、第三者の手によって少し改造されたね。もちろん、オレたちも同じだ」
一吹は机上のペン立てに入っていたボールペンを手に取った。全員が不思議そうに見ていると、一吹はいきなり左腕にボールペンを勢いよく突き刺した。
「い、一吹⁉」
「大丈夫だって繋。まぁ、見てろよ」
一吹が顔を歪めながら笑う。
俺たち四人は、一吹の突然の行動に驚愕しながらも、彼が指さす腕を見つめた。ボールペンはそれなりに深く刺さったようで、鮮血が傷痕に沿って溢れていく。
しかし、その血が流れて床に落ちた瞬間、スッと傷痕が消えた。段々と溶けていくみたいに、ごく自然に、当然のように消失した。
「マ、マジかよ……」と北原が色のない顔で呟いた。
「な? 不死かどうかは分かんねーけど、何かしらオレたちの体に細工がされてんのは間違いないだろ。だって、こんなのおかしいじゃねぇか」
普段のふざけた雰囲気はどこにもなく、一吹は真剣に言った。
おかしいどころの騒ぎじゃない。
世界に俺達が人間である証を否定されたみたいだ。
俺たちが実験体で、俺たちを使って何かをしようとしている輩がいるというのは、もしかしたら真実なのかもしれない。
「あの化け物はさ、たぶん失敗作ってヤツなんだよ。オレたちが成功例で、アイツは悲しくも実験によって化け物になっちまったヤツ。そう考えれば、全部辻褄が合わねぇか?」
「確かにそうかも……あの地下のお墓も、これまで実験に失敗した人の……って考えちゃったら……」
あずが自身を抱きしめるようにしながら、泣きそうに呟いた。
「この街から出られないのも、オレたち実験体を逃がさないため。大切な記憶を取り戻すことが、もしかしたら完全な成功例となる条件か何かなのかも」
一吹が至極真面目にそう語り、俺に同意を求めるかのように視線を送ってくる。すぐに頷くことはできないが、あのような化け物を見た後だと、何に対しても可能性を感じてしまう。ありえない話ではないと、本能が告げているような気がしてならない。
一吹がそう言って肩で息を整える。恐怖が貼り付いたその顔は、少し青い。
「……大丈夫とは断言出来ないけれど、廊下にいるよりは安全だと思うわ」
「一時的には助かったってところか……」
北原が汗を拭いながら気が抜けたようにそう零した。
俺はまだ警戒を解くことが出来なかった。あの得体の知れない何かが、すぐ側でこちらの様子を伺っているような気がしてならなかったからだ。
アレが何なのかは分からない。だが、心を凍りつかせるような、『死』を感じさせたような雰囲気は、忘れることが出来ない。旧校舎の地下で見た墓標とは、また違った恐怖を感じた。
「雅ちゃん、大丈夫……?」
「あぁ、意外と大丈夫だよ。あずは怪我ない?」
「うん……ごめんね、私、動けなくて……」
「いいって。それより、そこはごめんじゃなくてありがとうって言ってくれた方がアタシは嬉しい」
「……ありがとう」
「どういたしまして」
床に座り込んだ二人はそう会話すると、緊張感の中でもふと笑みを咲かせた。そのせいか、少しだけ空気が軽くなったような気がする。先程まで聞こえなかった生徒たちが活気よく部活動に取り組んでいる声も、今は遠くから聞こえてきていた。
「北原、そのままだといけないから手当てしようか?」
「うーん……それがさ、あんな鋭い斧で斬られたのに、今は何ともないんだよね?」
「え、どういうこと……?」
「確かに斬られた時はめちゃくちゃ痛かったし、血も出てるなぁって感じがしたけど、今はそんなにというか……」
北原は赤く染まった制服を見つめながら小首を傾げる。傷を受けた本人が一番不思議そうにしているが、周りでそれを聞いていた俺達も訳が分からないといった顔をしている。
「……雅、ちょっと脱いでみろ」
一吹が神妙な顔つきで言った瞬間、北原の鉄拳が一吹の顔面にめり込んだ。
あれは絶対に痛い。ものすごい音がした。
