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第三話 愛の覚悟~叶わなければ死ぬって言うまでの覚悟が大事なのね~
⑨「君には純白な心と身体の侭で白無垢の花嫁衣裳を着て貰いたい」
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「何処か静かな処で晩御飯でも食べて帰らない?」
「うん、そうしよう」
御堂筋の銀杏並木には多くのカップルがそぞろ歩いていた。由美が聡に腕を絡ませ、二人は微笑み交わしながら行き交う人を縫うようにしてJR大阪駅へ歩を進めた。
二人が入ったのは駅前の和食処だった。
「汗もかいたし喉も乾いたからビールでも貰おうか?」
「うん、そうしよう」
注文を取りに来た和服の女性に聡が注文したのは季節の会席料理と瓶ビールだった。
最初に運ばれて来た食前酒で二人は先ずグラスを合わせた。
「乾杯!」
「ああ、美味しい!」
微笑み交わしながら二人の少し遅めの晩餐が始まった。
「やっぱり和食のお店は雰囲気が落ち着いていて良いわね。何だか気分が安らぐわ」
「そうだな、普段はあんまり和食の店なんか入らないものな」
出てきた料理は思いのほか豪華だった。
先付け二種はもずくとろろにいんげん豆、焼すずきのスープ寄せ。八寸はあぶりだこ梅肉あんに唐草大根、焼き黒ごま豆腐に青葉ピーマン、いか手毬寿司、オクラベーコン、しょうがのべっ甲煮とクリームチーズ、とうもろこし、枝豆と焼き穴子の煮凝り、姫アスパラ雲丹揚げ、水玉冬瓜吸い地煮。椀盛りはあられ鮑柔らか煮茶巾しんじょ、じゅん菜、梅肉、柚子。向付けは鯛のへぎ造り、コチの洗い、鮪の角造り、漬け醤油は大葉しそ、大根けん、花穂じそ、紅たで、山葵、岩茸を刺身醤油で和えたもの。
料理を半分ほど食べ終わったところで、聡が箸を置いて真顔で由美に言った。
「今年の秋と言えば君の支度が忙しいだろうから、どうだ?来年の春、桜の頃に結婚式を挙げると言うのは?」
「うん、私も決心が着いた!」
「そうか、なら、良いんだな?」
「うん。でも、真実に私で良いのね?」
「何を言っているんだ、今頃。その話は半年前に俺が君にプロポーズした時に済んでいるだろう。あの時俺は、はっきりと返事をした筈だぞ」
「そうね、ご免。余計なこと言っちゃった」
「俺たちはこれから、益々、愛を深め絆を強くしていく段階だからな、解って居るな」
「うん、解かっている」
二人は又、箸を持ち直して美味な料理に舌鼓を打った。
冷やし鉢に入った煮物は蓮根、南瓜、絹さや、舞茸、小芋味噌射込み、貝割れ大根、針茗荷、巻き海老、ひやしあんかけ、振り柚子。焼き物は賀茂茄子東寺グラタン、ペコロス、キャビア、クリームチーズ、ズッキーニ。和え物は鰻とかんぴょうの土佐酢和え、より人参、うど、白瓜、針柚子。蒸し物は岩がきの蓮蒸し、しょうがあん、結び三つ葉、白ずいき、干しこのこ。揚げ物は太刀魚難波揚げ、あまご唐揚げ、沢蟹素揚げ、小切り茄子、レモン、岩塩。酢の物はおこぜの葛たたき、三杯酢ジュレ掛け、蛇腹胡瓜、針ラディッシュ、ミニトマト、レッドオニオン、絹さや、すだち、針生姜。ご飯は鮎の笹巻寿司、有馬山椒、はじかみ、かえでの葉。止め椀は鱧湯引き、焼き麩、わかめ、湯葉豆腐の赤味噌仕立てに粉山椒。最後の水物はメロンシャーベット、オレンジ羹、小倉ソース、セルフィーユ。何とも豪華な夕餉だった。
店を出ると直ぐに由美が聡に訊いた。
「豪勢なメニューだったけど、高かったんじゃない?」
「今日は二人の愛をもう一度確認し合った日だ。これぐらいのディナーは良いだろう、俺の奢りだ」
「そう、有難う、ごちそうさま」
二人は肩を並べて駅のホームへ入って行った。
元町駅の改札口を出て自宅まで送って貰う道すがら、由美が真剣な面持ちで訊ねた。
「ねえ、私ってそんなに魅力無いの?」
「えっ?何?」
「一向に私を抱こうとしないから・・・」
「馬~鹿。何を言っているんだ、君は誰よりも魅力的だよ、俺は直ぐにでも抱きたいと思っているよ」
「なら・・・」
「でもな、君には純白な心と身体の侭で白無垢の花嫁衣裳を着て貰いたい、俺はそう思っている。それが男の矜持と言うものだ」
由美は聡の潔さが嬉しかった。
家の前で彼女は伸び上がるようにして聡の唇にチュッと自分の唇を重ね、「おやすみなさい」と手を振って玄関を入って行った。
