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届かぬ想い
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IZUMIが生きていること、そして普通の生活をしていることが私は心底嬉しかった。
しかし神沼檸檬は驚くべき話を私にした。
『維澄さんの友だちは私以外にいない』
『私以外に維澄さんの携帯番号を知っている人はアルバイト先の店長くらいだよ』
「そんなバカな!!」
と最初は思った。
しかし私は”やっぱりそうなのか”と納得するしかなかった。
IZUMIはモデル界で一世を風靡した過去をもつ。それなのに職場が田舎にある小さなドラッグストアーでひっそりとアルバイトをしているのは普通のことではない。
たしかにIZUMIは人づきあいが得意と言う印象はあまりないが、だからと言ってスマホの連絡先が女子高生の神沼檸檬一人というのはあまりに異常だ。
どうしてそんな状況になっているのか?
IZUMIは未だ私が与えてしまった心の傷を引きずっている。その想像は残念ながら私の自意識過剰ではないのだと思う。
私はこのオーデションにKスタジオを強引に関与させた。きっとIZUMIは神沼檸檬と一緒にオーデションにやってくる。
だから私はそこでIZUMIと再会することになるだろう。
もちろん私はいつでもIZUMIを直接訪ねることはできたが、私と再会するかどうかの判断はIZUMIに任せたかった。
IZUMIがまだ私と会いたくないと考えてるなら、会わない方がいい。
私の罪悪感を拭うだけためにIZUMIの傷をえぐることはしたくない。
IZUMIが前向きに私との過去に向かいあう覚悟が出来ていたならば会いに来てほしい。
これは私のとって祈りのような思いであった。
しかし、オーデション会場に言ってみれば事態が思わぬ方向に動き出した。
確かにIZUMIはこの会場に現れた。
予め呼んでおいた櫻井は、会場に入るなり妙なことを言い出した。
彼はYUYINAの大学の同級生であり彼氏でもある。YUKINAに言わせれば櫻井は大学生なのに彼のプロファイリグ能力は専門家以上という。私もその得体の知れない能力は直接しるところでもある。
櫻井は早速、私が話してもいないIZUMIと私の過去を察知した。
そればかりではなく”IZUMIが神沼檸檬に異常に執着している”という予想だにしないことを言い出した。
「いや、櫻井、確かにIZUMIが神沼檸檬に好意を寄せているとは思うが執着という程ではないと思うが?」
「あまいよ、上條さん。そもそも執着するかどうかは執着しなければならない不安がベースにある」
「不安?」
「ああ……そしてその原因は上條さんでしょ?」
「わ、私が?」
「俺は見てないから分らないけど……IZUMIさんは神沼さんとの関係を上條さんとの関係に重ねてる」
「そ、それはどういうことだ?」
「IZUMIさんが上條さんと離れたように神沼さんもIZUMIさんの元をいつか離れてしまうのではないかという想いに囚われてる。その不安感が異常な執着を生んでいる。」
私は自分が過去に犯してしまった罪の重さを改めて感じざるを得なかった。
そうだったのか。
だとすればIZUMIにまた好意を寄せている神沼檸檬はそのIZUMIの想いを必死に受けとめようとしているということか。
彼女は持ち前の前向きな言動と行動でIZUMIを変えようとしている。
だからこそ今日、この場にIZUMIが来た。神沼檸檬が必死にIZUMIを引っ張ってきたに違いない。
神沼檸檬がいなければきっとIZUMIはこの場に来ていない。
ホントはあの時私がやらなければならかったことを女子高生の彼女が懸命にやってくれている。
そうか。
IZUMIを救えるのはもう私ではない。この神沼檸檬なんだ……
IZUMIとの7年ぶりの再会。
私は成長したIZUMIを見て、自分がどんな顔をするのか想像もできなかった。
でも私は……
たただた大人に成長したIZUMIを見て嬉しかった。
元気に生きている。それだけで嬉しかった。
だから柄にもなく涙が溢れた。
よかった。生きていてくれて。
そして、いまだそんなにも美しいままでいてくれて。
彼女の容姿を見て、私がかつて教えたモデルとしての日常生活を続けていることが分かった。いまこのままでも現役モデルとしても他を圧倒するほどの美しさだった。
こんな風に少しでも”私との思い出”が彼女に身体から見てとれたのが嬉しかった。
神沼檸檬はおそらくこのオーデションに向けてIZUMIからモデルの指南を受けている。
それは間違いない。
ということはIZUMIもデモル界に関わろうとする意欲があるのではないか?
