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4章 探し物
見つけにくいものですか
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「あった!これじゃない?」
探し始めて二時間。
三つ目の倉庫で佐良が声を上げた。
手にした資料を持ってこちらに向かって歩いてくる。
佐良の声に、目前の段ボールから顔を上げて立ち上がった。
佐良から資料を手渡され、中身を確認する。
「あ…これ、です。」
「でしょ?やっと見つかった~!」
互いに一部屋探し終えたのが三十分前だ。そして、この部屋に取り掛かった。
もしやないのでは、なんて不安もありつつ、黙々と探し続けた甲斐があったというものだ。
「良かったな。」
ニコリと笑う佐良に頷く。
資料を触りすぎてカサつく指先が痛々しい。
「さてと、じゃあ今日はもう帰るか。帰れる?」
パンパンとスーツの埃を払いながら、佐良は尋ねてきた。
その質問に正直に答えるならばノーだ。
このために捨て置いた仕事がある。それはまだ終わっていないからだ。
「佐良さん…。」
「っていうか、今日はもう帰る!」
言葉を遮るように佐良が言った。
困ったように微笑みながら。
「言ってくれれば、また手伝うから。俺も、よく分かんないことあるけど。」
そう言って、そっと頭に置かれた手に、何だか居た堪れない気持ちにさせられる。
だってこれじゃあまるで、駄々をこねているのはこちらのようで。
佐良はこういうところがずるい。
そしてどうしようもなく魅力的だ。
「だからさ、今日は帰ろう。メシでも奢るから。」
自分はつくづく誘惑に弱い。頭の片隅で途中で投げ出した仕事がチラついたが、あんな風に微笑まれれば従わざるを得ない。佐良という存在は、自分にとってそういう存在なのだと改めて突きつけられる。
「お腹すいたでしょ?」と言う佐良の提案に乗せられて、個室居酒屋に来ていた。
ざわつく店内も、個室であれば気にならない。職場から近いこの繁華街であっても、個室なら問題ない。
いや、問題はあるけれど。
「佐良さん、今日は本当にありがとうございました。」
まだちゃんと礼を言っていなかった事を思い出して、礼をする。
一杯目のビールに口をつけながら、佐良はヘラッと笑った。
「何?いやに素直。」
「茶化さないでください。」
佐良はくつくつと笑う。
「そういうところ、だよなぁ。いじっぱりなの?」
にやにやと揶揄うように笑う。
それはやはり、大人が子供にするような接し方で、やはり佐良にとって自分は幼く見えているのだと感じる。
それが少しだけ嫌で、けれどそれが心地よくもあって、複雑な心境だった。
「いじっぱり…なところはありますけど、佐良さんが茶化すから…。せっかくお礼言ったのに…」
「ごめんごめん。なんて言うかさ、真面目過ぎるんだよな。」
「どういうことですか?」
「んー…手を抜けないっていうか。もっと頼ってくれればいいのに。」
「頼る、ですか…。」
他人を頼るということは、相手を信用しなければ出来ないことだと思う。
それは自分にとって、とても難しいことだ。
佐良はツマミの刺身を食べながら、うーんと唸った。
「なんか手負の猫みたいだよなぁ~。だったらさ、聞かせてくれない?なんで、俺に素直についてくるのか。」
「そ…れは…、何のこと言って…」
佐良の言葉に飲みかけていた烏龍茶を吐き出しそうになって、慌てて飲み込む。
「ん?俺に全部言わせたい?」
ニヤつきながら答える姿は、セクハラ親父そのものだ。
見た目がイケメンなだけにギャップがある。
「いいです。言わなくて!」
「そう?じゃあ聞かせてよ。」
ふざけている、と思っていたのに、不意に真剣な眼差しを向けられる。
普段、飄々としている佐良に不意打ちでこういう視線を送られると、逃げ道を塞がれたようで。
諦観した気持ちにすらなりつつ、口を開く。
