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上條裕子
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「維澄?私モデルやめようと思ってる」
「え!?な、何を言いだすんですか!急に?」
「私ってプライド高いじゃない?」
「そ、それがどうしたんですか?」
「はは、否定しないか。だからなんでも一番じゃなければやなんだよ」
「だから、なんなんですか?」
「モデルもトップじゃないのが自分でも許せないってことだよ」
「ど、どういうことですか?私は裕子さんが、今のモデル界でダントツで一番だと思いますけど?」
「まあ、今はそうだろうね。」
「”今は”って?」
モデル界のカリスマ”上條裕子”
私にとってはモデル界の大先輩であり、私の憧れでもある。
モデルは競技とう訳じゃないから、一番とか二番を決められる訳じゃないけど、間違いなく一番だと私も思っている。
彼女との出会いは、私は高校三年の夏。
渋谷のスクランブル交差点で上條裕子に話しかけられた。
しかも裕子さんには最初から驚かされた。
「あたなモデルやってみない?」
第一声がこれだ。私は意味も分からず固まったしまったのを覚えている。
私ですら知る有名人。カリスマモデルから話しかけられうだけでも驚きなのにこんなことをいきなり離されたら誰だってビックリする。
私は人前に出ることはからっきし苦手だったからモデルなんかやる訳がない。
だから私は直ぐ断ろうとした。
でも、私は一瞬で裕子さんの美しさに目が離せなくなってしまっていた。
だから、裕子さんが私の目の前で私を説得する姿を見ている内に”モデルをやりたい”という思いよりも”この人ともっと一緒にいたい”という気持ちが芽生えてしまった。
私はそれから間もなくして高校生モデルとしてデビューすることになる。
それなのに……
それからたった半年もたたないうちに自分がモデルをやめるなんて、勝手するぎるにも程がある。
私はそもそもモデルなんかになる気はなかった。
ただ裕子さんの側にいたかっただけ。
納得出来るわけがない。
そして、そもそも上條裕子を超えるモデルなんている訳がない。
それは都合のいい言い訳に過ぎない。
嘘に決まっている。
「維澄?冗談だと思ってるでしょ?でも残念ながら本当だよ。モデルを辞めることも、私がもう業界で一番ではなくなることも」
「そ、それはどういうことですか?裕子さんより優秀なモデルがいるってことですか?」
「その通りだよ」
「だ、誰なんですか?そんな人いる訳ないですよ!」
「それがいるんだよ」
「ど、どこにですか?」
「今、私の目の前にだよ」
「……は?」
「フフ……ちょっとだけウソがあったな。別にモデルを辞める理由は、私が一番じゃなくなるのが原因ではない。ただ……維澄、あたなをプロデュースしたくなったのさ。私の今にとって最大の関心は自分がモデルをやることじゃない。あたなを業界一のモデルにすることだと気付いたんだ」
「な、何を言ってるんですか?いくら私が業界の事よく知らないからってからかわないでください。そんなウソで誤魔化さないでください!ホント怒りますよ!」
裕子さんは、私よりも4歳年上だから22歳の大学4年生。すでにモデルのキャリアも長く間違いなく業界でも5本の指に入るカリスマモデルだ。いや私もちろんは一番だと思っている。
それがまだ高校生で半年もキャリアのない私に抜かれるとか……
そんな嘘、私だって信じるはずがないのに。
私を子供扱いして、またバカにしている。
「ハハ、そんな恐い顔しないでよ」
裕子さんは優しい顔で微笑みながら続けた。
「維澄?あなたね、自分で気付いてないと思うけど維澄ほどモデルの才能に恵まれた女性は私は見たことないんだ。でなければ渋谷のど真ん中でいきなり声なんかかけないでしょ?」
「だから、そんな冗談……」
「維澄!!」
裕子さんは大声で怒鳴りつけるように、私の言葉を遮った。
「嘘じゃない。本気なんだよ。私はどんなに頑張ってもおそらく近い将来、モデルに関してはあなたの足元にも及ばなくなる。でもそれは全然悔しくない。それよりも、あたなの才能が他の誰かにさらわれてしまうのは、それだけは絶対にやなんだ」
裕子さんは、いつにない真剣な眼差しでそう語った。
私はついに観念せざるを得なかった。裕子さんが本気であることが分かったからだ。
「維澄、私はモデル事務所を立ち上げる」
「え?そ、そんな裕子さんまだ22歳で大学も卒業していない……」
「もう卒業だよ。私、就職活動もしてなかったしタイミングとしては今なんだよ。幸い私はモデル業界は長いからそれなりに人脈もある。それに維澄、あなたさえいれば、間違いなく私は成功できる。」
「そ、そんな私が頼りみたいな言い方しないでください。私は半人前の高校生モデルでしかないんですから」
「フフ、そこはあたなが心配するところじゃない。私が認めたってことは間違いのない評価ってことなんだよ」
たしかにいつも聞かされる裕子さんのモデルに対する評価は、辛口かつ鋭すぎるがいつも的を得ている。ファッション雑誌の編集部も新人モデルの評価を聞きたくてよく裕子さんを尋ねてくるくらいだ。
「だから維澄。あたなが私の事務所のモデル第一号になって」
私は話の途中から気付いていた。
裕子さんが私をプロデュースするために事務所を起こそうとしていることに、私は全く困ってなんかいないということに。
だから困った風を装ったが、実は叫びだしたいほどに嬉しかったのだ。
裕子さんが私をこんなに頼って、私を他人に渡したくないとまで言ってくれているのだ。
