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第10話 思春期
①香織、その膨らみ始めた胸を喧嘩大将に触られる
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あれは小学校五年生の夏休み前だった。
クラスの木村香織と言う大柄な女の子がその膨らみ始めた胸を喧嘩大将の金田に触られた。
「何するのよ!」
彼女は金田に食って掛かって行ったが、彼はへらへらと嘲笑って他の仲間達とより一層囃し立てた。それにカッと腹を立てた香織は、いきなり、自分よりも遥かに躰の大きな金田に掴み掛かって行った。同級生達は男の子も女の子も、相手がガキ大将の悪学童だったので、見て見ぬ振りで素知らぬ顔をしていた。
聡亮はそんなクラスメイトに訳の解らぬ怒りを覚え、香織と同じように自分も恥ずかしめられたように感じて、大きな声で怒鳴った。
「金田、謝れよ!原口に謝れよ!」
振り返って聡亮を見た金田がうすッと嗤った。
「関係無ぇだろう、お前には!黙って引っ込んでいろよ、な」
「木村の胸を触ったのはお前個人のセクハラだが、黙って見過ごせばクラス全体の問題になる。さあ、木村に早く謝れよ。謝れ!金田!」
「何だと、この野郎!やるのか!」
金田が殴り掛かって来た。机や椅子が乱れ、男の子が騒ぎ、女の子が叫喚した。金田は聡亮が所詮敵う相手ではなかった。聡亮は相手にボコボコに殴られ、押し倒されて机や椅子の脚で顔面を強打し鼻から血が流れ出た。
クラスメイト達が、男の子も女の子も、強い眼差しで詰め寄るように金田をぞろぞろと取り囲んだ。
「なんだよ、お前ら!・・・退けよ!」
金田は皆を押し退けるようにして独り教室を出て行った。
起ち上った聡亮がグズグズする鼻を手で擦ると甲に赤い血が着いた。香織がすっとポケットからティッシュを取り出して聡亮の前に突き出した。上目遣いに彼女を見た聡亮は小さな声で「サンキュウ」と言ってそれを受け取った。
「秀才の斎藤君があんなことをするなんて、私、吃驚しちゃった」
「そうね、あの人にあんな勇気が在ったなんて、真実に驚きだわ」
「彼奴もなかなかやるじゃないか、良い根性して居るよ、全く」
「頭が良いだけじゃなくて、ハートも熱いのかな?」
女の子達が痺れ、男の子達が目を見張った。
聡亮は、もともと、勉強がとても良く出来ると言うことで一目置かれていたが、この件で彼はクラスのスターになった。
香織は眼のくるりと大きい色白の可愛い貌で、勉強も良く出来た。先生の質問にはいつもテキパキと明確に答えたし、とりわけ、彼女の得意な科目は図工と音楽だった。香織が描いた絵はいつも学校や地域の絵画展に入選したし、唄は誰もが驚くほどに上手かった。そして、彼女の身に着けている服装はクラスのどの子のものよりも洒落ていた。聡亮にはそう見えた。聡亮と香織は急速に仲良くなって行った。
クラスの木村香織と言う大柄な女の子がその膨らみ始めた胸を喧嘩大将の金田に触られた。
「何するのよ!」
彼女は金田に食って掛かって行ったが、彼はへらへらと嘲笑って他の仲間達とより一層囃し立てた。それにカッと腹を立てた香織は、いきなり、自分よりも遥かに躰の大きな金田に掴み掛かって行った。同級生達は男の子も女の子も、相手がガキ大将の悪学童だったので、見て見ぬ振りで素知らぬ顔をしていた。
聡亮はそんなクラスメイトに訳の解らぬ怒りを覚え、香織と同じように自分も恥ずかしめられたように感じて、大きな声で怒鳴った。
「金田、謝れよ!原口に謝れよ!」
振り返って聡亮を見た金田がうすッと嗤った。
「関係無ぇだろう、お前には!黙って引っ込んでいろよ、な」
「木村の胸を触ったのはお前個人のセクハラだが、黙って見過ごせばクラス全体の問題になる。さあ、木村に早く謝れよ。謝れ!金田!」
「何だと、この野郎!やるのか!」
金田が殴り掛かって来た。机や椅子が乱れ、男の子が騒ぎ、女の子が叫喚した。金田は聡亮が所詮敵う相手ではなかった。聡亮は相手にボコボコに殴られ、押し倒されて机や椅子の脚で顔面を強打し鼻から血が流れ出た。
クラスメイト達が、男の子も女の子も、強い眼差しで詰め寄るように金田をぞろぞろと取り囲んだ。
「なんだよ、お前ら!・・・退けよ!」
金田は皆を押し退けるようにして独り教室を出て行った。
起ち上った聡亮がグズグズする鼻を手で擦ると甲に赤い血が着いた。香織がすっとポケットからティッシュを取り出して聡亮の前に突き出した。上目遣いに彼女を見た聡亮は小さな声で「サンキュウ」と言ってそれを受け取った。
「秀才の斎藤君があんなことをするなんて、私、吃驚しちゃった」
「そうね、あの人にあんな勇気が在ったなんて、真実に驚きだわ」
「彼奴もなかなかやるじゃないか、良い根性して居るよ、全く」
「頭が良いだけじゃなくて、ハートも熱いのかな?」
女の子達が痺れ、男の子達が目を見張った。
聡亮は、もともと、勉強がとても良く出来ると言うことで一目置かれていたが、この件で彼はクラスのスターになった。
香織は眼のくるりと大きい色白の可愛い貌で、勉強も良く出来た。先生の質問にはいつもテキパキと明確に答えたし、とりわけ、彼女の得意な科目は図工と音楽だった。香織が描いた絵はいつも学校や地域の絵画展に入選したし、唄は誰もが驚くほどに上手かった。そして、彼女の身に着けている服装はクラスのどの子のものよりも洒落ていた。聡亮にはそう見えた。聡亮と香織は急速に仲良くなって行った。
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