「佐良さん、納得しないかもしれませんけど、自分でもよく分からないんです。」
「分からない?」
「はい。佐良さんに対してどういう感情があるのか、分からないんです。」
「俺が言うのも何だけどさ、俺のこと好きなんじゃないの?」
「それなんですけど…。」
“好き”という感情がどう言ったものなのか。それはずっと分からないまま今に至っている。
佐良との関係に限ったことではない。
今に至るまで、恋愛感情はおろか、他者に対する愛情というものが理解できない。
だからこの歳になるまで初恋というものも経験がない。
今まで出来た恋人は、全員が去っていった。こちらの感情が分からないらしい。
そんなもの、初めからないのだから当然だ。
でも、佐良は違う。
過去の関係のどれにも該当しない。
彼の存在は特殊だった。
「佐良さんは、どこにいても気になって…、佐良さんの世渡り上手なところとか、憧れもあって…。」
「え、それって好きなんじゃないの?」
「その、好きってのがよく分からないんです。でも…、」
「俺といるのは好き?」
「…はい。」
「ドキドキする?」
「はい。」
「今も?」
「今も、してますよ。」
「それ、恋じゃない?」
「恋、でしょうか?」
何だか誘導尋問なような気がする。
けれど、よく分からなくなってしまった。
だから、疑問に疑問で返してしまう。
「助けを求めるような顔、されてもなぁ…」
時折見せる困ったような笑いで、佐良は言った。
佐良の言い分は最もだ。
こちらの感情など分かるわけがない。
「まあ、俺は可愛いと思うよ。悪いこと、しちゃうくらいには。」
“悪いこと”…この言葉にズキンと胸が痛む。
“悪いこと”なら数え切れないくらい、過去にも犯してきた。
佐良だけじゃない。
でもそれは、巻き込まれてきたことだ。
でも、佐良との関係は、自ら“悪いこと”を犯している。
だから、苦しい。
自分には、いつもどこかにどうしようもない渇きがあった。
それは孤独から来たものなのか、それとも変えようのない現実に対するフラストレーションだったのか。
自分でも分からないけれど、とにかく、幼い頃からその渇きに身を焦がしていたと思う。
その渇きを癒そうと、癒すことができる何かを探す日々だった。焼け石に水のような関係にだって縋ってきた。
佐良はそんな日々で、ふいに目の前に現れた“甘美な水”だった。
それまでの誰とも違う。
他者に愛情はおろか、執着も興味も抱くことができなかった自分が、視界に入れるだけで、声を耳にするだけで震えるような存在。それが佐良だった。
佐良が何をしたわけでもない。
言うならばそれは、強烈な香りだった。香水などの物理的な香りではなく、いわばフェロモンのようなものかもしれない。あるいは神か悪魔か、とにかくそう言う存在があるとすれば、その存在が超常的な力で結びつけている。そう想像してしまうほどに、惹かれた存在。
それでもその“水”に手をつけるつもりはなかったのに。
渇きで死にそうな夜、ふと、道を外してしまった。
甘い誘いを、その手を振り払うなど出来るわけがなかった。
だって、ずっと探していたのだから。
例えそれが歓喜する幸福と同時に、逃れられない呪縛となるとしても。
「素直じゃないって言ったじゃないですか。」
そんな痛みを誤魔化すように、会話を繋いでみる。
「うん。でも本音が聞きたい時は素直な時に聞けばいいって知ってるからね。」
そう言って佐良は喉で笑った。
佐良は恥ずかしげもなくこんなことを言う。反応を見て楽しんでいる。
それに律儀に反応を返す自分も自分だけれど、佐良の前で取り繕うことは難しい。
「最低、です。」
「そうかもな。最低だよ。俺は。」
「佐良さん…。」
不意に投げやりに吐き出される本音に、言葉が詰まる。
佐良を最低と言わしめる道に引きこんだ原因は自分なのだ。
だから、そんなことを言われるとどうしていいか分からない。
佐良は何故、こんな関係を続けるのだろう。
