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今のままでいい
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上條さんに会った次の日。アルバイト先で維澄さんが中々、口をきいてくれない。
予想はしていたけど……
ホントに笑っちゃうくらいに想像通りなんだけど……
私が昨日、上條さんに会ったことを伝えたら維澄さんの機嫌が途端に悪くなってしまった。ただ維澄さんも意識的に自分の悪いところを改善しようとしているのか、先日のファミレスで見せたようにいきなり激怒するようなことはなかった。
「え?なんで?また会うって……どういうことよ?」
私が昨日のことを話すと、顔を紅潮させならが維澄さんは私に挑んできた。
「だって急に電話してきて、断るスキもなかったわよ」
そう返すと、上條さんのことをよく知る維澄さんだからこそ分ってくれたんだと思う。
「あの人っていつもあんな感じじゃないんですか?」
「まあ、そうなんだけど」
渋々維澄さんは”仕方がない”という顔色を示してくれた。
でも維澄さん的には「頭で分かって」いても「気持ちのおさまりどころ」が見つけられないらしくそれからずっとむくれてしまっている。
”あんたのこと好き過ぎるでしょ?”
こんな維澄さんの嫉妬心を見てしまうと、自惚れすぎは危険と思いつつ上條さんのこの言葉を思い出しては心が浮ついてしまう。
「そんな怒らいでくださいよ」
「怒ってないわよ」
いやいや、メチャ怒ってるでしょ?
「上條さんは私に会いたいんじゃなくて、維澄さんの近況を知りたくてわざわざ来てるんですよ?」
「そ、それは分ってるけど……」
「分かってないですよ。だって私が上條さんに会わないで済む方法知ってますか?」
「え?何よそれ?」
「維澄さんが上條さんに会って、ちゃんと謝ればいいんです」
ちょっと意地悪だと思ったが、敢えてそこまで言ってみた。
「そ、それは……分ってるけどそんな簡単じゃないのよ。それは檸檬だって分ってくれるんでしょ?」
フフ……もちろん分ってますとも。
でも私が上條さんと会うことがそんなに嫌なら、維澄さんが重い腰を上げて上條さんと会うモチベーションになりはしないかと私なりに思っているのだ。
これはいつか実現しなければいけない維澄さんのミッションだ。それはもちろん私のミッションでもある。私の中ではそう決めているのだ。
しばらく口を聞いてくれない維澄さんだったが、維澄さんの視線はメチャクチャ感じてしまいアルバイト中私は全く落ちつくことが出来なかった。
私が維澄さんの視線に気付いて目を合わせると、決まって少し不安そうな目で私を睨めつけてから……
私と目が合うと”フンッ!”とでも言う様に口をとがらせてワザとらしく顔を横に向けて目を逸らしてしまう。
そんな維澄さんの顔を見てしまえば……
”私のこと好き過ぎるでしょ?”
そう思わざるを得ない。
怒ってる維澄さんには申し訳ないけど……こんな維澄さんを見ていると嬉しすぎてホント狂い死にしそうだ。
私もここ数日、維澄さんのトラウマの本質……つまり”自分が傷つくを異常なまでに怖れている”ということに気付づいてから色々と考えた。
上條さんは複雑に考えすぎている私をバカにしていたが、それでも私は考えてしまうのだ。おそらく上條さんが言うようにもしかしたら維澄さんは私のことを好きでいてくれている可能性は大いにあると思う。
私にとっては写真の中にいる”憧れるだけの存在”だった維澄さん。
そんな女神のような人が、同性である普通の女子高生を好きになってくれる可能性なんて限りなくゼロに近かった筈だ。
でも最近の維澄さんの態度からは”私を好きでない”という理由を引き出す方がむしろ難しい状況になって来ている。
信じられないが、これが現実で起こってることなのだ。
でも……問題は”そこ”ではないことに薄々気付き始めいてる。維澄さんの気持ちがどうであれ、おそらく維澄さんの口から”私が最も欲しい言葉”はいくら待っても出てこない。
それは”私は檸檬が好き”という言葉だ。
維澄さんはきっとその思いがあったとしても、それを自分自身で認めることができない。
それは維澄さんが最も怖れること、つまり好きな人が去ってしまう可能性が生じてしまうことをわざわざ自分から作ることになるからだ。
だから私はここ数日考え抜いて、ある結論に到達していた。
”恋人という称号はなくてもいいのかも”
私は維澄さんの口から”好き”という言葉をもちろん聞きたい。
でもそこまで望まなくてもいいのではないか?
だって、もう十分奇跡は起きたのだ。
きっと維澄さんはこの先、私以上に心を許す人が現れるという想像が出来ない。
凄い自惚れだけど……
だから私さえ今の状況に満足しさえすれば、維澄さんとの関係は永続するように思うのだ。
”友だち”として……いやきっと”友だち以上、恋人未満”にはなれる。
それでいいのではないか?
これ以上、維澄さんの傷に触れて維澄さんを苦しめてしまうのは私の本意ではない。
”いまのままで十分”
今後、それを私は時間を掛けて自分の心に落とし込めればいい……
それが私と維澄さんとの最上の”落とし所”という気がする。
そう思えば、もう何も焦ることはない。
私がただただ維澄さんを愛し続けるだけでいいんだ。
何も求めない。
フフフ……”何も求めない”なんて、なんか賢者のようなセリフだな。
凄いぞ檸檬!
