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※女→男への性暴力の匂わせ、男→女へのいじめや暴言暴力表現あり



口には出せないからなのか。
呪いにより熱を持たない体となった小生の中で、過去が反芻される。何度も、何度も。
あの日、聖殿に新たに来るという聖女の話を聞いてから、小生は任務の合間に支度をしていた。
これから赴任する聖女の名は、ドミティアナ・セレスティ・モリナーロ。
公爵家の御令嬢として御多忙な中、聖女となる為に励んでいらっしゃってきたお方だ。高齢の為勇退される前任の聖女様も、小生の手を握りこう仰られた。
「彼女にとっては、ここは知らないことだらけの世界よ。うまくいかなくて、たくさん傷ついて、きっと心細く感じているでしょう。だから辛抱強くあの子に向き合い、支えてあげて」
聖女様のお言葉に、恥ずかしい話涙を浮かべながら小生は頷いた。
瘴気と向き合い、悍ましい魔物と戦う任を負う。そして血に塗れた騎士たちを支え、助ける。うら若い娘からすれば、想像も出来ない過酷な仕事だ。
だから小生は少しでも聖女様の負担を減らすために動いていた。
魔術師の方々にも話を伺い、本人に負担がかからぬようにする魔術の形式を編み出した。魔物の種類と、それぞれの対処についてもわかりやすくノートに纏めた。聖殿騎士一人一人がどのような人間なのかという事も把握し、円滑な人間関係が保てるようにも準備していた。
――ほんの少しでも、新しい聖女様の負担を減らそう。
その為に小生は出来るかぎりの事をした。
そして引き継ぎの儀の際、彼女は来た。凛とした面立ちの、それでいてまだあどけなさの残る少女だった。
前任の聖女様と儀式を終えた彼女を部屋まで案内しようと、彼女の前に立ち、挨拶を交わして跪こうとした時だった。
「近づかないで暑苦しい!それにお前、なんて獣臭いの!その汚らわしい手でわたくしに触らないで!」
甲高い声に顔を上げると、歯を食いしばって小生を睨みつける聖女の姿がいた。自分は幻覚を見ているのか、とすら思ったが、彼女は手に持った扇子で小生の頬を叩き、彼女の意図が分からないまま退室を余儀なくされた。扇子の骨の角で切ったのか、生暖かい血が頬を伝った。
きっと男性に近づかれる経験がなかったのだろう。なにせ公爵家にお生まれの方だ。突然大男が近づいて驚いたのかもしれない。仕方のないことだ。明日、謝罪をしつつ挨拶に伺おう。
そして明朝、側近であるイザークを連れて改めて顔合わせに伺った。
彼女は椅子に座り、昨日のように怒鳴ることはなかった。ただ、その態度が異様だった。朝からワインを煽り、皿の上に盛られたチーズにフォークを指していた。彼女の傍らにはガウディオとニコルが、気まずそうに立っていた。もうあちらの二人とは仲良くなったのだろうか。
自分たちのことを紹介し、これからすべき業務や日課について説明した。
だが、彼女はワインを飲み終え、ため息交じりにナプキンで口元を拭った。
「そんなことはここに入ってくる前に習ったわ。ねえ、お前のような肉だるまを見てると酒が不味くなるの。用があるなら他の子に通してちょうだい……ああ、そいつの隣にいるあなた、イザークだっけ?あなたは残っていいわ」
イザークに対しては猫撫で声でそういった。やはり、小生のような男が苦手なのだろうか。聖殿で勤めるまでも女性や子供から避けられることはあったので、どこかで覚悟はしていた。
小生はイザークに、聖女様のためにと書き記していたノートを渡すように頼み、再び部屋を去った。
今は距離を取りながら支えればいい。
それから聖殿は変わった。
聖女はイザーク、ガウディオ、ニコルの三名だけを寵愛し、それ以外の騎士たちを蔑ろにした。深追いしなくてもいい地区で「他の聖殿より多く魔物の討伐をした成績が欲しい」と、無理な遠征をして疲弊させた。その時の成績が少しでもご自身の気に食わないと、疲労困憊した騎士を詰り、時折暴力を振るった。小生がその矢面に立つか、イザークら三人が諫めるかでその場は収められたが、いくら時が経とうと聖女様の行いは鎮まることはなかった。
犠牲を極力出さぬような戦術を記した自著を渡したはずだと伝えた小生に、聖女様はまるで臭いものが前にいるかのように鼻を扇子で隠して答えた。
その答えは、どこかでわかっていたものだった。
「あの小汚い本をイザークに渡したの、やっぱりお前だったのね。ハッ、とっくに捨てたに決まってるでしょ。あんなゴミ。あーあ、爪が汚れてしまったわ。また化粧師を呼んで染めてもらわないと」
「っ……余計な真似をしたことは謝ります。しかし、今回の遠征での貴女の行動は、あまりに――」
「それはアイツらの出来が悪いからでしょ?野垂れ死にさせずに治療してやってるだけありがたいと思ってほしいものだわ。医療具だってタダじゃないんだから。だいたい聖女の指示通りに動けなかった屑なんてわたくしの聖殿には必要ないから。そんなことで一々時間とらせないで」
「なんてことを!彼らは――」
「ニコルぅ、今夜はあなたとお話がしたいわ。隊長様には早くお休みいただいて」
「……はい」
再び小生の言葉を遮って、聖女様はニコルに腕を絡ませる。
小柄でまだ少年のような面影を残すニコルは、明朗な性格であったが、あのお方といる時はその面影がない。青い顔をした彼は力なく頷き、「ここは去ってくれ」と目線で懇願した。
小生はそれに従うほかなかった。
それからしばらくして夜の鍛錬と、使い魔である動物たちの世話を終え、身を清めようと井戸の方へ向かった。
夜明け前だというのに先客がそこにいた。
「ニコル……?」
「!?」
小柄な体に井戸から組んだばかりの冷たい水を頭から被り、必死に体を拭っていたのは、紛れもなくニコルだった。
小生に呼ばれて顔を上げると、青くなった唇をわなわなと震わせていた。
「どうしたのだ?顔色が悪いぞ?確かお前は聖女様に呼ばれ――」
「み、見ないでくれぇ!!」
突如として叫びだし、横に置いてあった衣服を抱えてニコルは去っていった。
その小さな背中。そこには青紫の線がいくつもあり、赤い点が体中を覆っていた。
そしてそのまた、次の夜。
昼の鍛錬を見学に来られる聖女様に「目に毒だから来るな」と言われたため、日中出来なかった分を補うため林で鍛錬した時だ。
ここにある筈もない殺気に、剣を身構えた。
踵を返し、小生に刃を向けた者を見て、愕然とする。
「ガウディオ!?なにをするっ!」
「……アンタはいいよなァ。あのお方に嫌われるんだからさ。俺達が毎日毎日毎日、どんな地獄にいるか知らずに!こんな場所で優雅に過ごして!」
「お前は何を言っている?聖女様と一体何が――」
「どうせ見下してんだろ!?一人だけ何も知らない、綺麗なままでいて!」
小生に次いで高身長で膂力のあるガウディオは、その顔を歪ませ子供のように喚いて抜き身の槍を振り下ろす。熱血漢で勇敢である普段の彼からは想像も出来ない、あまりに悲し気で哀れな彼の姿が見ていられなくなり、小生はすぐさま剣の背でガウディオの背を打った。
仲間に振るった剣の重さを感じながら、小生は膝を折って地に伏せるガウディオに語り掛けた。
「ガウディオ。小生は決してお前達を蔑んではおらん。イザーク、ニコル、小生たちに着いてきて戦ってくれる部下。そして聖女様。皆がいなくては国の守護はまかりならん。聖女様はまだ若く、経験が乏しい。だがいずれ、お分かりくださるはずだ」
顔を伏せて嗚咽を漏らし始めた彼を、最早見ていられず小生は自室に戻った。涙に交じって、小さな声が聞こえた。
「何も知らねぇから、アンタはそんな……ハハ、クソ……て……ゃる……」
聖女様が亡くなったのはそれからすぐだった。



