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第六話、さそり座の彼女、故郷へ帰って高校の先生になる
⑤健一、高校への求人活動で単身、四国を訪れる
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麗奈が京都を去って一年半が経過した九月の初めに、健一は高校への求人活動で単身、四国を訪れることになった。前年から京都事業所の求人隊に組み入れられてはいたが、初めての仕事ということで、前年の七月と九月と今年の七月の計三回は、係長或は課長補佐が同行して業務の指導や先生への引き合わせを行ってくれた。この九月になって初めて、健一は一人で香川県と徳島県を廻ることになったのである。
健一は麗奈に電話して、「逢いたい、是非逢いたい」と強く迫った。
麗奈は健一が思ったほどには拘らずに気安く承諾した。
「解かった。序に徳島を案内してもあげるわ」
健一は水曜日の夜に高松に入り前泊して木曜の朝から活動を開始した。工業高校の機械科、電気科、化学科を中心に農業高校や普通高校の就職志望者を募って自社への推薦をお願いして廻る仕事である。
初日の今日は朝から高松市内を中心に活動し、その後、予讃線と土讃線を乗り継いで坂出、丸亀、多度津、善通寺と熟して、琴平の高校での面談を終えた時にはもう夕方五時を半ばほど過ぎていた。JRの便は一時間に一、二本しか無く、健一は時刻が上手く合う時には列車を利用し、駄目な場合はタクシーを駆使して、何とか予定の学校訪問を無事終了した。
学校での面談中は、タクシーはいつも待たせておいたので、時間を効率的に使うには好都合ではあった。
駅前の旅館斡旋所で紹介されたホテルは夕食と朝食付きで駅から五分程の近距離だった。ホテルでシャワーを浴び麦酒を一本飲んで夕食を済ませた健一は、部屋へ戻って今日の仕事の整理と纏めに取り掛かった。面談した進路指導部の先生方は何方も前年と変わりは無く、初めて一人で面談したにしては成果の在る内容だった、と一息吐ける状態だった。世の中に名の通った大企業と毎年生徒を紹介してくれている学校との関係であれば、それは普通のことだったのかも知れないが、それでも健一としてはホッと胸を撫で下ろせるものが有った。今日頂いた名刺に年月日と時間を記入し、学校ごとの内容をメモに纏めて、翌日の徳島訪問の予定を確認し終えた時には時刻は既に十一時を回っていた。テレビで一日のニュースを観、天気予報を確認して、健一は眠りに就いた。
翌朝、九時に特急「しまんと五号、高知行き」に乗車した健一はニ十分ほどで阿波池田に到着した。此処から池田の高校を皮切りに、貞光、穴吹、鴨島と、徳島線とタクシーを乗り継いで徳島市に入り、市内の高校を幾つか回った後、牟岐線で新野、阿南を訪れた。阿南の高校を終えた時には時刻はもう五時前になっていた。時間が有れば訪ねたいと思っていた鳴門の高校へは行くことが出来ず、健一は止む無く鳴門線に乗るのを諦めて徳島駅で列車を降りた。
駅ビルに在る超高層ホテルが今夜と明晩の宿だった。麗奈との逢瀬を考えて健一がリザーブして置いた処である。
夕食には焼酎の薄いお湯割りを呑んだ。焼酎は酔いが軽い。頭も体の調子も直ぐに平静に戻った。健一は鞄を引き寄せ、書類を取り出して今日の要点をメモり、無論、名刺の整理も忘れなかった。
一段落してベッドに潜り込みテレビを点けた。チャンネルを変えてみたが、面白い番組は無かった。もともとチャンネルの数が少ない。健一はペラペラと週刊誌のページを捲ったが、それにも直ぐに飽きて枕灯を消した。
明日のスケジュールは仕事ではない。本来なら今頃は京都に帰っている筈のところだが、明日は斉木麗奈と逢う。彼女が徳島を案内してくれることになっている。麗奈は、ひょっとすれば、健一が結婚する可能性があったかも知れない相手である。最近はメールのやり取りも二、三か月に一、二度くらいしか交わし合わない関係であるが、出張にかこつけて「逢いたい」と連絡すると、周辺のガイドまで引き受けてくれた。明日の朝、迎えに来てくれる。
一年半ぶりになるのか・・・麗奈に逢うのは・・・
健一の胸に彼女と過ごした日々のことが沸々と蘇えった。
配属されて初めて健一の眼の前に立った時のキュートな容姿、腕も脚も伸び伸びしていた。
あのよく動く黒く大きな瞳を前にすると、酒を飲んでも食事をしても、コンサートに出かけても、何をしても、心が弾んだ。
