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第9話 魔王への扉
しおりを挟むおれは天の声とのやり取りをアレックスに聞かせた。どうやら彼も初めて聞いた話らしくかなり驚いていた。
「まさかそんなまじないがあったとは……テルマは知ってたか?」
「ううん。そんなの文献でも読んだことなかったよ」
その横にいたマリアさんも首を横に振っていた。
「まあなんにせよ、おまえ達を連れて来てよかったな。じゃあ破邪の豆はカッシーに渡しておくぞ」
アレックスがおれに豆の入った袋を渡してきた。
「重っ!」
あまりにずっしとしたその重さに、おれは危うく落としそうになってしまった。
触ってみると、どうやら本当に金でできてるようだった。二、三粒くらいならポッケにしまってもバレないんじゃないか?
おれは豆を掴んでそっとポッケに忍ばせた。
「パーパ!」
咲耶が指を立てながらチッチッチと左右に振った。
「はい。すみません……」
おれは袋の紐をキュッと縛り腰にぶら提げた。鎧着て、刀持って、お腰に袋ぶら提げて……気分はすっかり桃太郎だ。うちのお供の猿キジ犬は恐ろしく強いけど。
まさにおれが言った通り、魔王城の中でも勇者パーティーの戦いぶりは凄かった。
もちろん咲耶も。
多少おれも貢献してはいたが、相変わらず信長が出てきてくれない。はたして本当に信長なのか? 信長の刀に森蘭丸とかが入ってたんじゃないのか?
そんな事を考えているうちに、気付けば魔王の部屋の前へとたどり着いていた。
重厚な扉の向こうには魔王が待ち受けている。
アレックス達も緊張しているのか、空気がピンと張り詰めていた。
「いよいよ魔王との戦いだ。テルマ、マリア。たぶんこれが最後の戦いになる。今日まで共に戦ってくれてありがとう」
アレックスが二人に向かって頭をさげた。
「やだなぁ、なんか辛気臭いよ。最後もガツンっとやっちゃうから任せてよ」
テルマがポンとアレックスの肩を叩きながら笑った。
「私もお二人と今日まで戦えたこと、誇りに思います。必ず生きて帰りましょう」
マリアさんが二人に向かって優しく微笑んだ。
アレックスも二人に笑顔を向ける。そして彼はおれ達の方へと向き直った。
「カッシー、サーシャ。出会って間もないが君達にも感謝している。必ずおれ達が隙を作る。最後のとどめは君達に任せたぞ」
アレックスが手を差し出してきた。おれは大きく頷きその手を握った。
咲耶もそれに続くように手を重ねた。そしてテルマとマリアさんもにっこりと微笑みながら手を重ねてきた。
思えば見ず知らずのおれ達親子にとても親切にしてくれた三人。わずかな間だったけど本当にお世話になりっぱなしだった。
その恩に報いるためにも、必ずや魔王討伐を果たさなければならない。
扉の前に五人が揃う。
テルマがなにやら呪文を唱えると扉はゆっくりと開き始めた。
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