 ※※※



望まないまま聖女となった少女は明るい笑みを浮かべて小生へ駆け寄った。
「鏡さんありがとう!今日のお仕事ね、半刻で全部終わりました!」
「それは良かった。しかし、あれだけの量の加護を半刻で終わらせたのですか?」
「ええ。鏡さんの教えたとおりにやったおかげ……」
「いいえ。それはすごいことなのです、ミカ様。たった一晩であの魔術を使いこなせるとは、あなたは誠に素晴らしい聖女です」
そういうと新たな聖女、ミカ様はくすぐったそうに口元を抑えて笑う。
見ているだけで温かな陽光に触れているような心地になるお方だ。このような体になった小生にも分け隔てなく接し、話に耳を傾け、信じてくれた。
「ニコルという騎士の人は『これくらい普通だ。褒め称えてもらえると思うな』なんて言ってたけど、ね」
「……もし、仕事を故意に増やされた時は小生に申して下さい。出来うる限り、ミカ様のお力になります」
「ありがとう……鏡さん。あなただけが、この聖殿で私の味方だものね」
ニコルの名を呼んだ彼女の顔は微かに曇っていた。
上階に置かれた小生の耳にも届いたが、無礼も甚だしく、更に出来ないと思って押し付けた仕事を短時間で終えられた負け惜しみから様々な罵詈雑言を放っていた。昔の小生であれば、あの頭に拳骨を叩きつけて叱ったものの。
もし、彼女の前にミカ様が聖女であったならば。そう思わずにはいられない。
ミカ様であれば、今のように小生の教えに耳を傾け、教えを民のため、聖殿の騎士たちの為に使ってくれただろう。
イザークは口下手ながらもミカ様を補佐し、厳しくも温かく見守って支えていただろう。
ガウディオは、イザークとは正反対な熱血漢な性格であり、ミカ様は落ち込んだり悩みを抱えた時は励ましてくれただろう。
ニコルは明るく飄々とした騎士だ。それでいて相手をよく見ている。だからこそ聖女様と騎士たちの橋渡しとなってくれただろう。
そのはずだった。
……だが、全ては叶わぬ話だ。
聖女様を支え、騎士たちを導くはずだった小生が至らぬせいで、あのような悲劇が起こってしまった。
だからこそ彼女だけは、ミカ様だけは歪まぬように支えねば。