佐良がアクションを起こさなければ、この関係は終わるだろう。
自分からは誘うことなど到底できないのだから。
きっかけも佐良からだった。
暗いオフィス。
その日も一人だった。
そこに佐良が現れた。忘れ物だったかもしれない。
何で残ってるとか、何が終わらない、とか。上司としての確認をされて。
この部署に移ってきて二か月が過ぎた頃だったと思う。
佐良のことは入社当初から知っていた。二十三の頃だ。
当時在籍していたのは畑違いの部署だったけど。
当時の部署での接点は殆どないと言っていい。内線で少し事務連絡したり、社内で見かけたり、その程度だ。
けれど、その頃から既に視線で追い、姿を探すようになっていた。
そんな自分に困惑もしていた。
これを恋というのか、答えは出なかったけど。よく知りもしない間柄だ。会いたい訳じゃない。別段思い出すわけでもない。けれど、見かけるとどうしようもなく惹かれる。なんとも言えない感覚だった。
見えない何かが体の中にあって、佐良という存在を求める。ただですら枯渇していた心に強烈な渇きを齎す。
それが怖くもあり、それ以上にコントロールできない渇望感が苦しくて。
そんな佐良が直属の上司となったことが分かった日、体を満たす高揚感と絶望感でどうにかなってしまいそうだった。
自分はこの渇きに耐えられないだろうという予感。
本能が渇きを満たす唯一の水、それは佐良だと告げてきた。
それまでは部署が離れていることで知らないふりをしてきた。それが何とか出来ていた。
けれど今、目の前に置かれた“甘美な水”は、どうしようもない渇きを倍増させる。
言い訳をすれば人間関係に、仕事に、疲れていた。
自分の中の渇望に、過去の絶望に、現在の自分に、疲れていた。
これは、本当にただの言い訳かもしれないけれど。
とにかく、気づいたら、佐良が目の前にいた。
次に気づいたら、抱きしめられていた。
「佐良さんが最低でも、それは…」
「ね、ご褒美、くれない?」
本日二度目だ。
言葉を遮り、佐良はへらりと笑った。
こういうところがずるい。
この男はどうしようもなく魅力的だ。
探し始めて二時間。
三つ目の倉庫で佐良が声を上げた。
手にした資料を持ってこちらに向かって歩いてくる。
佐良の声に、目前の段ボールから顔を上げて立ち上がった。
佐良から資料を手渡され、中身を確認する。
「あ…これ、です。」
「でしょ?やっと見つかった~!」
互いに一部屋探し終えたのが三十分前だ。そして、この部屋に取り掛かった。
もしやないのでは、なんて不安もありつつ、黙々と探し続けた甲斐があったというものだ。
「良かったな。」
ニコリと笑う佐良に頷く。
資料を触りすぎてカサつく指先が痛々しい。
「さてと、じゃあ今日はもう帰るか。帰れる?」
パンパンとスーツの埃を払いながら、佐良は尋ねてきた。
その質問に正直に答えるならばノーだ。
このために捨て置いた仕事がある。それはまだ終わっていないからだ。
「佐良さん…。」
「っていうか、今日はもう帰る!」
言葉を遮るように佐良が言った。
困ったように微笑みながら。
「言ってくれれば、また手伝うから。俺も、よく分かんないことあるけど。」
そう言って、そっと頭に置かれた手に、何だか居た堪れない気持ちにさせられる。
だってこれじゃあまるで、駄々をこねているのはこちらのようで。
佐良はこういうところがずるい。
そしてどうしようもなく魅力的だ。
「だからさ、今日は帰ろう。メシでも奢るから。」
自分はつくづく誘惑に弱い。頭の片隅で途中で投げ出した仕事がチラついたが、あんな風に微笑まれれば従わざるを得ない。佐良という存在は、自分にとってそういう存在なのだと改めて突きつけられる。
「お腹すいたでしょ?」と言う佐良の提案に乗せられて、個室居酒屋に来ていた。
ざわつく店内も、個室であれば気にならない。職場から近いこの繁華街であっても、個室なら問題ない。
いや、問題はあるけれど。
「佐良さん、今日は本当にありがとうございました。」
