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8話 JK界隈の噂話
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彼女がキャハハと楽しそうに語った話は概ねこうだ。
その学校では何人かの女子生徒が放課後、音楽室へと呼び出されていた。
音楽教師はすらりとしたイケメンで女子人気も高かった。
呼び出される生徒はギャル系ではなくおとなしめの可愛らしいタイプの女子。
個別指導とは所謂エッチなことを手取り足取り教えてくれる。なぜか最後の部分を春香ちゃんはやたらと強調していた。
「でもね~個別指導受けてたって子が自殺しちゃったらしいんだ……」
それまで楽しげに話していた彼女のトーンが少し落ちた。
自殺という言葉を聞いて私も少し目を伏せた。話を黙って聞いてた他の二人もいつしか険しい顔になっていた。
「それは本当の話? 事実だったらニュースとかになってそうなんだけど」
少し悲しげな表情を浮かべた春香ちゃんに私は尋ねた。
「なんかね、どっかから飛び降りちゃったんだって。学校とか警察も一応捜査したけど、いじめとかもなくて結局事故って事になったみたい。でも生徒の間ではその女の子と先生が付き合ってたって噂があって、それで本当は自殺したんじゃないかって」
「付き合ってたのが本当なら、その先生がなんかやらかしたって事でしょ?」
いつもの気怠そうな感じは消え去り、真面目な顔で大道寺さんが聞いた。
「ん~、あーしもそこまで詳しくはわからないけど――」
ぶらぶらと両足を揺らしながら彼女はスマホを覗いた。
「やばっ時間過ぎてるしっ! ちょっと行ってくるー」
いってら~と、友達二人に見送られ彼女はパタパタと足音を響かせ教室を出て行った。そこで私は一つ聞き忘れていたことをハッと思い出した。
「そういえばさっきの話ってどこの高校とかって聞いた?」
氷の令嬢が静かに私を見つめ答えた。
「隣の県の椿川高校らしいですわ」
それは修哉がこの学校に来る前にいた高校だった。
職員室へと戻ると共有スペースでなにやら作業している島田先生の姿があった。
長机をくっつけそこに写真がでかでかと載った図鑑を何冊も並べている。
あんなテスト問題の作り方ってある? と私はまたちょっとイラッとした。
う~んと唸り声をあげる彼を無視して私は自分のデスクのパソコンを起動した。
学校支給のパソコンは古く、起動に時間がかかる。
来る途中で買ったコンビニのおにぎりを食べながら立ち上がるのを待った。
まず私が検索したのは椿川高校のホームページ。そのページへ飛ぶと校舎の写真がまず目に入る。流石は私立高校、うちとは違って豪華絢爛な佇まいである。
その写真の下には「純真 博愛 親和」の校訓が書いてあった。
ふんっと私は鼻を鳴らしマウスをカチカチと動かす。
わかってはいたが生徒の自殺に関する情報などは一切なかった。
教師一覧などもなく、唯一女性校長の笑顔の写真だけが載っている。
学校行事やクラブ活動の紹介ページを見ていた時、ふと一枚の写真に目が止まった。それはテニス部の活動記録のようで生徒と一緒に顧問の教師が写っていた。
――これってもしかして怜子じゃない?
少し雰囲気が変わっていたがその顔は確かに見覚えがあった。同じ大学のテニスサークルで一緒だった松下怜子《まつしたれいこ》だ。
学部が違ったのでサークルを辞めてからはあまり会う機会もなかったが、そういえば彼女からも結婚式の招待状が届いていた。こいつも駆け込み組だったなと、本日何度目かの舌打ちをした。
連絡先あったっけ、とスマホの連絡帳をスクロールしていると突然後ろから声を掛けられた。
「なんか調べものでもしてるの?」
背後に立つその声の主は高橋修哉だった。
その学校では何人かの女子生徒が放課後、音楽室へと呼び出されていた。
音楽教師はすらりとしたイケメンで女子人気も高かった。
呼び出される生徒はギャル系ではなくおとなしめの可愛らしいタイプの女子。
個別指導とは所謂エッチなことを手取り足取り教えてくれる。なぜか最後の部分を春香ちゃんはやたらと強調していた。
「でもね~個別指導受けてたって子が自殺しちゃったらしいんだ……」
それまで楽しげに話していた彼女のトーンが少し落ちた。
自殺という言葉を聞いて私も少し目を伏せた。話を黙って聞いてた他の二人もいつしか険しい顔になっていた。
「それは本当の話? 事実だったらニュースとかになってそうなんだけど」
少し悲しげな表情を浮かべた春香ちゃんに私は尋ねた。
「なんかね、どっかから飛び降りちゃったんだって。学校とか警察も一応捜査したけど、いじめとかもなくて結局事故って事になったみたい。でも生徒の間ではその女の子と先生が付き合ってたって噂があって、それで本当は自殺したんじゃないかって」
「付き合ってたのが本当なら、その先生がなんかやらかしたって事でしょ?」
いつもの気怠そうな感じは消え去り、真面目な顔で大道寺さんが聞いた。
「ん~、あーしもそこまで詳しくはわからないけど――」
ぶらぶらと両足を揺らしながら彼女はスマホを覗いた。
「やばっ時間過ぎてるしっ! ちょっと行ってくるー」
いってら~と、友達二人に見送られ彼女はパタパタと足音を響かせ教室を出て行った。そこで私は一つ聞き忘れていたことをハッと思い出した。
「そういえばさっきの話ってどこの高校とかって聞いた?」
氷の令嬢が静かに私を見つめ答えた。
「隣の県の椿川高校らしいですわ」
それは修哉がこの学校に来る前にいた高校だった。
職員室へと戻ると共有スペースでなにやら作業している島田先生の姿があった。
長机をくっつけそこに写真がでかでかと載った図鑑を何冊も並べている。
あんなテスト問題の作り方ってある? と私はまたちょっとイラッとした。
う~んと唸り声をあげる彼を無視して私は自分のデスクのパソコンを起動した。
学校支給のパソコンは古く、起動に時間がかかる。
来る途中で買ったコンビニのおにぎりを食べながら立ち上がるのを待った。
まず私が検索したのは椿川高校のホームページ。そのページへ飛ぶと校舎の写真がまず目に入る。流石は私立高校、うちとは違って豪華絢爛な佇まいである。
その写真の下には「純真 博愛 親和」の校訓が書いてあった。
ふんっと私は鼻を鳴らしマウスをカチカチと動かす。
わかってはいたが生徒の自殺に関する情報などは一切なかった。
教師一覧などもなく、唯一女性校長の笑顔の写真だけが載っている。
学校行事やクラブ活動の紹介ページを見ていた時、ふと一枚の写真に目が止まった。それはテニス部の活動記録のようで生徒と一緒に顧問の教師が写っていた。
――これってもしかして怜子じゃない?
少し雰囲気が変わっていたがその顔は確かに見覚えがあった。同じ大学のテニスサークルで一緒だった松下怜子《まつしたれいこ》だ。
学部が違ったのでサークルを辞めてからはあまり会う機会もなかったが、そういえば彼女からも結婚式の招待状が届いていた。こいつも駆け込み組だったなと、本日何度目かの舌打ちをした。
連絡先あったっけ、とスマホの連絡帳をスクロールしていると突然後ろから声を掛けられた。
「なんか調べものでもしてるの?」
背後に立つその声の主は高橋修哉だった。
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