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記念日
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「え!?え!?……い、一緒に暮らす!?」
狙い通り、維澄さんは大きく反応してくれた。
「そう、もう決めたからね」
「そ、そんな聞いてないよ」
「それはそうでしょ?今はじめて言ったんだから」
「なんなの?いきなり……ど、どういうことよ?」
「だから……同棲するってことでしょ?他に何があるのよ?」
「ど、ど、同棲!?ル、ルームシェアとかじゃないくて?」
維澄さん……”同棲”という言葉を聞いた瞬間の慌てぶりときたら……フフフ。
よし!いい感じだ。
折角私だって、悩みに悩んでこの結論に達したのだ。
そうなってもらわないと困る。
ここで維澄さんには単なるルームシェアなんて思われて欲しくないからだ。
「仕事も一緒、食事も一緒、寝るのも一緒……しかも一生ですよ?維澄さん、嬉しいですよね?」
「そ、それは……」
ほら嬉しそう。
しかも、今の維澄さんの表情を見る限り、今まさにその姿をリアルに想像したんだろうと思う。だから維澄さんの顔が少しほころんだのを私は見逃さなかった。
「念のため繰り返し強調しておくけど」
「えっ……と、何かしら?」
「”一生”ってことだよ?」
「……い、一生?」
「そう。この意味分かるよね?」
「い、いや……ど、どういうことよ」
「だから私からのプロポーズってことですよ」
この言葉を聞いた瞬間、維澄さんは、驚愕して何も言葉を発することが出来なくなってしまった。
それはそうだろう。
女子高生の、しかも同性からプロポーズなんてそうそう経験できるものではないはずだ。
維澄さんは驚きのあまりしばらく固まっていたものの……少しづつその表情は違ったものに変化をしていった。
維澄さんの顔はついに崩れ……
突然、子供のように大声で泣きなじめてしまった。
そして再度私の身体を強く強く抱きしめてきた。
その維澄さんの”抱擁”は”二度と離さない”という決意が感じられるほどに力強いものだった。
”通じた”
そう思った。
ついに私の想いが……
ようやく維澄さんにちゃんと伝わった。
私は世界の誰よりも維澄さんを愛しているということ。
一生維澄さん以外を愛することはないこと。
一生維澄さんと暮らしていく覚悟があること。
むろん将来に、異性との結婚を望むことなんて絶対にあり得ないこと。
だから私は今日、必ずそのことを伝えようと覚悟を決めていた。
それがようやく成就した。
ちょっと強引だったけど……
このやり方しかなかったと思う。
あの控え目な維澄さんが、ここまで大胆に自分の感情をさらけ出すのはおそらく過去にもなかったはずだ。
だから維澄さんを昔から良く知る上條社長でさえも目を丸くして驚いていた。
しかし次第に維澄さんの号泣する姿を見つめていた上條社長の目は……
優しいものに変わっていき……ついに上條社長は涙を浮かべた。
…… …… ……
「檸檬?」
ようやく落ちついてから維澄さんは顔を上げて私の目をながら少し照れくさそうに私に名前を呼んだ。
「なに?」
「私は檸檬とずっと一緒にいられるの?」
「そうだよ?さっき言ったじゃない?」
「プロポーズ……なの?」
私がさっき使った言葉を維持さんが呟いた。
「そうプロポーズだよ?受けてくれるんでしょ?」
「それは……」
維澄さんはそこまで言ってから恥ずかしそうに控え目に、でもはっきりと頷いた。
やった……維澄さんはしっかりと私の想いを受け止めてくれた。
プロポーズを受けてくれたという意味。
それはつまり世間で言うところの結婚のOKを貰ったと言うことに匹敵する訳だ。
同姓で生涯、一緒に暮らす。私もいまさならながら事の重大さに足が震えてしまった。
私のそんな動揺を悟ったのかここで、上條社長が不意に会話に入ってきた。
「余計なことかもしれないが、Kスタジオは渋谷にあるから」
「は?……ええ、知ってますよ?なんで?」
「だから、お前たちのようなカップルに対する理解のある地区だってことだよ。まあ先の話しだろうとだとは思うが」
ああ、そう言えば聞いたことがある。パートナーシップ証明がどうとか……
維澄さんもその話は知っていたようで、またまたゆでダコのように真っ赤になって下を向いてしまった。
でもこうなったら先の話にしないで直ぐにでもそのパートナーシップの証明とやらを貰うのもありだな。年齢的には大丈夫なんだろうか?
考えてみれば私まだ17歳なんだよね……
まあ親の説得とか……色々ハードルはありそうだけど。
…… …… ……
「IZUMIさん……よかったですね」
櫻井さんがこのタイミングで、私ではなくあえて維澄さんにそう語りかけた。
維澄さんは櫻井さんの顔を見て一瞬照れ隠しに下を向いたが、ハッキリと答えた。
「はい。色々ありがとうございました」
この櫻井さんの一言がダメ押しになって……
維澄さんの気持ちも落ち着くところにしっかり落ちたように感じた。
ああ……かなり綱渡りだったけど。
もう大丈夫だ。
大丈夫。
私も緊張の糸がようやくプツリと切れて今度は私の涙腺がついに崩壊してしまった。
だって……
維澄さんが私のこと好きでいてくれたんだなんて。
私と一生、一緒にいてくれるなんて。
奇跡が起きたんだよ?