 ※※※



「……ただいま。っ、鏡さん」
「っ!?――ミカ様!大丈夫ですか!?」
彼女がこの聖殿に来てから三日後の朝、ミカ様は重い足取りで階段を上がってきた。
顔は青ざめ、左頬には痛々しい痣があった。お召し物は土埃がこびり付き、なにをされたか想像がついてしまう。そんな状態でなんとか笑みを取り繕っているミカ様の姿にないはずの心臓が痛んだ。
部屋にたどり着いた瞬間、彼女は膝から崩れ落ち、項垂れた。長い髪が床に垂れていく。
「ごめん、なさ、ぃ……少し……休ませて……」
言葉一つ紡ぐだけで苦しそうで、息も絶え絶えだった。髪の隙間から微かにのぞく口元に青い塊とみて、小生は使い魔たちに命じた。
「お前たち!すぐに偽翡翠葡萄の実をミカ様に!」
キュウ、と鳴いた栗鼠が頬袋に仕舞っていた青緑の小粒を取り出し、ミカ様の元へ運んだ。イタチは後ろ脚だけの拙い足取りで水の入ったコップを差し出す。
偽翡翠葡萄は見た目は翡翠葡萄に似ているが、催吐作用のある毒である。しかしこの毒性は、人間が毒を摂取した時に嘔吐を促し、臓器を洗浄する作用があった。経口で毒物が入った際には重宝していた。鷹が外から持って来た空の手持ち桶を運び、ミカ様の元に置いた。程なくして彼女はそこに胃の中にあったものを全て吐き終え、水を飲んで喉を潤した。
先程より顔に血の気が通っていた。
「なにがあったのか、言えますか?」
小生の言葉に、数回深呼吸をしてから、暗い眼差しで答えた。
彼女の、震える唇から出た言葉は、再び小生のない心臓を抉った。
いつもはゴミ樽の中に隠していた、彼らが寄越す料理――とはいえない黴の塊となったパンや、黒こげのスコーンなど――を加護付与で多忙なため昨晩机の上で置いたままにしてしまったようだ。それをニコルに見つかったようだ。
そして彼女は責めを受けた。頬を張られて床に倒された。そして顎を掴まれ、パンと呼べないそれを口にねじ込んだ。
「……生かしてあげているだけ、ありがたいと思えって……ひどいよね?そんなこと、全然思ってないくせに……」
「ミカ、様……」
そのまま床に蹲り、彼女は静かに泣いた。カタカタと震える小さな肩のなんと痛ましいことか。
「これから、奴らの寄越した食料には炎魔法を使いましょう。それを炭にして、窓から捨てましょう。さすれば、隠せないでしょう」
「……っ、く」
「此度の事は小生の考えが至らなかったせいです。申し訳ございませ――」
「……姉さん、みんな……っ」
虫のはためきのような微かな声で家族の名を呼ぶ。
ミカ様は、ただの少女だ。
様々な思惑のせいで温かな日常から引き離され、憎悪の中で孤独に捕らわれるという理不尽な恐怖に震える小さな子供だ。
その日から、三人はミカ様を虐げた。
加護付与や、食事を出す際にミカ様のお体にわざと物を落とす、酷いときには「手が滑った」といって鞘のついた剣で殴った。着替えといって寄越した服や下着には虫の死骸や、小さく細い針が混入させられていた。いち早く小生らの使い魔が見つけてくれたおかげでミカ様がそれによって傷つくことは無かった。
しかし、あ奴らとあった後のミカ様の暗い表情を見るに、ひどい罵声を浴びせられているのだろう。
「ミカ様……」
「大丈夫。ちょっと休んだら、平気だから……ありがとう、鏡さん」
腫れた頬でぎこちなく笑うと、ミカ様はこちらに背を向けベッドに静かに横たわった。
なあ、ニコル、ガウディオ、イザーク。
こんな少女をいたぶる事がお前たちの救いなのか?
騎士の誉れを汚してまで私怨を晴らしたいのか?
小生が知るお前たちはどこにいったのだ?
どうか、まだ、小生にお前たちを信じさせてくれ。

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