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第三話 運命的な出逢い
②達夫と雅美、バイクでツーリング
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今日も達夫と雅美は喫茶店を出た後、駅裏の駐輪場に戻り、達夫のオートバイに乗っかった。後ろに跨った雅美は両腕を達夫の腰に回し、太腿で達夫を挟んで上半身を軽く達夫の背中にもたせ掛けた。
「何処に行くか?」
河岸道から国道に出て、夕方のラッシュの中をゆっくり走りながら、達夫は怒鳴った。
「何処でも良いわ。何処か遠くの方へ」
「よし」
達夫は小型オートバイの速度を上げ乍ら幸福な気持になった。雅子がもう二十歳の大学生になっていることを彼は知っていた故である。達夫はひどくラッキーだと言う気分になった。二十歳を過ぎた大学生ならもう一人前だし、何をしようが二人だけの問題だと思った。今どきの若い娘は十六や十七でも結構凄い子は居るが、高校生だと聞くとやっぱり気が引ける。が、大学生なら立派な大人である。
オートバイは夕方の渋滞の中を快適にすり抜けて、インターチェンジから高速道路へ入った。速度が増すと、後ろの雅美の身体が達夫にぴったりとくっ付いて来た。
「ねえ、タツ・・・」
後ろで雅美が何か大声で叫んだ。が、風と排気音で何を言っているのか、聞き取れない。「えっ、何だ?」
達夫は叫び返しながら少し速度を落とした。だが、今度は物凄い爆音が後ろから迫って来て又しても何も聞こえない。バックミラーを見ると、達夫のとは比べものにならない大型のオートバイが三台、それほどスピードを出しているようには見えなかったが、次第に追い迫いて来た。
三台のオートバイは直ぐに達夫たちと並んだ。
ヘルメットと防風眼鏡で顔が完全に隠れているので、どんな連中なのか良く解らないが、達夫たちのオートバイの後になり先になりしながら頻りに大声で野卑な言葉を浴びせかけて来た。出来ることなら速度を上げて振り切ってしまいたいが、到底振り切れる相手ではない。仕方なく、達夫はむしろ速度を下げ加減にしてそのまま雁行していると、そのうち、揶揄うのにも飽きたのか、相手はいきなり速度を上げ、次々と達夫のオートバイをすれすれに掠めるようにして瞬く間に遠ざかって行った。
「嫌な人たちね!」
後ろで雅美が叫んだ。
「さっき、何て言ったんだ?」
達夫が聞き取り易いように速度を下げたまま怒鳴った。
「えっ?」
「さっき、奴らが来る前に何か言いかけただろう?」
「ああ、あれ。何か凄く良い感じでさぁ、このまま一晩中走っていたい、って言ったのよ」
雅美にそう言われると、達夫も肝心な処へ持って行く段取りなど忘れて、自分も一晩中走り続けて居たい気持になった。
「よし、このまま、大阪まで行っちゃおうか」
達夫はそう叫びながら速度を上げた。
後ろで雅美がまた何か叫んだ。
「えっ?何だ?」
「何でもない。さっきの奴ら、ほんとうに嫌な奴らだ、って言っただけ」
「気にするな。焼き餅を妬いていただけさ」
そう怒鳴り返した時、一瞬、訳の解らない不安が達夫の胸を掠めた。が、快調に響き続ける排気音のリズムが直ぐに不安を打ち消し、達夫はスロットルを一杯に挙げて、そのリズムを更に高めて行った。
二人は次のサービスエリアで車を停めた。駐車場へ入って行く時、向う側の端に先程の三人組らしい姿が見えたが、達夫たちがオートバイのエンジンを切らない内に、居丈高な爆音を轟かせて走り出して行った。二人はレストランへ入り、軽い夕食を食べた。テレビではお笑いタレントが面白くもない突っ込みを入れて喋べくっていた。スパゲティとカレーライスを食べながら達夫が言った。
「なあマミ、此のまま行けるところまで走って、その先で泊まろうか?」
