転生したらハムハムすることに夢中です。

さこ助

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成長期の二人

何してるんですか?

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「お初にお目にかかります。わたくしラティファナお嬢様のお側に仕えさせていただく事になりました、カインと申します。お二人のお邪魔かとは存じますが、以後お見知り置き頂けましたら幸いでございます」

「……」

「エル、ごめんなさい…わたしの普段の行いが悪かったせいで、こちらにまでカインを連れてくることになりました」

「ラニエル.・ジファーソン様ですね、いつもお嬢様がお世話になっております。このような形でお二人の中を邪魔することをお許しください」

「…いえ、ぼくは、僕の方がいつもラティファナ嬢にはお世話になってますので、どうか頭を上げてください」


 自分の仕える主人の娘の男友達の紹介。幼児だからと侮るなかれ、どんなに見た目は小さい子供であっても、こちらにも女性社会と同じように将来のツテとして、色々渦巻いているのが子息令嬢の世界である。
 わたしのところは伯爵位だが、もしかしたら将来的にカインという侍女がラニエルの侯爵位の侍女になっていることや、はたまたそこからのツテで更に上級職や嫁ぎ先だって考えられるのだ。

 貴族社会とは勉強すればするほど好きにはなれない世界だけれど、そんなこと嘆いていたって仕方ないし。それだったなら、貴族として受けられる良い教育も環境も大事にしないといけない。
 わたしだっていつかは嫁に行きたい。そう、嫁には行きたいのだ、今度こそ!こちらの花嫁衣装は見たことがないが、純白の衣装であることは間違いないし。アラフォーの心を持つ幼児としては、これだけは外してはならない案件として覚えておかないといけない。
 できる限り楽ができて、そしてある程度自由が利く家の嫁!


「これが皆が言う、お嬢様の思考迷路なのですね」

「はい、でも僕はこの様子の時は"旅に出てる"と言ってますよ」

「旅?ですか?」

「はい、だって少し楽しそうじゃないですか?ラティは表情をくるくる変えてはいるんですが、心がここから何処かに行くと無表情になることが多いですから」

「ジファーソン様はよくみてらっしゃるのですね」

「ふふ、ラティの侍女となったならば、僕のことはラニエルとお呼びください」

「畏まりました、ラニエル様。どうぞラティファナお嬢様とこれからも仲良くしてくださいませ」


 わたしがトリップたびにでている間になんだか二人は和やかな雰囲気だ。
 毎日のように会うようになったわたしたちだが、そう言えばラニエルは毎回おまじないをせがむが、毎日落ち込んでいるわけでは無いと言うのもわかってきた。
 だとて、落ち込んでいる日だってあるわけで。今日はなかなか機嫌が良い方かも知れない。和やかに話す二人を微笑ましく見つめることにした。
 でも、なんだか二人が仲良くやってる姿に少しモヤっとする感じも否めない。



(オモチャを取られた子供じゃないんだから…)



 これから誕生日までは暫くハムハムはお預けということだから、不満感が溜まるのは仕方ないけどーー



(そんなに爽やかな笑顔ってわたし、最近見てないんですけど?)



 ここのところ、ハムハムちゅっちゅっと会えば「おまじないを」とせがまれるので直ぐに実行してきたから。だからかも知れない、最近のエルはずっとイタズラ顔だったりうっとり(酔いしれて)いたりで、久しく天使顔を拝んでいない気がする。
 7歳児と言えど幼児は直ぐに姿を変貌させ大人になっていってしまう。これから年を追うごとにきっと天使のお姿を拝見出来なくなるんだろう(気がする)

 だってそれが転生先でのセオリーだし?自分の役職が当て馬として用意されていたら、まぁどうしようもないけど。

 それでも今はラティファナとラニエルで仲良くしているんだから、他のことはあんまり考えたくはない。

 お約束展開が待っているかもわからないなら、私の人生を歩んでも誰も(淑女としてちゃんとしていれば)文句は言わないはずだ!



ーーハム

「ひゃあ!」

「えっなになになに!?」

「お嬢じょ様!」

「えぇ!なになに?!あ、なんですの!?」

「あなた様は今までなななな何をなさっていたたのですか!」

「え、急に何!」

「いいいいい、いま、ラニエル様に、お、おじょじょさまが」

「ーーっ」



 おいおいおいおいおい!ちょっと待ちやがれ!なにいい笑顔してるんだラニエル!そして何でカインはめちゃ顔が赤いんだ、と言うより青いのか…もはや紫か?いやいやいや、手首抑えて頬抑えて顔を赤らめ(紫?)にして、嫌な予感しかない、嫌な予感しかないぞ!


「なに、とは、如何しましたか」



(苦し紛れとはいえ絶対に肯定なんかしない!)



「ここかここ、ここ、のここがこの、こんなに頬を近づけることをおまじないとしていたなんて!」



(すまん、噛みすぎて何言ってるかわからない)

(え?ハムハムって頬云々と言うよりも、もっと激しいんですけども)



「お互いに手首など合わせるなんて!」

「(手首?)手首がどうかしたの?」



(あ、やべ、声に出てしまった)



 とりあえずラニエルはニコニコと何だか一見天使のような笑顔をしているけど、腹黒そうにグフフと笑ってるようにも見えるし、カインは何だかワタワタしていて、顔の色は今度は怒りに染まっていこうとしている。
 話の流れ的にはハムリングのデモストレーションをやったようにも見えなくて、でも怒られるようなことはやったのね?そしてわたしを主体として話しやがったのね。


ーーぴとっ

「ひゃぁぁぁあ!」


 ラニエルがカインの手首に自身の手首を合わせて挟み込むように触れている。そして彼女の手を自分の頬に持っていった。


「え?」


 本当に聞いてもいいだろうか、全力で聞いてもいいだろうか。という事で全身全霊で聞いてみよう。


「なにをしているんですか?」


 騒がしかったわたちしたちとは裏腹に、今日も相変わらず森の中は綺麗な光が樹々を通り抜けて地上へと降り注いでいた。



(とりあえず!離れなさい!)



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