だったら神沼檸檬がモデルとしてデビューすれば、IZUMIが変われるきっかけになるではないか?
私は神沼檸檬がこのオーデションで優勝する。
ならば私がこの二人にしてやれることは……
「檸檬?あなたはKスタジオに入りなさい」
そうすれば、ずっとIZUMIはずっと檸檬と一緒に生きてくことが出来る。
そう思ったのだ。
でも私は少しやり方を間違えてしまった。
私が檸檬にそのことを伝えるとIZUMIは大きな勘違いをしてしまった。
私が過去に犯してしまった過ちは、そんな安易はことで解消するものではなかった。
「檸檬を私から奪わないで」
IZUMIはそう言いながら、半狂乱になってしまった。
違う。私は檸檬をIZUMIから取り上げようとなんかしていない。
でも私がつけてしまった傷が原因で、IZUMIはこんな馬鹿げた妄想までするようになってしまっている。
でもそれだけ神沼檸檬のことが好きとうことでもあるのだろう。
私だってIZUMIに幸せになってほしい。
でもどうすればそれが伝わるのか?
私は何をどう言えばいいのか?
私が一言も言葉を発せずにいると神沼檸檬が”ついに”叫んだ。
「維澄さん!私はあなたを愛している!」
この言葉がきっとIZUMIの心に深く響いた。
だからだろう。
IZUMIは絶叫して、彼女の感情が一気に放出した……
しかし神沼檸檬は驚くべき話を私にした。
『維澄さんの友だちは私以外にいない』
『私以外に維澄さんの携帯番号を知っている人はアルバイト先の店長くらいだよ』
「そんなバカな!!」
と最初は思った。
しかし私は”やっぱりそうなのか”と納得するしかなかった。
IZUMIはモデル界で一世を風靡した過去をもつ。それなのに職場が田舎にある小さなドラッグストアーでひっそりとアルバイトをしているのは普通のことではない。
たしかにIZUMIは人づきあいが得意と言う印象はあまりないが、だからと言ってスマホの連絡先が女子高生の神沼檸檬一人というのはあまりに異常だ。
どうしてそんな状況になっているのか?
IZUMIは未だ私が与えてしまった心の傷を引きずっている。その想像は残念ながら私の自意識過剰ではないのだと思う。
私はこのオーデションにKスタジオを強引に関与させた。きっとIZUMIは神沼檸檬と一緒にオーデションにやってくる。
だから私はそこでIZUMIと再会することになるだろう。
もちろん私はいつでもIZUMIを直接訪ねることはできたが、私と再会するかどうかの判断はIZUMIに任せたかった。
IZUMIがまだ私と会いたくないと考えてるなら、会わない方がいい。
私の罪悪感を拭うだけためにIZUMIの傷をえぐることはしたくない。
IZUMIが前向きに私との過去に向かいあう覚悟が出来ていたならば会いに来てほしい。
これは私のとって祈りのような思いであった。
しかし、オーデション会場に言ってみれば事態が思わぬ方向に動き出した。
確かにIZUMIはこの会場に現れた。
予め呼んでおいた櫻井は、会場に入るなり妙なことを言い出した。
彼はYUYINAの大学の同級生であり彼氏でもある。YUKINAに言わせれば櫻井は大学生なのに彼のプロファイリグ能力は専門家以上という。私もその得体の知れない能力は直接しるところでもある。
櫻井は早速、私が話してもいないIZUMIと私の過去を察知した。
そればかりではなく”IZUMIが神沼檸檬に異常に執着している”という予想だにしないことを言い出した。
「いや、櫻井、確かにIZUMIが神沼檸檬に好意を寄せているとは思うが執着という程ではないと思うが?」