嬉しいよ。
嬉しいよ。
ホントにホントに嬉しすぎるよ。
私はついにさっきの維澄さんのように大声をだして泣き続けてしまった。
この日が、私にとっても維澄さんにとっても大事な大事な記念日となった。
狙い通り、維澄さんは大きく反応してくれた。
「そう、もう決めたからね」
「そ、そんな聞いてないよ」
「それはそうでしょ?今はじめて言ったんだから」
「なんなの?いきなり……ど、どういうことよ?」
「だから……同棲するってことでしょ?他に何があるのよ?」
「ど、ど、同棲!?ル、ルームシェアとかじゃないくて?」
維澄さん……”同棲”という言葉を聞いた瞬間の慌てぶりときたら……フフフ。
よし!いい感じだ。
折角私だって、悩みに悩んでこの結論に達したのだ。
そうなってもらわないと困る。
ここで維澄さんには単なるルームシェアなんて思われて欲しくないからだ。
「仕事も一緒、食事も一緒、寝るのも一緒……しかも一生ですよ?維澄さん、嬉しいですよね?」
「そ、それは……」
ほら嬉しそう。
しかも、今の維澄さんの表情を見る限り、今まさにその姿をリアルに想像したんだろうと思う。だから維澄さんの顔が少しほころんだのを私は見逃さなかった。
「念のため繰り返し強調しておくけど」
「えっ……と、何かしら?」
「”一生”ってことだよ?」
「……い、一生?」
「そう。この意味分かるよね?」
「い、いや……ど、どういうことよ」
「だから私からのプロポーズってことですよ」
この言葉を聞いた瞬間、維澄さんは、驚愕して何も言葉を発することが出来なくなってしまった。
それはそうだろう。
女子高生の、しかも同性からプロポーズなんてそうそう経験できるものではないはずだ。
維澄さんは驚きのあまりしばらく固まっていたものの……少しづつその表情は違ったものに変化をしていった。
維澄さんの顔はついに崩れ……
突然、子供のように大声で泣きなじめてしまった。
そして再度私の身体を強く強く抱きしめてきた。
その維澄さんの”抱擁”は”二度と離さない”という決意が感じられるほどに力強いものだった。
”通じた”
そう思った。
ついに私の想いが……
ようやく維澄さんにちゃんと伝わった。
私は世界の誰よりも維澄さんを愛しているということ。
一生維澄さん以外を愛することはないこと。
一生維澄さんと暮らしていく覚悟があること。
むろん将来に、異性との結婚を望むことなんて絶対にあり得ないこと。
だから私は今日、必ずそのことを伝えようと覚悟を決めていた。
それがようやく成就した。
ちょっと強引だったけど……
このやり方しかなかったと思う。
あの控え目な維澄さんが、ここまで大胆に自分の感情をさらけ出すのはおそらく過去にもなかったはずだ。
だから維澄さんを昔から良く知る上條社長でさえも目を丸くして驚いていた。
しかし次第に維澄さんの号泣する姿を見つめていた上條社長の目は……
優しいものに変わっていき……ついに上條社長は涙を浮かべた。
…… …… ……
「檸檬?」
ようやく落ちついてから維澄さんは顔を上げて私の目をながら少し照れくさそうに私に名前を呼んだ。
「なに?」
「私は檸檬とずっと一緒にいられるの?」
「そうだよ?さっき言ったじゃない?」
「プロポーズ……なの?」
私がさっき使った言葉を維持さんが呟いた。
「そうプロポーズだよ?受けてくれるんでしょ?」
「それは……」
維澄さんはそこまで言ってから恥ずかしそうに控え目に、でもはっきりと頷いた。
やった……維澄さんはしっかりと私の想いを受け止めてくれた。
プロポーズを受けてくれたという意味。
それはつまり世間で言うところの結婚のOKを貰ったと言うことに匹敵する訳だ。
同姓で生涯、一緒に暮らす。私もいまさならながら事の重大さに足が震えてしまった。
私のそんな動揺を悟ったのかここで、上條社長が不意に会話に入ってきた。
「余計なことかもしれないが、Kスタジオは渋谷にあるから」
「は?……ええ、知ってますよ?なんで?」
「だから、お前たちのようなカップルに対する理解のある地区だってことだよ。まあ先の話しだろうとだとは思うが」
ああ、そう言えば聞いたことがある。パートナーシップ証明がどうとか……
維澄さんもその話は知っていたようで、またまたゆでダコのように真っ赤になって下を向いてしまった。
でもこうなったら先の話にしないで直ぐにでもそのパートナーシップの証明とやらを貰うのもありだな。年齢的には大丈夫なんだろうか?
考えてみれば私まだ17歳なんだよね……
まあ親の説得とか……色々ハードルはありそうだけど。
…… …… ……
「IZUMIさん……よかったですね」
櫻井さんがこのタイミングで、私ではなくあえて維澄さんにそう語りかけた。
維澄さんは櫻井さんの顔を見て一瞬照れ隠しに下を向いたが、ハッキリと答えた。
「はい。色々ありがとうございました」
この櫻井さんの一言がダメ押しになって……
維澄さんの気持ちも落ち着くところにしっかり落ちたように感じた。
ああ……かなり綱渡りだったけど。
もう大丈夫だ。
大丈夫。
私も緊張の糸がようやくプツリと切れて今度は私の涙腺がついに崩壊してしまった。
だって……
維澄さんが私のこと好きでいてくれたんだなんて。
私と一生、一緒にいてくれるなんて。
奇跡が起きたんだよ?
嬉しいよ。
嬉しいよ。
ホントにホントに嬉しすぎるよ。
私はついにさっきの維澄さんのように大声をだして泣き続けてしまった。
この日が、私にとっても維澄さんにとっても大事な大事な記念日となった。
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