初めて抱き合った時も、決して巧緻ではなかったが情熱的に積極的に受け容れてくれた。最後の抱擁と交わりは二人して燃えに燃えた。
一年半ぶりの再会・・・
健一の胸にはときめくものが有る、有って良いのだ・・・当然なのだ・・・
健一は麗奈との記憶を手繰りながらゆっくりと眠りに落ちて行った。
健一は麗奈に電話して、「逢いたい、是非逢いたい」と強く迫った。
麗奈は健一が思ったほどには拘らずに気安く承諾した。
「解かった。序に徳島を案内してもあげるわ」
健一は水曜日の夜に高松に入り前泊して木曜の朝から活動を開始した。工業高校の機械科、電気科、化学科を中心に農業高校や普通高校の就職志望者を募って自社への推薦をお願いして廻る仕事である。
初日の今日は朝から高松市内を中心に活動し、その後、予讃線と土讃線を乗り継いで坂出、丸亀、多度津、善通寺と熟して、琴平の高校での面談を終えた時にはもう夕方五時を半ばほど過ぎていた。JRの便は一時間に一、二本しか無く、健一は時刻が上手く合う時には列車を利用し、駄目な場合はタクシーを駆使して、何とか予定の学校訪問を無事終了した。
学校での面談中は、タクシーはいつも待たせておいたので、時間を効率的に使うには好都合ではあった。
駅前の旅館斡旋所で紹介されたホテルは夕食と朝食付きで駅から五分程の近距離だった。ホテルでシャワーを浴び麦酒を一本飲んで夕食を済ませた健一は、部屋へ戻って今日の仕事の整理と纏めに取り掛かった。面談した進路指導部の先生方は何方も前年と変わりは無く、初めて一人で面談したにしては成果の在る内容だった、と一息吐ける状態だった。世の中に名の通った大企業と毎年生徒を紹介してくれている学校との関係であれば、それは普通のことだったのかも知れないが、それでも健一としてはホッと胸を撫で下ろせるものが有った。今日頂いた名刺に年月日と時間を記入し、学校ごとの内容をメモに纏めて、翌日の徳島訪問の予定を確認し終えた時には時刻は既に十一時を回っていた。テレビで一日のニュースを観、天気予報を確認して、健一は眠りに就いた。
翌朝、九時に特急「しまんと五号、高知行き」に乗車した健一はニ十分ほどで阿波池田に到着した。此処から池田の高校を皮切りに、貞光、穴吹、鴨島と、徳島線とタクシーを乗り継いで徳島市に入り、市内の高校を幾つか回った後、牟岐線で新野、阿南を訪れた。阿南の高校を終えた時には時刻はもう五時前になっていた。時間が有れば訪ねたいと思っていた鳴門の高校へは行くことが出来ず、健一は止む無く鳴門線に乗るのを諦めて徳島駅で列車を降りた。
駅ビルに在る超高層ホテルが今夜と明晩の宿だった。麗奈との逢瀬を考えて健一がリザーブして置いた処である。
夕食には焼酎の薄いお湯割りを呑んだ。焼酎は酔いが軽い。頭も体の調子も直ぐに平静に戻った。健一は鞄を引き寄せ、書類を取り出して今日の要点をメモり、無論、名刺の整理も忘れなかった。
一段落してベッドに潜り込みテレビを点けた。チャンネルを変えてみたが、面白い番組は無かった。もともとチャンネルの数が少ない。健一はペラペラと週刊誌のページを捲ったが、それにも直ぐに飽きて枕灯を消した。
明日のスケジュールは仕事ではない。本来なら今頃は京都に帰っている筈のところだが、明日は斉木麗奈と逢う。彼女が徳島を案内してくれることになっている。麗奈は、ひょっとすれば、健一が結婚する可能性があったかも知れない相手である。最近はメールのやり取りも二、三か月に一、二度くらいしか交わし合わない関係であるが、出張にかこつけて「逢いたい」と連絡すると、周辺のガイドまで引き受けてくれた。明日の朝、迎えに来てくれる。
一年半ぶりになるのか・・・麗奈に逢うのは・・・
健一の胸に彼女と過ごした日々のことが沸々と蘇えった。
配属されて初めて健一の眼の前に立った時のキュートな容姿、腕も脚も伸び伸びしていた。
あのよく動く黒く大きな瞳を前にすると、酒を飲んでも食事をしても、コンサートに出かけても、何をしても、心が弾んだ。
初めて抱き合った時も、決して巧緻ではなかったが情熱的に積極的に受け容れてくれた。最後の抱擁と交わりは二人して燃えに燃えた。
一年半ぶりの再会・・・
健一の胸にはときめくものが有る、有って良いのだ・・・当然なのだ・・・
健一は麗奈との記憶を手繰りながらゆっくりと眠りに落ちて行った。
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