詩集「支離滅裂」

相良武有

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第三章 二十二歳の詩集

62 変質者

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 平和でのんびりした毎日が続くと

 少年はいらいらし出す

 そして少年は

 何かを捜して電車に乗り込む

 それも

 通勤時のぎっしり満員の電車に・・・

 ガラッと空いた平時の電車は

 ただ退屈だけが充満していて

 即日常生活であるから


 すし詰めの通勤電車の中で

 ピチピチとはち切れんばかりの

 青春そのものの娘を見つけると

 ポケットに突込まれた少年の右手の指間には

 鋭利な三枚のカミソリ刃が挟まれる

 その時少年は

 これから一つの行為をやるんだという

 その緊張感で引締まっている

 少年の中には

 もはや日常生活の退屈感や鬱積感は無く

 少年は完全に充実して

 カット熱くなっている


 ドアが開いて降車の一瞬

 少年の右手が娘の豊かな胸を一撫ですると

 ブラウスとブラジャーの裂け目から

 盛り上がった純白の乳房が露わになる

 刹那

 その膨れた白い乳房が

 三筋の鮮血で朱に染まる時

 少年は

 ああ、少年は

 ゾクゾクしている

 少年は完全に充足して

 少年自身の中に確実に存在している

 自己不存在と言う固定観念の苦しみから

 間違い無く真実に解放されている

 神の眼を掠めて自己の存在感を確かめたことで

 少年はこの上なく満ち足りている


 女性の敵!

 変態!

 変質者!

 乳切り魔!

 これは少年に対する最高の賛辞

 少年は叫ぶ

  馬鹿野郎!何とでも言え!

  てめえ達は何時もそうやって

  側でぎゃぁぎゃぁ言ってるだけで

  自分一人じゃ何一つ出来ゃしないんだ

  そのくせ何時何処ででも

  自分自身の真正な存在を

  違和感無しに真実に信じることが出来なくて

  常に欲求不満と渇望に苛まれているんだ

  大体、この現実世界では

  自分の意思で

  自分の手で

  自分のプランに従って

  何かをやって何かが終わるようにしなければ

  本当の始まりも無ければ

  本当の終わりも来ないんだ

  てめえ達は何もせずに唯じいっと見てるだけ

  決して飛ばない傍観者なんだ

  自分自身をじいっと見ている他人なんだ

  自分自身の不存在を実感するのを恐れている

  卑怯で臆病な薄汚い豚どもだ・・・

  

 

 

 
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