大人への門

相良武有

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第二話 真夏の夢幻し

④麻衣と慎一の出逢い

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 三日目の午後、室内プールで麻衣が気持ち良さそうに泳いでいた。
プールサイドには海へ向かって大きく張り出したテラスが在った。其処には日除けのパラソルが幾つか並び、テーブルも設えられてスナックになっていた。
暫くして、麻衣が水着のままそのスナックに近付いて行った。彼女は紺のワンピースの水着を着用していたが、布地が薄く、体にぴったりくっ付いて体型が明からさまだった。麻衣のプロポーションは日本人離れしていた。腕や脚は長くてほっそりしているのに、バストとヒップは豊かに張っていて、服を着ている時よりも肉感的に見えた。
麻衣がふと見ると、テラスとは反対のプールサイドのデッキチェアに慎一が寝そべって居た。日光浴をしているらしかったが、その視線は水着一枚の麻衣に吸い付いていた。麻衣がじっと見遣ると彼は慌てて海の方へ顔を背けたが、如何にもわざとらしかった。
ひょっとして、彼はプールで泳いでいる私を眺める為に、あそこへ来たのではないかしら・・・可愛いじゃないの・・・
麻衣がそう思うほど慎一の眼は露骨にギラギラしていた。
「僕、気が小さくて人見知りするので、ダイニングルームへ出て食事をするのが恥ずかしいんです」
「えっ?」
「だから、いつも自分の部屋へ運んでもらって居るんです」
「そうなの・・・でも、一人切りの食事はやっぱり淋しいでしょう?」
「ええ、まあ・・・」
「良いわ、今夜から私と一緒に食べましょう、食事に行く前に声を懸けてあげるから、ね」
「えっ、良いの?真実に?」
慎一は毎日太陽に当たっている所為か、よく陽に焼けて逞しくなっていた。水着の上に白いタオル地のワンピースを羽織った麻衣と、海水パンツにシャツを引掛けた慎一は肩を並べて歩き出し、愉し気に話を続けた。慎一の表情が嬉々として明るくなった。ホテルへ来た当座の落ち着きの無さは丸で嘘のように消え失せていた。
 麻衣が部屋へ戻ると直ぐに忍がやって来た。
「大学に落ちてノイローゼになっている男の子が居るんだって?」
誰から聞いたのか、忍は面白そうに言った。
「世の中、いろんな人が居るのね」
夜になって忍が夕食のダイニングルームへ降りて行くと、テーブルについているのは麻衣一人ではなかった。向かい合わせに慎一が座っていた。二人は親し気に、愉し気に話し合っていた。声を懸けそびれた忍が暫し眺めていると、食事を終えた二人は揃ってエレベーターの方へ去って行った。
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