まだちゃんと礼を言っていなかった事を思い出して、礼をする。
一杯目のビールに口をつけながら、佐良はヘラッと笑った。
「何?いやに素直。」
「茶化さないでください。」
佐良はくつくつと笑う。
「そういうところ、だよなぁ。いじっぱりなの?」
にやにやと揶揄うように笑う。
それはやはり、大人が子供にするような接し方で、やはり佐良にとって自分は幼く見えているのだと感じる。
それが少しだけ嫌で、けれどそれが心地よくもあって、複雑な心境だった。
「いじっぱり…なところはありますけど、佐良さんが茶化すから…。せっかくお礼言ったのに…」
「ごめんごめん。なんて言うかさ、真面目過ぎるんだよな。」
「どういうことですか?」
「んー…手を抜けないっていうか。もっと頼ってくれればいいのに。」
「頼る、ですか…。」
他人を頼るということは、相手を信用しなければ出来ないことだと思う。
それは自分にとって、とても難しいことだ。
佐良はツマミの刺身を食べながら、うーんと唸った。
「なんか手負の猫みたいだよなぁ~。だったらさ、聞かせてくれない?なんで、俺に素直についてくるのか。」
「そ…れは…、何のこと言って…」
佐良の言葉に飲みかけていた烏龍茶を吐き出しそうになって、慌てて飲み込む。
「ん?俺に全部言わせたい?」
ニヤつきながら答える姿は、セクハラ親父そのものだ。
見た目がイケメンなだけにギャップがある。
「いいです。言わなくて!」
「そう?じゃあ聞かせてよ。」
ふざけている、と思っていたのに、不意に真剣な眼差しを向けられる。
普段、飄々としている佐良に不意打ちでこういう視線を送られると、逃げ道を塞がれたようで。
諦観した気持ちにすらなりつつ、口を開く。
「佐良さん、納得しないかもしれませんけど、自分でもよく分からないんです。」
「分からない?」
「はい。佐良さんに対してどういう感情があるのか、分からないんです。」
「俺が言うのも何だけどさ、俺のこと好きなんじゃないの?」
「それなんですけど…。」
“好き”という感情がどう言ったものなのか。それはずっと分からないまま今に至っている。
佐良との関係に限ったことではない。
今に至るまで、恋愛感情はおろか、他者に対する愛情というものが理解できない。
だからこの歳になるまで初恋というものも経験がない。
今まで出来た恋人は、全員が去っていった。こちらの感情が分からないらしい。
そんなもの、初めからないのだから当然だ。
でも、佐良は違う。
過去の関係のどれにも該当しない。
彼の存在は特殊だった。
「佐良さんは、どこにいても気になって…、佐良さんの世渡り上手なところとか、憧れもあって…。」
「え、それって好きなんじゃないの?」
「その、好きってのがよく分からないんです。でも…、」
「俺といるのは好き?」
「…はい。」
「ドキドキする?」
「はい。」
「今も?」
「今も、してますよ。」
「それ、恋じゃない?」
「恋、でしょうか?」
何だか誘導尋問なような気がする。
けれど、よく分からなくなってしまった。
だから、疑問に疑問で返してしまう。
「助けを求めるような顔、されてもなぁ…」
時折見せる困ったような笑いで、佐良は言った。
佐良の言い分は最もだ。
こちらの感情など分かるわけがない。
「まあ、俺は可愛いと思うよ。悪いこと、しちゃうくらいには。」
“悪いこと”…この言葉にズキンと胸が痛む。
“悪いこと”なら数え切れないくらい、過去にも犯してきた。
佐良だけじゃない。
でもそれは、巻き込まれてきたことだ。
でも、佐良との関係は、自ら“悪いこと”を犯している。
だから、苦しい。
自分には、いつもどこかにどうしようもない渇きがあった。
それは孤独から来たものなのか、それとも変えようのない現実に対するフラストレーションだったのか。
自分でも分からないけれど、とにかく、幼い頃からその渇きに身を焦がしていたと思う。