そう、私がはじめて…… ……った人が。
「え!?な、何を言いだすんですか!急に?」
「私ってプライド高いじゃない?」
「そ、それがどうしたんですか?」
「はは、否定しないか。だからなんでも一番じゃなければやなんだよ」
「だから、なんなんですか?」
「モデルもトップじゃないのが自分でも許せないってことだよ」
「ど、どういうことですか?私は裕子さんが、今のモデル界でダントツで一番だと思いますけど?」
「まあ、今はそうだろうね。」
「”今は”って?」
モデル界のカリスマ”上條裕子”
私にとってはモデル界の大先輩であり、私の憧れでもある。
モデルは競技とう訳じゃないから、一番とか二番を決められる訳じゃないけど、間違いなく一番だと私も思っている。
彼女との出会いは、私は高校三年の夏。
渋谷のスクランブル交差点で上條裕子に話しかけられた。
しかも裕子さんには最初から驚かされた。
「あたなモデルやってみない?」
第一声がこれだ。私は意味も分からず固まったしまったのを覚えている。
私ですら知る有名人。カリスマモデルから話しかけられうだけでも驚きなのにこんなことをいきなり離されたら誰だってビックリする。
私は人前に出ることはからっきし苦手だったからモデルなんかやる訳がない。
だから私は直ぐ断ろうとした。
でも、私は一瞬で裕子さんの美しさに目が離せなくなってしまっていた。
だから、裕子さんが私の目の前で私を説得する姿を見ている内に”モデルをやりたい”という思いよりも”この人ともっと一緒にいたい”という気持ちが芽生えてしまった。
私はそれから間もなくして高校生モデルとしてデビューすることになる。
それなのに……
それからたった半年もたたないうちに自分がモデルをやめるなんて、勝手するぎるにも程がある。
私はそもそもモデルなんかになる気はなかった。
ただ裕子さんの側にいたかっただけ。
納得出来るわけがない。
そして、そもそも上條裕子を超えるモデルなんている訳がない。
それは都合のいい言い訳に過ぎない。
嘘に決まっている。
「維澄?冗談だと思ってるでしょ?でも残念ながら本当だよ。モデルを辞めることも、私がもう業界で一番ではなくなることも」
「そ、それはどういうことですか?裕子さんより優秀なモデルがいるってことですか?」
「その通りだよ」
「だ、誰なんですか?そんな人いる訳ないですよ!」
「それがいるんだよ」
「ど、どこにですか?」
「今、私の目の前にだよ」
「……は?」
「フフ……ちょっとだけウソがあったな。別にモデルを辞める理由は、私が一番じゃなくなるのが原因ではない。ただ……維澄、あたなをプロデュースしたくなったのさ。私の今にとって最大の関心は自分がモデルをやることじゃない。あたなを業界一のモデルにすることだと気付いたんだ」
「な、何を言ってるんですか?いくら私が業界の事よく知らないからってからかわないでください。そんなウソで誤魔化さないでください!ホント怒りますよ!」
裕子さんは、私よりも4歳年上だから22歳の大学4年生。すでにモデルのキャリアも長く間違いなく業界でも5本の指に入るカリスマモデルだ。いや私もちろんは一番だと思っている。
それがまだ高校生で半年もキャリアのない私に抜かれるとか……
そんな嘘、私だって信じるはずがないのに。
私を子供扱いして、またバカにしている。
「ハハ、そんな恐い顔しないでよ」
裕子さんは優しい顔で微笑みながら続けた。
「維澄?あなたね、自分で気付いてないと思うけど維澄ほどモデルの才能に恵まれた女性は私は見たことないんだ。でなければ渋谷のど真ん中でいきなり声なんかかけないでしょ?」
「だから、そんな冗談……」
「維澄!!」
裕子さんは大声で怒鳴りつけるように、私の言葉を遮った。
「嘘じゃない。本気なんだよ。私はどんなに頑張ってもおそらく近い将来、モデルに関してはあなたの足元にも及ばなくなる。でもそれは全然悔しくない。それよりも、あたなの才能が他の誰かにさらわれてしまうのは、それだけは絶対にやなんだ」
裕子さんは、いつにない真剣な眼差しでそう語った。
私はついに観念せざるを得なかった。裕子さんが本気であることが分かったからだ。
「維澄、私はモデル事務所を立ち上げる」
「え?そ、そんな裕子さんまだ22歳で大学も卒業していない……」
「もう卒業だよ。私、就職活動もしてなかったしタイミングとしては今なんだよ。幸い私はモデル業界は長いからそれなりに人脈もある。それに維澄、あなたさえいれば、間違いなく私は成功できる。」
「そ、そんな私が頼りみたいな言い方しないでください。私は半人前の高校生モデルでしかないんですから」
「フフ、そこはあたなが心配するところじゃない。私が認めたってことは間違いのない評価ってことなんだよ」
たしかにいつも聞かされる裕子さんのモデルに対する評価は、辛口かつ鋭すぎるがいつも的を得ている。ファッション雑誌の編集部も新人モデルの評価を聞きたくてよく裕子さんを尋ねてくるくらいだ。
「だから維澄。あたなが私の事務所のモデル第一号になって」
私は話の途中から気付いていた。
裕子さんが私をプロデュースするために事務所を起こそうとしていることに、私は全く困ってなんかいないということに。
だから困った風を装ったが、実は叫びだしたいほどに嬉しかったのだ。
裕子さんが私をこんなに頼って、私を他人に渡したくないとまで言ってくれているのだ。
そう、私がはじめて…… ……った人が。
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