「てめぇ、セクハラとかいい度胸だな」
「ご、誤解だっての! 傷見せてみろって意味だよ! お前が脱いでも何も面白くねぇから!」
「それはそれでなんかムカつく言い方だなこの野郎!」
二人は状況も忘れて大声で言い争いを始める。どう考えても一吹の言い方が悪いだろうに。俺は呆れながら二人を見つめていた。
「ふ、二人とも……」
「……騒いだらあの化け物に気づかれるかもしれないわよ?」
夕凪の一言に、騒いでいた二人もあたふたしていたあずもピタリと動きを止めた。もはや呪文に近い。
だが、彼女の言う通りだった。
今は一時的に逃れられているが、俺達の居場所に気づいたら迷いなくこの扉を蹴破ってくるだろう。
保健室は一瞬にして静まり返り、再び緊迫感が襲った。
「……雅ちゃん、手当てしよう」
「ありがと、あず」
あずが救急箱を取り出して北原の隣にしゃがみこむ。北原は礼を言うと、上着を脱いでブラウスの袖を捲った。
「え……?」
「どういうことだ……?」
あずと北原が驚愕の声を上げる。
「どうかしたの?」
「……傷が無い」
「は……?」
北原の動揺した声に一吹が素っ頓狂な声を上げた。北原が指を指すから覗き込めば、確かに言った通りそこには傷痕が無かった。
本当は怪我などしていなかったのか。
一瞬そう思ったが、制服には明らかに血が染み込んでいる。それに、あの斧が北原の腕を斬りつける瞬間もこの目で確かに見ていた。
それなのに、北原の肌には傷一つついていない。程よく日焼けしたその素肌には、血がべっとりついているにも関わらず、切り傷一つ見当たらなかった。
「お、お前、まさか人間じゃ……」
「馬鹿言うなよ! アタシは歴とした人間だっつーの!」
「分かんねぇだろ⁉ もしかしたら知らぬ間に改造されてたとかさ……!」
「そんなことあるわけない! つーか嫌だ!」
青い顔でそう言いはる一吹と、同じように大声で否定する北原。またもヒートアップする二人に、俺が声をかけようとした時、
「ふ、二人とも落ち着いて!」
とあずの怒ったような声が響いた。
「あ、あの影が私たちに気づいちゃうよ……」
「わ、悪いあず……」
あずの鶴の一声は、北原にはよく効く。すぐさま謝罪し、呆れたように見つめる夕凪にも一言謝罪していた。
「……さっきのといい、北原の傷の件といい、そろそろ本格的におかしいよね。もう、世界の秘密を探そうなんて遊び半分ではいられないというか……」
俺がそう零すと、皆も同じように曖昧な表情で同意の目をこちらに向けた。
「マジでさっきの何なんだよ……あんなの、現実にありえねぇだろ」
北原が皮膚に付着した血液を拭いながら言えば、扉に背を預けた夕凪が静かに口を開いた。
「……地獄からの使い魔」
「は?」
「え?」
その言葉に、俺と一吹の声が重なった。夕凪の言葉が、あまりに突飛すぎたからだ。
「本で見たことがあるわ。真っ黒く塗りつぶされた奇怪な存在が地獄には居て、彷徨う人間の魂を地獄へと導くって」
「おいおい、こころ。お前そんなフィクションみたいな話信じてるのか?」
「一吹くんだってさっき見たでしょう?」
「そうだけどよ……地獄からの使い魔って、そんなん信じる方が馬鹿げてるぞ?」
「…………そうね」
混乱した一吹が少し語調を強めて言えば、夕凪は案外あっさりと一吹の言葉を受け入れた。
俺には、あながちその話も間違いじゃないと思えた。非現実的なことなんて、自分たちの生きる理由と世界の秘密に興味を持ち始めた瞬間から、少しずつ目にしているのだ。おまけに、この世に存在するはずのない化け物のようなモノに襲われている。
フィクションの世界の話とだけでは、どうにも片付けられないような気がした。
「……世界の均衡が崩れ始めているのかも」
夕凪が、俯いてそう呟いた。
その声は、どうやら一番近くにいた俺にしか聞こえなかったらしい。夕凪の言葉の意味は理解できなかった。
世界の均衡?
崩れ始めている?