その渇きを癒そうと、癒すことができる何かを探す日々だった。焼け石に水のような関係にだって縋ってきた。
佐良はそんな日々で、ふいに目の前に現れた“甘美な水”だった。
それまでの誰とも違う。
他者に愛情はおろか、執着も興味も抱くことができなかった自分が、視界に入れるだけで、声を耳にするだけで震えるような存在。それが佐良だった。
佐良が何をしたわけでもない。
言うならばそれは、強烈な香りだった。香水などの物理的な香りではなく、いわばフェロモンのようなものかもしれない。あるいは神か悪魔か、とにかくそう言う存在があるとすれば、その存在が超常的な力で結びつけている。そう想像してしまうほどに、惹かれた存在。
それでもその“水”に手をつけるつもりはなかったのに。
渇きで死にそうな夜、ふと、道を外してしまった。
甘い誘いを、その手を振り払うなど出来るわけがなかった。
だって、ずっと探していたのだから。
例えそれが歓喜する幸福と同時に、逃れられない呪縛となるとしても。
「素直じゃないって言ったじゃないですか。」
そんな痛みを誤魔化すように、会話を繋いでみる。
「うん。でも本音が聞きたい時は素直な時に聞けばいいって知ってるからね。」
そう言って佐良は喉で笑った。
佐良は恥ずかしげもなくこんなことを言う。反応を見て楽しんでいる。
それに律儀に反応を返す自分も自分だけれど、佐良の前で取り繕うことは難しい。
「最低、です。」
「そうかもな。最低だよ。俺は。」
「佐良さん…。」
不意に投げやりに吐き出される本音に、言葉が詰まる。
佐良を最低と言わしめる道に引きこんだ原因は自分なのだ。
だから、そんなことを言われるとどうしていいか分からない。
佐良は何故、こんな関係を続けるのだろう。
佐良がアクションを起こさなければ、この関係は終わるだろう。
自分からは誘うことなど到底できないのだから。
きっかけも佐良からだった。
暗いオフィス。
その日も一人だった。
そこに佐良が現れた。忘れ物だったかもしれない。
何で残ってるとか、何が終わらない、とか。上司としての確認をされて。
この部署に移ってきて二か月が過ぎた頃だったと思う。
佐良のことは入社当初から知っていた。二十三の頃だ。
当時在籍していたのは畑違いの部署だったけど。
当時の部署での接点は殆どないと言っていい。内線で少し事務連絡したり、社内で見かけたり、その程度だ。
けれど、その頃から既に視線で追い、姿を探すようになっていた。
そんな自分に困惑もしていた。
これを恋というのか、答えは出なかったけど。よく知りもしない間柄だ。会いたい訳じゃない。別段思い出すわけでもない。けれど、見かけるとどうしようもなく惹かれる。なんとも言えない感覚だった。
見えない何かが体の中にあって、佐良という存在を求める。ただですら枯渇していた心に強烈な渇きを齎す。
それが怖くもあり、それ以上にコントロールできない渇望感が苦しくて。
そんな佐良が直属の上司となったことが分かった日、体を満たす高揚感と絶望感でどうにかなってしまいそうだった。
自分はこの渇きに耐えられないだろうという予感。
本能が渇きを満たす唯一の水、それは佐良だと告げてきた。
それまでは部署が離れていることで知らないふりをしてきた。それが何とか出来ていた。
けれど今、目の前に置かれた“甘美な水”は、どうしようもない渇きを倍増させる。
言い訳をすれば人間関係に、仕事に、疲れていた。
自分の中の渇望に、過去の絶望に、現在の自分に、疲れていた。
これは、本当にただの言い訳かもしれないけれど。
とにかく、気づいたら、佐良が目の前にいた。
次に気づいたら、抱きしめられていた。
「佐良さんが最低でも、それは…」
「ね、ご褒美、くれない?」
本日二度目だ。
言葉を遮り、佐良はへらりと笑った。
こういうところがずるい。
この男はどうしようもなく魅力的だ。
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