商店街の通りには、ポツン、ポツンと灯が燈っているだけで、辺りは仄暗かった。
聡は、よしっ、という仕草をして駅の方へ踵を返した。
「うん、そうしよう」
御堂筋の銀杏並木には多くのカップルがそぞろ歩いていた。由美が聡に腕を絡ませ、二人は微笑み交わしながら行き交う人を縫うようにしてJR大阪駅へ歩を進めた。
二人が入ったのは駅前の和食処だった。
「汗もかいたし喉も乾いたからビールでも貰おうか?」
「うん、そうしよう」
注文を取りに来た和服の女性に聡が注文したのは季節の会席料理と瓶ビールだった。
最初に運ばれて来た食前酒で二人は先ずグラスを合わせた。
「乾杯!」
「ああ、美味しい!」
微笑み交わしながら二人の少し遅めの晩餐が始まった。
「やっぱり和食のお店は雰囲気が落ち着いていて良いわね。何だか気分が安らぐわ」
「そうだな、普段はあんまり和食の店なんか入らないものな」
出てきた料理は思いのほか豪華だった。
先付け二種はもずくとろろにいんげん豆、焼すずきのスープ寄せ。八寸はあぶりだこ梅肉あんに唐草大根、焼き黒ごま豆腐に青葉ピーマン、いか手毬寿司、オクラベーコン、しょうがのべっ甲煮とクリームチーズ、とうもろこし、枝豆と焼き穴子の煮凝り、姫アスパラ雲丹揚げ、水玉冬瓜吸い地煮。椀盛りはあられ鮑柔らか煮茶巾しんじょ、じゅん菜、梅肉、柚子。向付けは鯛のへぎ造り、コチの洗い、鮪の角造り、漬け醤油は大葉しそ、大根けん、花穂じそ、紅たで、山葵、岩茸を刺身醤油で和えたもの。
料理を半分ほど食べ終わったところで、聡が箸を置いて真顔で由美に言った。
「今年の秋と言えば君の支度が忙しいだろうから、どうだ?来年の春、桜の頃に結婚式を挙げると言うのは?」
「うん、私も決心が着いた!」
「そうか、なら、良いんだな?」
「うん。でも、真実に私で良いのね?」
「何を言っているんだ、今頃。その話は半年前に俺が君にプロポーズした時に済んでいるだろう。あの時俺は、はっきりと返事をした筈だぞ」
「そうね、ご免。余計なこと言っちゃった」
「俺たちはこれから、益々、愛を深め絆を強くしていく段階だからな、解って居るな」
「うん、解かっている」
二人は又、箸を持ち直して美味な料理に舌鼓を打った。
冷やし鉢に入った煮物は蓮根、南瓜、絹さや、舞茸、小芋味噌射込み、貝割れ大根、針茗荷、巻き海老、ひやしあんかけ、振り柚子。焼き物は賀茂茄子東寺グラタン、ペコロス、キャビア、クリームチーズ、ズッキーニ。和え物は鰻とかんぴょうの土佐酢和え、より人参、うど、白瓜、針柚子。蒸し物は岩がきの蓮蒸し、しょうがあん、結び三つ葉、白ずいき、干しこのこ。揚げ物は太刀魚難波揚げ、あまご唐揚げ、沢蟹素揚げ、小切り茄子、レモン、岩塩。酢の物はおこぜの葛たたき、三杯酢ジュレ掛け、蛇腹胡瓜、針ラディッシュ、ミニトマト、レッドオニオン、絹さや、すだち、針生姜。ご飯は鮎の笹巻寿司、有馬山椒、はじかみ、かえでの葉。止め椀は鱧湯引き、焼き麩、わかめ、湯葉豆腐の赤味噌仕立てに粉山椒。最後の水物はメロンシャーベット、オレンジ羹、小倉ソース、セルフィーユ。何とも豪華な夕餉だった。
店を出ると直ぐに由美が聡に訊いた。
「豪勢なメニューだったけど、高かったんじゃない?」
「今日は二人の愛をもう一度確認し合った日だ。これぐらいのディナーは良いだろう、俺の奢りだ」
「そう、有難う、ごちそうさま」
二人は肩を並べて駅のホームへ入って行った。
元町駅の改札口を出て自宅まで送って貰う道すがら、由美が真剣な面持ちで訊ねた。
「ねえ、私ってそんなに魅力無いの?」
「えっ?何?」
「一向に私を抱こうとしないから・・・」
「馬~鹿。何を言っているんだ、君は誰よりも魅力的だよ、俺は直ぐにでも抱きたいと思っているよ」
「なら・・・」
「でもな、君には純白な心と身体の侭で白無垢の花嫁衣裳を着て貰いたい、俺はそう思っている。それが男の矜持と言うものだ」
由美は聡の潔さが嬉しかった。
家の前で彼女は伸び上がるようにして聡の唇にチュッと自分の唇を重ね、「おやすみなさい」と手を振って玄関を入って行った。
商店街の通りには、ポツン、ポツンと灯が燈っているだけで、辺りは仄暗かった。
聡は、よしっ、という仕草をして駅の方へ踵を返した。
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