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14話 復讐への一歩
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お姉ちゃんが死んだ。行方不明となった二日後、川の下流で見つかった。
当初警察は事件ではなく事故か自殺の線で捜査を始めた。橋に設置してある監視カメラに橋の欄干から身を乗り出す姉の姿が写っていた。
直前にやや不可解な行動が見られた為、司法解剖が行われた。薬物使用などはなかったが、頭部に打撲痕と脳内血管の損傷が見られたとの事だった。だが直接の死亡原因ではなく、川に落ちた時の怪我とみなされた。
学校側も調査を行い、いじめやその他自殺の原因がなかったかを調べた。両親も学校に何度か呼ばれていた。しかし自殺に結びつくようなもの何もなかった。
そして警察は姉は橋から誤って転落。事故死という結論を出した。
私はお姉ちゃんが大好きだった。小さい頃は姉の手を片時も離さなかったらしい。
いつも優しく、喧嘩した事など一度もなかった。穏やかでおとなしい性格だったけど、私がいじめられた時には男子相手でも容赦なく立ち向かっていってくれた。
私にとって愛伊香お姉ちゃんは誰よりも大切な人だった。
私は姉の部屋のドアを開けた。ついこの前までノックもしないで開けると「祐加理~ノックしなきゃダメだよ~」と頬を膨らませてかわいく怒っていたお姉ちゃん。その姿を思い浮かべてまた涙が出てくる。
中に入ると主を失った部屋はシーンと静まり返っていた。私は部屋を見渡した。ベッドには二人で必死になって取ったクレーンゲームのぬいぐるみ。机の上にあった宝箱には沖縄の海で拾った綺麗な貝殻。私が小学生の頃に送ったバースデーカード。
「まだ持っててくれてたんだ……」
部屋の中にはお姉ちゃんのぬくもりが溢れている。
お姉ちゃんと呼べば「どうしたの? 祐加理」とすぐ聞こえてきそうだった。
机の引き出しを開けると、中には桜の押し花で作られた栞があった。
姉は桜が好きで毎年のように押し花の栞を作っていた。小さい頃はよく二人で飛んできた花びらをキャッチして遊んでいた。
姉が最後にいた場所。あの橋の上から見える満開の桜並木を、いつも目を輝かせて見ていた。
また一緒に見たかったな……そう呟き私は栞を手に取った。
姉を失った両親はひどく憔悴した。それまで厳しくも朗らかな人だった父は、すっかり魂を抜かれたかのように覇気がなくなった。母は夜中、姉の部屋で一人泣いていることもあった。次第に、家族の会話は無くなり家の中は静まり返っていた。
翌年の姉の命日、両親は離婚を決めた。私が高校受験を控えていたこともあり、中学卒業までは離婚せず現状維持となった。
離婚後、私は母の方に引きとられると決まっていた為、母の実家がある隣の県の高校を受験した。
そして桜咲き誇る四月。私は海蘭高校の門をくぐる。
当初警察は事件ではなく事故か自殺の線で捜査を始めた。橋に設置してある監視カメラに橋の欄干から身を乗り出す姉の姿が写っていた。
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そして警察は姉は橋から誤って転落。事故死という結論を出した。
私はお姉ちゃんが大好きだった。小さい頃は姉の手を片時も離さなかったらしい。
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私にとって愛伊香お姉ちゃんは誰よりも大切な人だった。
私は姉の部屋のドアを開けた。ついこの前までノックもしないで開けると「祐加理~ノックしなきゃダメだよ~」と頬を膨らませてかわいく怒っていたお姉ちゃん。その姿を思い浮かべてまた涙が出てくる。
中に入ると主を失った部屋はシーンと静まり返っていた。私は部屋を見渡した。ベッドには二人で必死になって取ったクレーンゲームのぬいぐるみ。机の上にあった宝箱には沖縄の海で拾った綺麗な貝殻。私が小学生の頃に送ったバースデーカード。
「まだ持っててくれてたんだ……」
部屋の中にはお姉ちゃんのぬくもりが溢れている。
お姉ちゃんと呼べば「どうしたの? 祐加理」とすぐ聞こえてきそうだった。
机の引き出しを開けると、中には桜の押し花で作られた栞があった。
姉は桜が好きで毎年のように押し花の栞を作っていた。小さい頃はよく二人で飛んできた花びらをキャッチして遊んでいた。
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また一緒に見たかったな……そう呟き私は栞を手に取った。
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