ホントは寂しい………でもそうやって自分を鼓舞しながらこんな関係に慣れていこう。
そう、もう既に奇跡は起きたんだから。
私はもう幸せの中にいる。
そう思うことにしよう……
予想はしていたけど……
ホントに笑っちゃうくらいに想像通りなんだけど……
私が昨日、上條さんに会ったことを伝えたら維澄さんの機嫌が途端に悪くなってしまった。ただ維澄さんも意識的に自分の悪いところを改善しようとしているのか、先日のファミレスで見せたようにいきなり激怒するようなことはなかった。
「え?なんで?また会うって……どういうことよ?」
私が昨日のことを話すと、顔を紅潮させならが維澄さんは私に挑んできた。
「だって急に電話してきて、断るスキもなかったわよ」
そう返すと、上條さんのことをよく知る維澄さんだからこそ分ってくれたんだと思う。
「あの人っていつもあんな感じじゃないんですか?」
「まあ、そうなんだけど」
渋々維澄さんは”仕方がない”という顔色を示してくれた。
でも維澄さん的には「頭で分かって」いても「気持ちのおさまりどころ」が見つけられないらしくそれからずっとむくれてしまっている。
”あんたのこと好き過ぎるでしょ?”
こんな維澄さんの嫉妬心を見てしまうと、自惚れすぎは危険と思いつつ上條さんのこの言葉を思い出しては心が浮ついてしまう。
「そんな怒らいでくださいよ」
「怒ってないわよ」
いやいや、メチャ怒ってるでしょ?
「上條さんは私に会いたいんじゃなくて、維澄さんの近況を知りたくてわざわざ来てるんですよ?」
「そ、それは分ってるけど……」
「分かってないですよ。だって私が上條さんに会わないで済む方法知ってますか?」
「え?何よそれ?」
「維澄さんが上條さんに会って、ちゃんと謝ればいいんです」
ちょっと意地悪だと思ったが、敢えてそこまで言ってみた。
「そ、それは……分ってるけどそんな簡単じゃないのよ。それは檸檬だって分ってくれるんでしょ?」
フフ……もちろん分ってますとも。
でも私が上條さんと会うことがそんなに嫌なら、維澄さんが重い腰を上げて上條さんと会うモチベーションになりはしないかと私なりに思っているのだ。
これはいつか実現しなければいけない維澄さんのミッションだ。それはもちろん私のミッションでもある。私の中ではそう決めているのだ。
しばらく口を聞いてくれない維澄さんだったが、維澄さんの視線はメチャクチャ感じてしまいアルバイト中私は全く落ちつくことが出来なかった。
私が維澄さんの視線に気付いて目を合わせると、決まって少し不安そうな目で私を睨めつけてから……
私と目が合うと”フンッ!”とでも言う様に口をとがらせてワザとらしく顔を横に向けて目を逸らしてしまう。
そんな維澄さんの顔を見てしまえば……
”私のこと好き過ぎるでしょ?”
そう思わざるを得ない。
怒ってる維澄さんには申し訳ないけど……こんな維澄さんを見ていると嬉しすぎてホント狂い死にしそうだ。
私もここ数日、維澄さんのトラウマの本質……つまり”自分が傷つくを異常なまでに怖れている”ということに気付づいてから色々と考えた。
上條さんは複雑に考えすぎている私をバカにしていたが、それでも私は考えてしまうのだ。おそらく上條さんが言うようにもしかしたら維澄さんは私のことを好きでいてくれている可能性は大いにあると思う。
私にとっては写真の中にいる”憧れるだけの存在”だった維澄さん。
そんな女神のような人が、同性である普通の女子高生を好きになってくれる可能性なんて限りなくゼロに近かった筈だ。
でも最近の維澄さんの態度からは”私を好きでない”という理由を引き出す方がむしろ難しい状況になって来ている。
信じられないが、これが現実で起こってることなのだ。
でも……問題は”そこ”ではないことに薄々気付き始めいてる。維澄さんの気持ちがどうであれ、おそらく維澄さんの口から”私が最も欲しい言葉”はいくら待っても出てこない。
それは”私は檸檬が好き”という言葉だ。
維澄さんはきっとその思いがあったとしても、それを自分自身で認めることができない。
それは維澄さんが最も怖れること、つまり好きな人が去ってしまう可能性が生じてしまうことをわざわざ自分から作ることになるからだ。
だから私はここ数日考え抜いて、ある結論に到達していた。
”恋人という称号はなくてもいいのかも”
私は維澄さんの口から”好き”という言葉をもちろん聞きたい。
でもそこまで望まなくてもいいのではないか?
だって、もう十分奇跡は起きたのだ。
きっと維澄さんはこの先、私以上に心を許す人が現れるという想像が出来ない。
凄い自惚れだけど……
だから私さえ今の状況に満足しさえすれば、維澄さんとの関係は永続するように思うのだ。
”友だち”として……いやきっと”友だち以上、恋人未満”にはなれる。
それでいいのではないか?
これ以上、維澄さんの傷に触れて維澄さんを苦しめてしまうのは私の本意ではない。
”いまのままで十分”
今後、それを私は時間を掛けて自分の心に落とし込めればいい……
それが私と維澄さんとの最上の”落とし所”という気がする。
そう思えば、もう何も焦ることはない。
私がただただ維澄さんを愛し続けるだけでいいんだ。
何も求めない。
フフフ……”何も求めない”なんて、なんか賢者のようなセリフだな。
凄いぞ檸檬!
ホントは寂しい………でもそうやって自分を鼓舞しながらこんな関係に慣れていこう。
そう、もう既に奇跡は起きたんだから。
私はもう幸せの中にいる。
そう思うことにしよう……
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