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第十三話 縁の愛
⑤聡亮へのラブレターの差出人は香織になっていた
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高校二年の夏休み中のことだった。
真昼の熱い最中に聡亮が怖い貌をして香織の家にやって来た。
「これは、君が書いたのか?」
いきなり手渡されたのは封書に入った聡亮へのラブレターだった。差出人は香織になっていた。
最後にこう書かれていた。
「紅き花の咲き行く如く情熱を燃やした日々よ。去り行きし日の慕わしさ、あなたと共に在りせばこそ。二年一組のホープ、斎藤聡亮さん。いつまでも私を忘れないでね。そして、悲しい時、私を思い出して下さいね。受験なんかに負けずに闘って!やさしくまた逢う日はいつ、我知らず、せめて捧げん。さようなら!さようなら!別れ行く今宵よ、星はせめて耀け、あなたの御健康とご幸福を陰ながらお祈りします。木村香織」
読み乍ら香織は笑い出した。
「はっはっはっはっは、なかなかの名文じゃん?あんた、気持ち良いでしょう」
「ほんとうに君じゃないのか?」
「何であたしがこんなものをあんたに出さなきゃならないのさ。あたしなら自分の口ではっきり言うわよ。第一、今、あたしがあんたと別れなきゃならない理由なんて有ると思う?二人で受験勉強に必死で取り組んでいると言うのに・・・」
「じゃ、誰が、何の目的で、こんなものを?」
「きっと、あたしへの嫌がらせね、これは」
「と言うと?」
「あんたと仲睦まじく勉強していることを知った誰かが焼きもちを焼いたのよ、あたしに」
「まさか・・・」
「さもなきゃ、本当にあんたに恋をしている誰かがあたしの名を騙って胸の思いをぶっつけたんだわ」
「それならきちんと本名で堂々と言えば良いじゃないか!」
香織は面白がって揶揄い半分に笑いながら聡亮に言った。
「二学期が始まったら、誰がこんな悪戯をしたのか突き止めてあげるわ。それまでジタバタしないで無視しておけば良いのよ。あたしに任せなさい、ね」
聡亮は少し躊躇ったが、やがて頷いた。
「うん、解かった」
そして、漸く気持を落ち着けた聡亮は、改めて、香織をしげしげと見詰めた。彼女はジーンズのジャケットも羽織らずロングスカートも履いていなかった。洗い晒しのTシャツにジーパン姿だった。想像以上に胸の膨らみが大きく、腰の辺りにくびれも出来て、身体の線が綺麗だった。
聡亮の視線に気づいた香織が言った。
「何処見ているのよ、嫌らしい!あんたにもその気が在るのか?やっぱり男だもんね。どう?一発やってみる?・・・はっはっはっはっは」
聡亮はしどろもどろになって返事が出来なかった。
夏休みが明けると直ぐに、香織はロングスカートを翻して、一人で虱潰しに聞き込みを始めた。聡亮が冷やかし半分に皆から揶揄われるのを防ぐ為に誰の力も借りなかった。
十日後、香織は悪質な悪戯の犯人を特定して学校の近くに在る船形山公園へ呼び出した。コーラス部の女生徒二人に男子生徒一人の三人だった。男子生徒は二人に相談されたことをすらすらと喋ったが、女生徒は二人とも頑なにしぶとく白を切った。
「可愛い顔して、良いスタイルして、なのに、頭は低能なのか、お前たちは!少しは恥を知りなよ!恥を!」
辛抱し切れなくなった香織は短い髪を振り乱して二人を袋叩きにした。自分でも訳の判らぬ凶暴さに駆り立てられていた。傍に居た聡亮が吃驚して途中で止めに入った程だった。男子生徒は聡亮に這いつくばって謝り、香織から強烈なパンチを一発喰らって、そそくさと逃げ去った。
真昼の熱い最中に聡亮が怖い貌をして香織の家にやって来た。
「これは、君が書いたのか?」
いきなり手渡されたのは封書に入った聡亮へのラブレターだった。差出人は香織になっていた。
最後にこう書かれていた。
「紅き花の咲き行く如く情熱を燃やした日々よ。去り行きし日の慕わしさ、あなたと共に在りせばこそ。二年一組のホープ、斎藤聡亮さん。いつまでも私を忘れないでね。そして、悲しい時、私を思い出して下さいね。受験なんかに負けずに闘って!やさしくまた逢う日はいつ、我知らず、せめて捧げん。さようなら!さようなら!別れ行く今宵よ、星はせめて耀け、あなたの御健康とご幸福を陰ながらお祈りします。木村香織」
読み乍ら香織は笑い出した。
「はっはっはっはっは、なかなかの名文じゃん?あんた、気持ち良いでしょう」
「ほんとうに君じゃないのか?」
「何であたしがこんなものをあんたに出さなきゃならないのさ。あたしなら自分の口ではっきり言うわよ。第一、今、あたしがあんたと別れなきゃならない理由なんて有ると思う?二人で受験勉強に必死で取り組んでいると言うのに・・・」
「じゃ、誰が、何の目的で、こんなものを?」
「きっと、あたしへの嫌がらせね、これは」
「と言うと?」
「あんたと仲睦まじく勉強していることを知った誰かが焼きもちを焼いたのよ、あたしに」
「まさか・・・」
「さもなきゃ、本当にあんたに恋をしている誰かがあたしの名を騙って胸の思いをぶっつけたんだわ」
「それならきちんと本名で堂々と言えば良いじゃないか!」
香織は面白がって揶揄い半分に笑いながら聡亮に言った。
「二学期が始まったら、誰がこんな悪戯をしたのか突き止めてあげるわ。それまでジタバタしないで無視しておけば良いのよ。あたしに任せなさい、ね」
聡亮は少し躊躇ったが、やがて頷いた。
「うん、解かった」
そして、漸く気持を落ち着けた聡亮は、改めて、香織をしげしげと見詰めた。彼女はジーンズのジャケットも羽織らずロングスカートも履いていなかった。洗い晒しのTシャツにジーパン姿だった。想像以上に胸の膨らみが大きく、腰の辺りにくびれも出来て、身体の線が綺麗だった。
聡亮の視線に気づいた香織が言った。
「何処見ているのよ、嫌らしい!あんたにもその気が在るのか?やっぱり男だもんね。どう?一発やってみる?・・・はっはっはっはっは」
聡亮はしどろもどろになって返事が出来なかった。
夏休みが明けると直ぐに、香織はロングスカートを翻して、一人で虱潰しに聞き込みを始めた。聡亮が冷やかし半分に皆から揶揄われるのを防ぐ為に誰の力も借りなかった。
十日後、香織は悪質な悪戯の犯人を特定して学校の近くに在る船形山公園へ呼び出した。コーラス部の女生徒二人に男子生徒一人の三人だった。男子生徒は二人に相談されたことをすらすらと喋ったが、女生徒は二人とも頑なにしぶとく白を切った。
「可愛い顔して、良いスタイルして、なのに、頭は低能なのか、お前たちは!少しは恥を知りなよ!恥を!」
辛抱し切れなくなった香織は短い髪を振り乱して二人を袋叩きにした。自分でも訳の判らぬ凶暴さに駆り立てられていた。傍に居た聡亮が吃驚して途中で止めに入った程だった。男子生徒は聡亮に這いつくばって謝り、香織から強烈なパンチを一発喰らって、そそくさと逃げ去った。
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