「うん。一晩泊まるくらいのお金なら私、持っているわよ」
雅美が軽く応じた。
食事が終わってから達夫は手洗いに立ち、自販機でコンドームを買った。
「何処に行くか?」
河岸道から国道に出て、夕方のラッシュの中をゆっくり走りながら、達夫は怒鳴った。
「何処でも良いわ。何処か遠くの方へ」
「よし」
達夫は小型オートバイの速度を上げ乍ら幸福な気持になった。雅子がもう二十歳の大学生になっていることを彼は知っていた故である。達夫はひどくラッキーだと言う気分になった。二十歳を過ぎた大学生ならもう一人前だし、何をしようが二人だけの問題だと思った。今どきの若い娘は十六や十七でも結構凄い子は居るが、高校生だと聞くとやっぱり気が引ける。が、大学生なら立派な大人である。
オートバイは夕方の渋滞の中を快適にすり抜けて、インターチェンジから高速道路へ入った。速度が増すと、後ろの雅美の身体が達夫にぴったりとくっ付いて来た。
「ねえ、タツ・・・」
後ろで雅美が何か大声で叫んだ。が、風と排気音で何を言っているのか、聞き取れない。「えっ、何だ?」
達夫は叫び返しながら少し速度を落とした。だが、今度は物凄い爆音が後ろから迫って来て又しても何も聞こえない。バックミラーを見ると、達夫のとは比べものにならない大型のオートバイが三台、それほどスピードを出しているようには見えなかったが、次第に追い迫いて来た。
三台のオートバイは直ぐに達夫たちと並んだ。
ヘルメットと防風眼鏡で顔が完全に隠れているので、どんな連中なのか良く解らないが、達夫たちのオートバイの後になり先になりしながら頻りに大声で野卑な言葉を浴びせかけて来た。出来ることなら速度を上げて振り切ってしまいたいが、到底振り切れる相手ではない。仕方なく、達夫はむしろ速度を下げ加減にしてそのまま雁行していると、そのうち、揶揄うのにも飽きたのか、相手はいきなり速度を上げ、次々と達夫のオートバイをすれすれに掠めるようにして瞬く間に遠ざかって行った。
「嫌な人たちね!」
後ろで雅美が叫んだ。
「さっき、何て言ったんだ?」
達夫が聞き取り易いように速度を下げたまま怒鳴った。
「えっ?」
「さっき、奴らが来る前に何か言いかけただろう?」
「ああ、あれ。何か凄く良い感じでさぁ、このまま一晩中走っていたい、って言ったのよ」
雅美にそう言われると、達夫も肝心な処へ持って行く段取りなど忘れて、自分も一晩中走り続けて居たい気持になった。
「よし、このまま、大阪まで行っちゃおうか」
達夫はそう叫びながら速度を上げた。
後ろで雅美がまた何か叫んだ。
「えっ?何だ?」
「何でもない。さっきの奴ら、ほんとうに嫌な奴らだ、って言っただけ」
「気にするな。焼き餅を妬いていただけさ」
そう怒鳴り返した時、一瞬、訳の解らない不安が達夫の胸を掠めた。が、快調に響き続ける排気音のリズムが直ぐに不安を打ち消し、達夫はスロットルを一杯に挙げて、そのリズムを更に高めて行った。
二人は次のサービスエリアで車を停めた。駐車場へ入って行く時、向う側の端に先程の三人組らしい姿が見えたが、達夫たちがオートバイのエンジンを切らない内に、居丈高な爆音を轟かせて走り出して行った。二人はレストランへ入り、軽い夕食を食べた。テレビではお笑いタレントが面白くもない突っ込みを入れて喋べくっていた。スパゲティとカレーライスを食べながら達夫が言った。
「なあマミ、此のまま行けるところまで走って、その先で泊まろうか?」
「うん。一晩泊まるくらいのお金なら私、持っているわよ」
雅美が軽く応じた。
食事が終わってから達夫は手洗いに立ち、自販機でコンドームを買った。
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