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第二話 真夏の夢幻し
③女子大生、麻衣と忍
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お盆の一週間ほど前になって、二人の若い女性がホテル「プチ・フルール」のフロントの前に立った。倉木麻衣と結城忍と名乗る二十二歳の大学生だったが、二人ともすらりとした美形だった。
「明るくて、思ったより広い感じね」
「うん、建物の色彩も雰囲気も伸びやかね」
麻衣と忍は高校の体操部で知り合い仲良くなって、卒業後も何かと親密に付き合って来た。通った大学は違っていたが、その親交は既に七年に及んでいる。
性格は麻衣の方が明るく積極的で、忍は麻衣に比べると慎重で控えめな面が在った。
二人とも早くから異性には良くモテた。大きな良く動く黒い瞳の麻衣と切れ長の涼やかな眼の忍が、体操の選手を目指したほどの均整の取れた肢体で、長い髪を風に靡かせて闊歩する姿は男性の視線を釘付けにした。二十二歳になった二人には今や大人の艶までがその肢体に匂っていた。
二人が導かれた部屋は、麻衣が二一六号室で忍は二一七号室だった。麻衣は池田慎一の隣室で、その隣が忍の部屋だった。
夜になって麻衣と忍はダイニングルームで夕食を執った後、サロンへ移って食後の酒を愉しんだ。
「ねえ、バーへ行ってもう少しブランディでも呑もうよ」
「そうね、それも良いわね」
暫くすると、かなり酔いの回った顔で麻衣が忍を眺めていた。
「あなた、少し飲み過ぎじゃない?」
麻衣がブランディのお代わりをするのを見て、忍が窘めた。
「明日、苦しい思いをするわよ」
「宿酔いなんてしょっちゅう経験しているわ」
麻衣は淡いピンクとグレーの入り混じったワンピースの肩を聳やかした。
「あたし、もう二十二歳よ、子供扱いしないで」
そのことは無論、忍も同じだった。彼女も飲物のお代わりをバーテンダーに頼んだ。
「何なの?それ・・・」
麻衣が忍の手にしている、運ばれて来たグラスの中身を訊ねた。
「ブランディマリーのウォッカ抜きよ」
「それって、トマトジュースじゃないの?」
麻衣は下を向いて笑い出した。
彼女のブランディを口に運ぶテンポが遅くなって来た。
さり気なく、忍が麻衣の手を取って立たせた。
「さあ、今夜はもうお休み。明日また楽しくやろうよ、ね」
麻衣は素直に歩き出したが、足元がよろめいていた。忍は彼女を支えて部屋まで連れて行った。
「明るくて、思ったより広い感じね」
「うん、建物の色彩も雰囲気も伸びやかね」
麻衣と忍は高校の体操部で知り合い仲良くなって、卒業後も何かと親密に付き合って来た。通った大学は違っていたが、その親交は既に七年に及んでいる。
性格は麻衣の方が明るく積極的で、忍は麻衣に比べると慎重で控えめな面が在った。
二人とも早くから異性には良くモテた。大きな良く動く黒い瞳の麻衣と切れ長の涼やかな眼の忍が、体操の選手を目指したほどの均整の取れた肢体で、長い髪を風に靡かせて闊歩する姿は男性の視線を釘付けにした。二十二歳になった二人には今や大人の艶までがその肢体に匂っていた。
二人が導かれた部屋は、麻衣が二一六号室で忍は二一七号室だった。麻衣は池田慎一の隣室で、その隣が忍の部屋だった。
夜になって麻衣と忍はダイニングルームで夕食を執った後、サロンへ移って食後の酒を愉しんだ。
「ねえ、バーへ行ってもう少しブランディでも呑もうよ」
「そうね、それも良いわね」
暫くすると、かなり酔いの回った顔で麻衣が忍を眺めていた。
「あなた、少し飲み過ぎじゃない?」
麻衣がブランディのお代わりをするのを見て、忍が窘めた。
「明日、苦しい思いをするわよ」
「宿酔いなんてしょっちゅう経験しているわ」
麻衣は淡いピンクとグレーの入り混じったワンピースの肩を聳やかした。
「あたし、もう二十二歳よ、子供扱いしないで」
そのことは無論、忍も同じだった。彼女も飲物のお代わりをバーテンダーに頼んだ。
「何なの?それ・・・」
麻衣が忍の手にしている、運ばれて来たグラスの中身を訊ねた。
「ブランディマリーのウォッカ抜きよ」
「それって、トマトジュースじゃないの?」
麻衣は下を向いて笑い出した。
彼女のブランディを口に運ぶテンポが遅くなって来た。
さり気なく、忍が麻衣の手を取って立たせた。
「さあ、今夜はもうお休み。明日また楽しくやろうよ、ね」
麻衣は素直に歩き出したが、足元がよろめいていた。忍は彼女を支えて部屋まで連れて行った。
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