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32.盗賊

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 最初にコローナのスキルの鼓舞聖句をかけてもらう。
 森にいた幻視使いと戦った時にも使ってもらった攻撃力を上げるスキルだ。

 そのあとコローナと距離を取る。
 すると、相手も三人ずつに分かれた。

 ちなみに、一人だけステータスの高いボスみたいなやつはコローナ側に行った。
 同じくらいの年齢の非戦闘職と上級職じゃ仕方ないんだけど、ちょっと悔しい。

 まぁ戦って見返してやればいいか。

「ハハ、こんなガキ俺一人で十分だ。お前らはそこで見てろ」
「 はいよ」

 そう言って、俺側に来た三人の中では一番強いやつが、剣を片手に走って近づいてきた。
 他の二人はニヤニヤしながらその場に突っ立ってる。

 ずいぶんナメられてるな。
 油断してくれてた方がラクだから別にいいんだけどね。

 硬化と電纒使って攻撃力を最大にしとく。

「オラァァ」

 声を上げながら大振りで切りかかってくる。
 ……隙だらけだ。

 ガラ空きの胴体に容赦なく攻撃を入れる。

「グハッ!?」

 コローナのスキルの影響もあって想像以上にダメージが入った。
 痛みで相手が怯む。

 すかさず追撃を入れると、倒れてそのまま動かなくなった。

「「ひっ!?」」

 後ろの二人の顔から血の気が引く。

 ……ふう。
 盗賊やってる以上、殺されても仕方ない相手だったとはいえ、人を殺すのは心が痛む。

 でも今はそんな感傷に浸ってる場合じゃない。
 残った二人の方に目を向ける。

 するとさらに二人の顔が青ざめた。

 自分たちより強い仲間が瞬殺されたのだ。
 勝ち目が薄いことは理解してるのだろう。

 ここで逃げてくれれば一番ラクなんだけど……。

「「お、オラァァ」」

 しかし俺の期待通りにはいかず、さっきのと同じような声を出しながら向かってきた。

「はあ…」

 殺したくないけど、そんな悠長なこと言ってられない。
 手を抜いて確実に勝てるほどの差はないし、それにコローナ一人でボス含めた三人相手はきついだろうから、そっちにもすぐ向かわなきゃいけない。

 さっきは使わなかった飛斬撃で、走ってくる二人まとめて攻撃する。
 予想外の遠距離攻撃に戸惑っている間に、近づいてトドメを刺した。

 終わってコローナの方を見ると、案の定戦闘はまだ続いていた。
 敵も三人とも残ってる。

「ふっ」

 コローナの方に走りながら斬撃を飛ばす。

「うっ」

 その斬撃が、手前にいた一人に直撃した。

 仲間が負けると思ってなかったんだろう。
 横からの攻撃には全く注意を払わず、コローナとの戦闘に集中してたようだ。

 元からダメージを受けてたらしく、この斬撃一発でHPが0になった。

「なっ!? なぜお前が来てるんだ、俺の子分たちはどうした!?」
「そりゃ倒し終わったから来たに決まってるでしょ」
「そ、そんな馬鹿な……!」

 敵のボスが俺たちが戦ってた方を向き、三つの死体を発見する。

「き、貴様ァ!」

 顔を真っ赤にして俺に向かって突進してくる。

「コローナ、俺こいつ引き受けるからそっちよろしくね」
「おっけー」

 これでうまい具合に両方一対一になったな。
 コローナのHPは全然残ってたから、向こうは心配いらないだろう。

 それなら俺はこっちに集中できる。
 さっきのやつらみたいに軽く倒せる相手じゃないから気を引き締めないとな。

「ふんっ」

 敵が手に持ってた背丈くらいある大きな斧を振り下ろしてきた。
 バックステップでこれをかわす。

 俺の方が攻撃力が高いならまだしも、同じくらいでこの攻撃を剣で受けるのは得策じゃない。

 斧が砂にささった隙に敵に攻撃を仕掛ける。
 相手が重量のある武器なら手数で勝負だ。

 しかし、相手は軽々と斧を砂から抜き、金属部分で俺の連撃を受け流していく。

「ハハッ驚いたか、俺の腕力があれば斧くらい軽々使えるんだよ」

 なんて自慢気に言ってくるが、多分そういう問題じゃない。

 こいつのスキルに「重量操作・弱」ってのがある。
 これで斧の重さを変えてるんだろう。

 バレてるとも知らずにつまんない見栄はって恥ずかしいやつだな。

 まぁでも普通にこのスキルは厄介だ。
 弱ってついてるから、そんなに重量は変えられないんだろうけど、攻撃する時は重く、受けるときには軽くすれば、相当なアドバンテージになる。

「そらっ」

 また振り下ろしがくる。
 やっぱり、しっかりと重さの乗った攻撃だ。

 これもかわして反撃に移るが、また受け流される。

 ……きついな。
 いつまでかわし続けられるか分かんない。

 今のところ電纒のダメージでちょっとずつ敵のHP削れてはいるけど、敵の攻撃一発食らったら一気に形勢逆転する。

 するとここで横から声が聞こえた。

「テオくん、加勢するよ」
「ナイスタイミング。まだ敵のHP三分の二くらい残ってるからよろしく」

 敵を倒し終わったコローナと再び合流した。
 二対一になればこっちのもんだ。

 最後の一人まで倒されたボスが怒り狂って向かってきたが、二人掛かりの攻撃を受け流しきれるわけもなく、すぐに息耐えた。
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