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10.大型討伐

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「小ネズミの方は何体くらいいるんですか?」

 正午になり、また集まって討伐に向かう最中に、オーナーに聞いてみる。

 ちなみにオーナーも元冒険者だから、年齢的にステータスは下がってるけど、一応戦えるらしい。
 今回は俺と一緒に小ネズミ退治。

「報告だと、だいたい80体くらいらしいよ。ね、カールくん」

「あー、そのくらいでしたね。そんなにきちんと見たわけではないので、正確ではないですが…」

 オーナーに声をかけられた緑目の青年が答える。
 多分このカールくんが見回りに行ってくれた冒険者なんだろう。

 80体か。
 でも思ったより少ないな。

 小ネズミの方なんて、この人たちなら一撃で倒せるだろうし、攻撃されてもダメージは1とか。
 
 別に俺が小ネズミ減らさなくても、そこまで影響ないんじゃ?
 大ネズミもそんなに強くないって言ってたし。

「いやいや、君は必要だよ。いくら雑魚でも攻撃したら疲労度は溜まるでしょ?
前日までの疲労度が残ってる子もいるから、より良い状態で戦ってもらうためにも、出来るだけ疲労度の蓄積は抑えたいんだ」

 なんでも、疲労度が溜まってくと、だんだん動きが鈍くなってくるみたい。

 しかも夜寝ただけで全部無くなるわけじゃないから、冒険者は一日仕事したら2日くらい休みを入れて、全回復させるのが普通らしい。

 でも今日いるうちの二人は昨日仕事してる。
 戦えないことはないけど、万全とはいかないとのこと。

 その一人が見回りのカールくん。
 昨日は夜のウサギ狩りの最中に、森を見に行ってくれたらしい。

「大丈夫なんですか?」

 カールくんに声をかけてみる。

「ええ、まあ。あのレベルの大型なら、問題ないですよ。そこまで疲労度溜まってるわけじゃないですし」

 直接見た本人が大丈夫って言うんだから心配ないか。
 ていうか、それより気になることが。
 
「なんで敬語なんですか?」

「いや、だって同い年か年上ですよね」

 え、それはないよね。
 だって今冒険者になってるってことは、カールくんは少なくとも17。

「今いくつですか?」

「17です」

「俺16…」
「「ええっ!?」」

 年齢を言った瞬間、全員から驚く声が上がった。
 
「え、だって16歳じゃ、まだ成人して一週間も経ってないじゃん。ホントに戦って大丈夫なの!?」

 オーナーが慌てた様子で聞いてくる。

「大丈夫ですよ。昨日も倒してますし」

「いや、この時期の非戦闘職で倒せるわけないって」

 まあそうだよな。
 普通はだいたい今レベル一桁台。
 俺たちのステータスで言うと、20ないくらい。
 それも冒険者並みに戦闘数こなしてだからね。

 さすがに信じてもらえないか。

 帰されそうな雰囲気になったので、仕方ないから疲労無効のスキルについてだけ話すと、ようやく一応は納得してくれた。
 まだ半信半疑って感じだけど。
 

 そんな感じで歩いてると、森の入り口まで到着。

「ここからは、アレがいつ出てきてもおかしくない。気合い入れてけよ」

 冒険者の中で一番年上の人が声をかける。
 
 そして、本腰入れて森に入るとすぐに、あのデカい音が聞こえてきた。

「もう、こんな浅いとこまで来てたのか。後少し遅れてたら間に合わなかったな」

 オーナーが呟く。
 全員が音のする方に向き、身構える。

「来たっ」

 前の方に、木を倒しながら近づいてくる3メートル近いネズミの姿が見えた。
 周りには報告通り、大量の小ネズミ。
 
 …気持ち悪っ。
 結構ショッキングな光景。

「じゃあ小さいほうはよろしく頼むよ」

「了解です」

 俺とオーナーが左右に分かれる。
 すると狙い通り、小ネズミが20体くらいずつ俺たちの方に流れてきた。

 先頭のネズミに攻撃する。

 ザシュッ。

 レベルアップのおかげで昨日よりも、切れ味が鋭い気がする。

 振り返ってとどめを刺そうとしたが、前から続々とネズミが来るからできない。

 しょうがないから、俺も前に進みながら、飛びついてくるネズミたちを片っ端から斬っていく。

 ザシュッ、ザシュッ、ザシュッ。

 …あれ、変だな。
 後ろからの攻撃が来ない。

 そろそろ一回斬った奴らが、体勢立て直して攻撃してくる頃だと思うんだけど。

 不思議に思って、飛んでくるネズミとネズミの間が一瞬空いた隙に振り向く。

 すると、地面に動かなくなったネズミたちの列ができてた。

「もしかして一撃で倒せてた?」

 昨日の謎の大幅レベルアップでまた攻撃が上がってたから、一撃で倒せるようになったのかも。

 そうと分かれば、もう後ろを気にする必要はないね。
 残りのネズミ達も次々と倒していく。


 こっちに来た分は片付け終わったので、真ん中の大ネズミの方を見ると、あっちももう終わりそうだった。
 大ネズミもだいぶ弱って動きが鈍くなってきてる。

 俺も近くに行って、周りの小ネズミの数を減らしてサポートする。

 そして俺が最後の小ネズミを倒すのとほぼ同時に、大ネズミの討伐も終わった。

「よし、おつかれ!じゃあ帰るか」

 終わってみると、随分あっさりだった。
 さすがに戦闘職は強いな。
 

《スキル「ダンジョンキー」に「追加クエスト」機能が追加されました》

 …ん?

  
 
 
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