アラフォーパパはアキレス腱を切って、なぜか異世界に飛ばされました

oufa

文字の大きさ
上 下
9 / 11

第9話 魔王への扉

しおりを挟む

 おれは天の声とのやり取りをアレックスに聞かせた。どうやら彼も初めて聞いた話らしくかなり驚いていた。

「まさかそんなまじないがあったとは……テルマは知ってたか?」

「ううん。そんなの文献でも読んだことなかったよ」

 その横にいたマリアさんも首を横に振っていた。

「まあなんにせよ、おまえ達を連れて来てよかったな。じゃあ破邪の豆はカッシーに渡しておくぞ」

 アレックスがおれに豆の入った袋を渡してきた。

「重っ!」

 あまりにずっしとしたその重さに、おれは危うく落としそうになってしまった。
触ってみると、どうやら本当に金でできてるようだった。二、三粒くらいならポッケにしまってもバレないんじゃないか?
おれは豆を掴んでそっとポッケに忍ばせた。

「パーパ!」

 咲耶が指を立てながらチッチッチと左右に振った。

「はい。すみません……」

 おれは袋の紐をキュッと縛り腰にぶら提げた。鎧着て、刀持って、お腰に袋ぶら提げて……気分はすっかり桃太郎だ。うちのお供の猿キジ犬は恐ろしく強いけど。


 

 まさにおれが言った通り、魔王城の中でも勇者パーティーの戦いぶりは凄かった。
もちろん咲耶も。

 多少おれも貢献してはいたが、相変わらず信長が出てきてくれない。はたして本当に信長なのか? 信長の刀に森蘭丸とかが入ってたんじゃないのか?

 
 そんな事を考えているうちに、気付けば魔王の部屋の前へとたどり着いていた。
重厚な扉の向こうには魔王が待ち受けている。
アレックス達も緊張しているのか、空気がピンと張り詰めていた。

「いよいよ魔王との戦いだ。テルマ、マリア。たぶんこれが最後の戦いになる。今日まで共に戦ってくれてありがとう」

 アレックスが二人に向かって頭をさげた。

「やだなぁ、なんか辛気臭いよ。最後もガツンっとやっちゃうから任せてよ」

 テルマがポンとアレックスの肩を叩きながら笑った。

「私もお二人と今日まで戦えたこと、誇りに思います。必ず生きて帰りましょう」

 マリアさんが二人に向かって優しく微笑んだ。
アレックスも二人に笑顔を向ける。そして彼はおれ達の方へと向き直った。

「カッシー、サーシャ。出会って間もないが君達にも感謝している。必ずおれ達が隙を作る。最後のとどめは君達に任せたぞ」

 アレックスが手を差し出してきた。おれは大きく頷きその手を握った。
咲耶もそれに続くように手を重ねた。そしてテルマとマリアさんもにっこりと微笑みながら手を重ねてきた。

 思えば見ず知らずのおれ達親子にとても親切にしてくれた三人。わずかな間だったけど本当にお世話になりっぱなしだった。

 その恩に報いるためにも、必ずや魔王討伐を果たさなければならない。



 扉の前に五人が揃う。

 テルマがなにやら呪文を唱えると扉はゆっくりと開き始めた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『おっさんの元勇者』~Sランクの冒険者はギルドから戦力外通告を言い渡される~

川嶋マサヒロ
ファンタジー
 ダンジョン攻略のために作られた冒険者の街、サン・サヴァン。  かつて勇者とも呼ばれたベテラン冒険者のベルナールは、ある日ギルドマスターから戦力外通告を言い渡される。  それはギルド上層部による改革――、方針転換であった。  現役のまま一生を終えようとしていた一人の男は途方にくれる。  引退後の予定は無し。備えて金を貯めていた訳でも無し。  あげく冒険者のヘルプとして、弟子を手伝いスライム退治や、食肉業者の狩りの手伝いなどに精をだしていた。  そして、昔の仲間との再会――。それは新たな戦いへの幕開けだった。 イラストは ジュエルセイバーFREE 様です。 URL:http://www.jewel-s.jp/

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

だいたい全部、聖女のせい。

荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」 異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。 いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。 すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。 これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。

いい子ちゃんなんて嫌いだわ

F.conoe
ファンタジー
異世界召喚され、聖女として厚遇されたが 聖女じゃなかったと手のひら返しをされた。 おまけだと思われていたあの子が聖女だという。いい子で優しい聖女さま。 どうしてあなたは、もっと早く名乗らなかったの。 それが優しさだと思ったの?

転生者ゴブリン初の貴族を目指します

滝川 海老郎
ファンタジー
転生したらゴブリンだった。長(おさ)の息子。洞窟暮らし。人間だったころに比べたら最低の生活。改善点はいくらでも出てきそうだ。ちょっとずつ生活をよくして村を併合して人間と取引する。取引に目をつけられたのだけど、それは幸いにして領主だったので……。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!

楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。 (リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……) 遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──! (かわいい、好きです、愛してます) (誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?) 二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない! ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。 (まさか。もしかして、心の声が聞こえている?) リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる? 二人の恋の結末はどうなっちゃうの?! 心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。 ✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。 ✳︎小説家になろうにも投稿しています♪

処理中です...