夕凪は、この世界についてやはり何か知っているらしい。その言葉もあくまで彼女なりの推測なのかもしれないが、俺には世界の秘密を知ったうえでの発言に聞こえた。
「夕凪、あのさ……」
「あー! オレ分かったかも!」
俺が彼女に訊ねようとした時、一吹の大声が重なる。遮られた俺は彼の名を呼び、苦笑した。
「いきなり大声出すなよ、あずがビビるだろうが」
「す、すみません……」
「一吹、何が分かったの?」
「もちろん、オレたちがこの世界で生きる理由と世界の秘密だよ!」
一吹は自信満々に胸を叩いた。だが、その顔はそれほど嬉しそうではなかった。
「まぁ、あくまで仮説なんだけどさ。さっきの化け物と、北原の傷で思いついたというか、察したというか……。オレたちさ、やっぱ人体実験か何かに利用されてんだよ」
「人体実験?」
あずが震えた声で聞き返した。
「あぁ。おそらく、不死身になるとか、スペックの高い人間を生み出すとかそんな感じ。既に体に何らかの処置は施されていて、今はその実験段階みたいな。北原がアイツに斬られたのに傷一つなかったのは、治癒能力が格段に上がっているか、そもそも傷がつかない……不死みたいな体にされてんじゃねぇかって思って」
「お前、まだアタシが人間じゃないって疑ってんの?」
「そういうわけじゃない。ちゃんとした人間さ。ただ、第三者の手によって少し改造されたね。もちろん、オレたちも同じだ」
一吹は机上のペン立てに入っていたボールペンを手に取った。全員が不思議そうに見ていると、一吹はいきなり左腕にボールペンを勢いよく突き刺した。
「い、一吹⁉」
「大丈夫だって繋。まぁ、見てろよ」
一吹が顔を歪めながら笑う。
俺たち四人は、一吹の突然の行動に驚愕しながらも、彼が指さす腕を見つめた。ボールペンはそれなりに深く刺さったようで、鮮血が傷痕に沿って溢れていく。
しかし、その血が流れて床に落ちた瞬間、スッと傷痕が消えた。段々と溶けていくみたいに、ごく自然に、当然のように消失した。
「マ、マジかよ……」と北原が色のない顔で呟いた。
「な? 不死かどうかは分かんねーけど、何かしらオレたちの体に細工がされてんのは間違いないだろ。だって、こんなのおかしいじゃねぇか」
普段のふざけた雰囲気はどこにもなく、一吹は真剣に言った。
おかしいどころの騒ぎじゃない。
世界に俺達が人間である証を否定されたみたいだ。
俺たちが実験体で、俺たちを使って何かをしようとしている輩がいるというのは、もしかしたら真実なのかもしれない。
「あの化け物はさ、たぶん失敗作ってヤツなんだよ。オレたちが成功例で、アイツは悲しくも実験によって化け物になっちまったヤツ。そう考えれば、全部辻褄が合わねぇか?」
「確かにそうかも……あの地下のお墓も、これまで実験に失敗した人の……って考えちゃったら……」
あずが自身を抱きしめるようにしながら、泣きそうに呟いた。
「この街から出られないのも、オレたち実験体を逃がさないため。大切な記憶を取り戻すことが、もしかしたら完全な成功例となる条件か何かなのかも」
一吹が至極真面目にそう語り、俺に同意を求めるかのように視線を送ってくる。すぐに頷くことはできないが、あのような化け物を見た後だと、何に対しても可能性を感じてしまう。ありえない話ではないと、本能が告げているような気がしてならない。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
黄昏は悲しき堕天使達のシュプール
Mr.M
青春
『ほろ苦い青春と淡い初恋の思い出は・・
黄昏色に染まる校庭で沈みゆく太陽と共に
儚くも露と消えていく』
ある朝、
目を覚ますとそこは二十年前の世界だった。
小学校六年生に戻った俺を取り巻く
懐かしい顔ぶれ。
優しい先生。
いじめっ子のグループ。
クラスで一番美しい少女。
そして。
密かに想い続けていた初恋の少女。
この世界は嘘と欺瞞に満ちている。
愛を語るには幼過ぎる少女達と
愛を語るには汚れ過ぎた大人。
少女は天使の様な微笑みで嘘を吐き、
大人は平然と他人を騙す。
ある時、
俺は隣のクラスの一人の少女の名前を思い出した。
そしてそれは大きな謎と後悔を俺に残した。
夕日に少女の涙が落ちる時、
俺は彼女達の笑顔と
失われた真実を
取り戻すことができるのだろうか。
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ
しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ハナノカオリ
桜庭かなめ
恋愛
女子高に進学した坂井遥香は入学式当日、校舎の中で迷っているところをクラスメイトの原田絢に助けられ一目惚れをする。ただ、絢は「王子様」と称されるほどの人気者であり、彼女に恋をする生徒は数知れず。
そんな絢とまずはどうにか接したいと思った遥香は、絢に入学式の日に助けてくれたお礼のクッキーを渡す。絢が人気者であるため、遥香は2人きりの場で絢との交流を深めていく。そして、遥香は絢からの誘いで初めてのデートをすることに。
しかし、デートの直前、遥香の元に絢が「悪魔」であると告発する手紙と見知らぬ女の子の写真が届く。
絢が「悪魔」と称されてしまう理由は何なのか。写真の女の子とは誰か。そして、遥香の想いは成就するのか。
女子高に通う女の子達を中心に繰り広げられる青春ガールズラブストーリーシリーズ! 泣いたり。笑ったり。そして、恋をしたり。彼女達の物語をお楽しみください。
※全話公開しました(2020.12.21)
※Fragranceは本編で、Short Fragranceは短編です。Short Fragranceについては読まなくても本編を読むのに支障を来さないようにしています。
※Fragrance 8-タビノカオリ-は『ルピナス』という作品の主要キャラクターが登場しております。
※お気に入り登録や感想お待ちしています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる