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第八話 手酷い裏切り
③「その子供は酩酊児じゃないだろうな」
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「ところで、その子は酩酊児じゃないだろうな?」
「メイテイジ?」
「そう、酩酊児だよ。お前、知らないのか?」
長田はグラスを弄びながら悪戯っぽく笑った。
「知らんな、何のことだ?それは」
「酒に酔っ払った時に出来た子供のことだよ」
「酔っ払った時?」
「その、アレする時に男の方が酔っ払っていたと言うやつだ」
「それがどうしたと言うんだ?」
「そういう時に出来た子供を酩酊児と言うんだよ」
俊夫は今一つ良く解らなかった。
「それで?」
「頭に故障があったり、手足がおかしかったり、要するに欠陥児だが、それが生まれる可能性が高いらしい」
「まさか・・・」
「だから、そんな子供が産まれちゃ大変だから、呑んでやっちゃいけないんだよ。やっぱり、子供を作る時には羽織袴で礼儀正しくやることだ」
「どうしてそんなことになるんだよ?」
「そりゃ、酔っている時には精子も同じように酔っ払って居るんじゃないのか」
「確かなのか?」
「俺は産科医じゃないから医学的なことはよく分らんが、そういう話は腐るほど聞くだろう、世間には」
「それで、俺の子も、か?」
「それは知らんよ・・・お前、まさか、酔っ払って奥さんとやったのか?」
長田は口を大きく開けて笑い出した。
俊夫は瑠美が妊娠した頃のことを思い出してみた。
彼は夜に素面であることは滅多に無い。酒の酔いには、爽快期、ほろ酔い期、酩酊期、泥酔期、昏睡期とあるが、果たしてどの段階だったのだろうか?確かに、ほろ酔いと言う程度の軽い酔いではなかった。が、泥酔と言える程に酔い潰れても居なかっただろう。とすると、長田の言う酩酊状態の時に出来た子なのか?・・・
俊夫の胸に不安の思いが急激に膨れ上がって来た。
「何だ、お前、心当たりでもあるのか?」
笑いの残った顔で長田が俊夫を見詰めた。
「いや、別に無い」
「脅かすなよ、吃驚するじゃないか」
長田はエビの天ぷらに箸をつけた。
「このことは、特に女性が、近頃、気にしているらしい。医学的にどうなのかとか、単なる迷信なのかとか、な」
「望まぬ子供が出来たら困る、ということか?」
「まあ、そうだろうな。兎に角、酔っ払った時にやらなきゃそれで良いんだよ」
些か不安げな俊夫を励ますように長田は言った。
「然し、酔った時と言うのは・・・」
「そうだよな、ちょっと飲むと、やりたい欲望は起きて来るからな」
「少しくらいの酔いなら大丈夫なんだろうか?」
「良いと思うが、よくは判らんよ。然し、酷く酔っぱらうと男の機能が言うことを利かんだろう。泥酔したらやりたくてもやれないさ」
俊夫の不安がまた蘇った。折角、三年目にして授かった子供ではあっても、脳が足りなかったり五体満足でなかったりしたら堪らない。
長田は話題を変えて愉し気に話したが、俊夫は、それから後はビールを注がれてももう飲む気はしなかった。
「メイテイジ?」
「そう、酩酊児だよ。お前、知らないのか?」
長田はグラスを弄びながら悪戯っぽく笑った。
「知らんな、何のことだ?それは」
「酒に酔っ払った時に出来た子供のことだよ」
「酔っ払った時?」
「その、アレする時に男の方が酔っ払っていたと言うやつだ」
「それがどうしたと言うんだ?」
「そういう時に出来た子供を酩酊児と言うんだよ」
俊夫は今一つ良く解らなかった。
「それで?」
「頭に故障があったり、手足がおかしかったり、要するに欠陥児だが、それが生まれる可能性が高いらしい」
「まさか・・・」
「だから、そんな子供が産まれちゃ大変だから、呑んでやっちゃいけないんだよ。やっぱり、子供を作る時には羽織袴で礼儀正しくやることだ」
「どうしてそんなことになるんだよ?」
「そりゃ、酔っている時には精子も同じように酔っ払って居るんじゃないのか」
「確かなのか?」
「俺は産科医じゃないから医学的なことはよく分らんが、そういう話は腐るほど聞くだろう、世間には」
「それで、俺の子も、か?」
「それは知らんよ・・・お前、まさか、酔っ払って奥さんとやったのか?」
長田は口を大きく開けて笑い出した。
俊夫は瑠美が妊娠した頃のことを思い出してみた。
彼は夜に素面であることは滅多に無い。酒の酔いには、爽快期、ほろ酔い期、酩酊期、泥酔期、昏睡期とあるが、果たしてどの段階だったのだろうか?確かに、ほろ酔いと言う程度の軽い酔いではなかった。が、泥酔と言える程に酔い潰れても居なかっただろう。とすると、長田の言う酩酊状態の時に出来た子なのか?・・・
俊夫の胸に不安の思いが急激に膨れ上がって来た。
「何だ、お前、心当たりでもあるのか?」
笑いの残った顔で長田が俊夫を見詰めた。
「いや、別に無い」
「脅かすなよ、吃驚するじゃないか」
長田はエビの天ぷらに箸をつけた。
「このことは、特に女性が、近頃、気にしているらしい。医学的にどうなのかとか、単なる迷信なのかとか、な」
「望まぬ子供が出来たら困る、ということか?」
「まあ、そうだろうな。兎に角、酔っ払った時にやらなきゃそれで良いんだよ」
些か不安げな俊夫を励ますように長田は言った。
「然し、酔った時と言うのは・・・」
「そうだよな、ちょっと飲むと、やりたい欲望は起きて来るからな」
「少しくらいの酔いなら大丈夫なんだろうか?」
「良いと思うが、よくは判らんよ。然し、酷く酔っぱらうと男の機能が言うことを利かんだろう。泥酔したらやりたくてもやれないさ」
俊夫の不安がまた蘇った。折角、三年目にして授かった子供ではあっても、脳が足りなかったり五体満足でなかったりしたら堪らない。
長田は話題を変えて愉し気に話したが、俊夫は、それから後はビールを注がれてももう飲む気はしなかった。
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