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20.グリズリー⑤
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想定外の二体との同時戦闘で危険度は増したが、おかげで探す手間は省けた。
追加クエストのクリアで鍵のグレードアップもされたので、倒し終わってすぐに街に戻る。
早くダンジョン潜りたいしね。
門を通る時には、いつもの門番にめちゃくちゃ驚かれた。
自分の血とグリズリーの返り血で真っ赤だったからね。
ていうか、いつも同じ人だけどちゃんと休んでんのかな。
血まみれで街中を歩いてると注目が集まるため、そそくさとギルドの中に入る。
今日はギルド依頼が書いてある掲示板の前に、スキンヘッドでムキムキの冒険者らしき人が立ってた。
初めて見る人だ。
「あ、テオさん!そんなに血だらけでどうされたんですか!?」
昨日もカウンターにいた受付嬢のエラさんに声をかけられ、その冒険者っぽい人から目を離し、カウンターに向かう。
「はい、これ約束のグリズリー二体分の魔石です」
「……もうですか?」
「二体一緒にいたんで」
「おいおい、エラちゃーん。そんな黒目のガキがグリズリーなんて倒せるわけないじゃねえか」
後ろから声がしたので振り返ると、さっき掲示板眺めてた男が立ってた。
正面から見ると黒い髭が生えてて、余計ガラが悪そうだ。
「いや、でも実際にこうやって魔石を持ってきてくれてるじゃないですか。ちゃんと本物ですし」
「どうせ誰かが狩ったグリズリーの魔石を金でも出して譲ってもらったとかだろ」
なんだこいつ。
俺が非戦闘職だからって下に見てるタイプか。
腹が立って、つい睨みつけてしまった。
馬鹿にされて許せるほど、大人の余裕はまだ持ち合わせてない。
「おい、なんだクソガキ、睨みやがって。俺とやろうってのか?」
反応した男が、腰に挿してあった剣を抜くそぶりを見せる。
「ちょっと、ダミアンさん!相手は冒険者でもない非戦闘職の男の子ですよ!」
「うるせえ。俺は俺のことを舐めてるガキが一番嫌いなんだよ!」
うわ、コイツまじでやる気かよ。
見たところ青目だから普通戦闘職か。
とりあえず鑑定だな。
『ステータス』
《名前》 ダミアン
《レベル》17
《職業》 タンク
《HP》 600/600
《MP》 520/520
《物攻》 480
《物防》 540
《魔攻》 490
《魔防》 530
《スキル》物防上昇・小
魔防上昇・小
見た目は歳いってる割にレベルが低すぎる。
前に門番が言ってた、自分より弱い魔物ばかり倒してて経験値もらえない人か。
そんな腰抜けにでかい顔されるの癪だな。
俺も電狼剣に手をかける。
「本当にやる気か。てめえみたいな非戦闘職が俺に勝てると思ってんのか?」
「戦闘職のくせに、危ないからってグリズリーから逃げるような腰抜けに負けるかよ」
「テオさん!?」
エラさんが俺の言葉に驚いたように声を上げる。
俺自身こんな乱暴な言葉遣いしたのも、戦闘職に歯向かうのも初めてだから、自分でも驚いてる。
すると、これで完全にキレたのか、ダミアンと呼ばれた男が剣を抜いて叫び出した。
「……っ!舐めやがってえええ!」
そして、その剣を振り上げ俺に斬りかかろうとする。
俺も応じるように剣を振る。
カキン、カキン。
剣どうしがぶつかる音がして、俺の剣は思ってたより幾分か自分に近い場所で止まった。
俺とダミアンの間に男の人が立っていたのだ。
その人は両手に剣を持ち、左右からくる俺たちの剣を、涼しい顔をしてそれぞれの剣で受けていた。
「ふう、間に合った。何事かな?」
整った顔をしたその男の人が、左右にいる俺たちを交互に見ながら質問する。
「ギルド長!」
すると俺たちが答えるより早く、エラさんが叫んだ。
「お、エラちゃん久しぶりー。これどういう状況?」
「えっとですね…」
そう言ってエラさんが代わりに説明をしてくれた。
◆ ◆ ◆
――ギルド長視点――
「フーンフフーン♫」
鼻歌を歌いながらギルドに向かう。
他の島に出張行ってて、10日ぶりのギルドだからテンション上がり中。
「到着~」
そのままのテンションで速歩きしてたから、いつもより早く着いた。
だけどいつもと様子が違う。
街自体に冒険者が少ないから、普段はほとんど話し声もしなくて静かなんだけど、今日は何だか騒がしい。
変に思ってドアを開けると、カウンターの前で、ウチのギルド一番の問題児ダミアンと、見たことない非戦闘職の男の子が剣に手をかけて睨み合ってた。
誰だろ、あの子。
すると、ダミアンが剣を振りかぶり出した。
まじかよ。
いくらダミアンでもあんな子に手を出すとは思ってなかったため出遅れた。
全速力で両脇の腰に下げた剣を抜き間に入り、向かってくる二本の剣を受け止める。
カキン、カキン。
「…!!」
慌てて左手の剣の握りを強くする。
…危なっ。
なんだ、この子の攻撃力。
非戦闘職の子どもだと思って、ダミアンの方ばかり気にしてたら、思った以上の衝撃で、あやうく剣を飛ばされるところだった。
ダミアンなんかよりよっぽど強いじゃん。
「ふう、間に合った。何事かな?」
