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冬の訪れ
しおりを挟む静かに寝息を立てる彼女に、僕はそっと忍び足で近づいた。
最近は仕事が忙しいのか、今日も帰って来るなりシャワーを浴びてすぐにベッドに飛び込んでいた。
いつもなら「ただいまー」という声と同時に僕をギュッと抱き締めて頬ずりしてくるのだけど、今日はおでこに軽く「チュッ」とキスをしただけだった。
会社で嫌な事でもあったのだろうか?
それとも僕には言えないような何かがあるのだろうか?
一緒に暮らすようになって早五年。
彼女はいつだって僕に愛情を注いでくれた。
もちろん僕にとっても、彼女は掛け替えのない大切な存在だ。
彼女が笑えば、僕も嬉しくなり。
彼女が落ち込むと、僕も悲しくなってしまう。
まさに一心同体だと僕は思っている。
この時期、夜は冷えるというのにベッドの上の彼女は毛布も被らず丸まっている。
仕方なく僕は彼女の背中にぴたっとくっつくようにして寝転んだ。
少しずつ温かくなっていく彼女の背中。
それでも、こんなものは付け焼刃だと少し心配になってしまう。
すると彼女がむにゃむにゃとなにか寝言を呟きながら足元の毛布を手繰り寄せた。
彼女が毛布を頭から被ると僕の体もすっぽりとその中に納まった。
しばらくすると、毛布の中は僕と彼女の体温でぽかぽかと暖かくなり始める。
ちょっと息苦しいけど風邪を引くよりはましだろう。
彼女は寝返りを打ってこちらを向くと、おもむろに僕の体をギューッと抱き締めた。そしていつものように僕を撫でながら嬉しそうに微笑んだ。
幸せそうな彼女の寝顔を見てようやく僕も安心した。
これでゆっくり寝れそうだ。
まったく人間てのはホントに世話が焼けるニャ。
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