「あまいよ、上條さん。そもそも執着するかどうかは執着しなければならない不安がベースにある」
「不安?」
「ああ……そしてその原因は上條さんでしょ?」
「わ、私が?」
「俺は見てないから分らないけど……IZUMIさんは神沼さんとの関係を上條さんとの関係に重ねてる」
「そ、それはどういうことだ?」
「IZUMIさんが上條さんと離れたように神沼さんもIZUMIさんの元をいつか離れてしまうのではないかという想いに囚われてる。その不安感が異常な執着を生んでいる。」
私は自分が過去に犯してしまった罪の重さを改めて感じざるを得なかった。
そうだったのか。
だとすればIZUMIにまた好意を寄せている神沼檸檬はそのIZUMIの想いを必死に受けとめようとしているということか。
彼女は持ち前の前向きな言動と行動でIZUMIを変えようとしている。
だからこそ今日、この場にIZUMIが来た。神沼檸檬が必死にIZUMIを引っ張ってきたに違いない。
神沼檸檬がいなければきっとIZUMIはこの場に来ていない。
ホントはあの時私がやらなければならかったことを女子高生の彼女が懸命にやってくれている。
そうか。
IZUMIを救えるのはもう私ではない。この神沼檸檬なんだ……
IZUMIとの7年ぶりの再会。
私は成長したIZUMIを見て、自分がどんな顔をするのか想像もできなかった。
でも私は……
たただた大人に成長したIZUMIを見て嬉しかった。
元気に生きている。それだけで嬉しかった。
だから柄にもなく涙が溢れた。
よかった。生きていてくれて。
そして、いまだそんなにも美しいままでいてくれて。
彼女の容姿を見て、私がかつて教えたモデルとしての日常生活を続けていることが分かった。いまこのままでも現役モデルとしても他を圧倒するほどの美しさだった。
こんな風に少しでも”私との思い出”が彼女に身体から見てとれたのが嬉しかった。
神沼檸檬はおそらくこのオーデションに向けてIZUMIからモデルの指南を受けている。
それは間違いない。
ということはIZUMIもデモル界に関わろうとする意欲があるのではないか?
だったら神沼檸檬がモデルとしてデビューすれば、IZUMIが変われるきっかけになるではないか?
私は神沼檸檬がこのオーデションで優勝する。
ならば私がこの二人にしてやれることは……
「檸檬?あなたはKスタジオに入りなさい」
そうすれば、ずっとIZUMIはずっと檸檬と一緒に生きてくことが出来る。
そう思ったのだ。
でも私は少しやり方を間違えてしまった。
私が檸檬にそのことを伝えるとIZUMIは大きな勘違いをしてしまった。
私が過去に犯してしまった過ちは、そんな安易はことで解消するものではなかった。
「檸檬を私から奪わないで」
IZUMIはそう言いながら、半狂乱になってしまった。
違う。私は檸檬をIZUMIから取り上げようとなんかしていない。
でも私がつけてしまった傷が原因で、IZUMIはこんな馬鹿げた妄想までするようになってしまっている。
でもそれだけ神沼檸檬のことが好きとうことでもあるのだろう。
私だってIZUMIに幸せになってほしい。
でもどうすればそれが伝わるのか?
私は何をどう言えばいいのか?
私が一言も言葉を発せずにいると神沼檸檬が”ついに”叫んだ。
「維澄さん!私はあなたを愛している!」
この言葉がきっとIZUMIの心に深く響いた。
だからだろう。
IZUMIは絶叫して、彼女の感情が一気に放出した……
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