ただここは、内心の慌てっぷりを隠して、冷静な様子を装っておく。
だって僕ギルド長だからね。
焦ってるとか思われたくないもん。
追加クエストのクリアで鍵のグレードアップもされたので、倒し終わってすぐに街に戻る。
早くダンジョン潜りたいしね。
門を通る時には、いつもの門番にめちゃくちゃ驚かれた。
自分の血とグリズリーの返り血で真っ赤だったからね。
ていうか、いつも同じ人だけどちゃんと休んでんのかな。
血まみれで街中を歩いてると注目が集まるため、そそくさとギルドの中に入る。
今日はギルド依頼が書いてある掲示板の前に、スキンヘッドでムキムキの冒険者らしき人が立ってた。
初めて見る人だ。
「あ、テオさん!そんなに血だらけでどうされたんですか!?」
昨日もカウンターにいた受付嬢のエラさんに声をかけられ、その冒険者っぽい人から目を離し、カウンターに向かう。
「はい、これ約束のグリズリー二体分の魔石です」
「……もうですか?」
「二体一緒にいたんで」
「おいおい、エラちゃーん。そんな黒目のガキがグリズリーなんて倒せるわけないじゃねえか」
後ろから声がしたので振り返ると、さっき掲示板眺めてた男が立ってた。
正面から見ると黒い髭が生えてて、余計ガラが悪そうだ。
「いや、でも実際にこうやって魔石を持ってきてくれてるじゃないですか。ちゃんと本物ですし」
「どうせ誰かが狩ったグリズリーの魔石を金でも出して譲ってもらったとかだろ」
なんだこいつ。
俺が非戦闘職だからって下に見てるタイプか。
腹が立って、つい睨みつけてしまった。
馬鹿にされて許せるほど、大人の余裕はまだ持ち合わせてない。
「おい、なんだクソガキ、睨みやがって。俺とやろうってのか?」
反応した男が、腰に挿してあった剣を抜くそぶりを見せる。
「ちょっと、ダミアンさん!相手は冒険者でもない非戦闘職の男の子ですよ!」
「うるせえ。俺は俺のことを舐めてるガキが一番嫌いなんだよ!」
うわ、コイツまじでやる気かよ。
見たところ青目だから普通戦闘職か。
とりあえず鑑定だな。
『ステータス』
《名前》 ダミアン
《レベル》17
《職業》 タンク
《HP》 600/600
《MP》 520/520
《物攻》 480
《物防》 540
《魔攻》 490
《魔防》 530
《スキル》物防上昇・小
魔防上昇・小
見た目は歳いってる割にレベルが低すぎる。
前に門番が言ってた、自分より弱い魔物ばかり倒してて経験値もらえない人か。
そんな腰抜けにでかい顔されるの癪だな。
俺も電狼剣に手をかける。
「本当にやる気か。てめえみたいな非戦闘職が俺に勝てると思ってんのか?」
「戦闘職のくせに、危ないからってグリズリーから逃げるような腰抜けに負けるかよ」
「テオさん!?」
エラさんが俺の言葉に驚いたように声を上げる。
俺自身こんな乱暴な言葉遣いしたのも、戦闘職に歯向かうのも初めてだから、自分でも驚いてる。
すると、これで完全にキレたのか、ダミアンと呼ばれた男が剣を抜いて叫び出した。
「……っ!舐めやがってえええ!」
そして、その剣を振り上げ俺に斬りかかろうとする。
俺も応じるように剣を振る。
カキン、カキン。
剣どうしがぶつかる音がして、俺の剣は思ってたより幾分か自分に近い場所で止まった。
俺とダミアンの間に男の人が立っていたのだ。
その人は両手に剣を持ち、左右からくる俺たちの剣を、涼しい顔をしてそれぞれの剣で受けていた。
「ふう、間に合った。何事かな?」
整った顔をしたその男の人が、左右にいる俺たちを交互に見ながら質問する。
「ギルド長!」
すると俺たちが答えるより早く、エラさんが叫んだ。
「お、エラちゃん久しぶりー。これどういう状況?」
「えっとですね…」
そう言ってエラさんが代わりに説明をしてくれた。
◆ ◆ ◆
――ギルド長視点――
「フーンフフーン♫」
鼻歌を歌いながらギルドに向かう。
他の島に出張行ってて、10日ぶりのギルドだからテンション上がり中。
「到着~」
そのままのテンションで速歩きしてたから、いつもより早く着いた。
だけどいつもと様子が違う。
街自体に冒険者が少ないから、普段はほとんど話し声もしなくて静かなんだけど、今日は何だか騒がしい。
変に思ってドアを開けると、カウンターの前で、ウチのギルド一番の問題児ダミアンと、見たことない非戦闘職の男の子が剣に手をかけて睨み合ってた。
誰だろ、あの子。
すると、ダミアンが剣を振りかぶり出した。
まじかよ。
いくらダミアンでもあんな子に手を出すとは思ってなかったため出遅れた。
全速力で両脇の腰に下げた剣を抜き間に入り、向かってくる二本の剣を受け止める。
カキン、カキン。
「…!!」
慌てて左手の剣の握りを強くする。
…危なっ。
なんだ、この子の攻撃力。
非戦闘職の子どもだと思って、ダミアンの方ばかり気にしてたら、思った以上の衝撃で、あやうく剣を飛ばされるところだった。
ダミアンなんかよりよっぽど強いじゃん。
「ふう、間に合った。何事かな?」
ただここは、内心の慌てっぷりを隠して、冷静な様子を装っておく。
だって僕ギルド長だからね。
焦ってるとか思われたくないもん。
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