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盛り忘れ
しおりを挟むSNSで知り合った女性におれは運命を感じた。
メールでのやり取りはとても楽しく話が合う。映画や音楽の好みも一緒で趣味も同じ。食べ物の好みも似てるし色んな価値観がぴったり一致する。
おまけにSNSに載せている写真はどれも可愛くて、最初は画像を加工しているのではと疑ったほどだ。彼女は毎日のように写真をアップし、おれも毎日のようにイイネを送る。
昨日の写真なんかは本当にアイドル顔負けのとってもお洒落で映《ば》えたモノだった。おれは休憩中にそれを見ながら彼女への恋心を募らせていた。
実は来週、ついに彼女とデートするところまで漕ぎつけた。もちろんおれも彼女には自分の写真を送っているし、彼女はおれの事をかっこいいと言ってくれた。もしかしたら来週の今頃は彼女と付き合う事になっているかもしれない。そんな事を考えながらおれはお店の掃除を始めた。
おれが働くカフェは都内でもお洒落なお店として有名だ。外観が特にかっこよくて、よくモデルやインフルエンサーの女の子たちがうちの店が映り込むように写真を撮っている。いつか彼女を連れて来よう。そんな事を考えながらおれは丁寧にガラス窓を拭いていた。
そんな時、彼女が新しく写真をアップしたという通知が届いた。おれは掃除の手を止めわくわくしながら彼女のSNSを開く。
そこにはうちのお店の前を颯爽と歩きながら自撮りしている写真が載っていた。おれは思わず「おっ」と声に出しながら笑顔になった。彼女は相変わらず可愛くて、まるでお洒落な雑誌に載ってそうな写真だった。
おれはしばらくの間その写真を見ていたが、ある事に気がつき顔がスンっと無表情になった。なぜなら、今まさにおれが磨いている窓ガラスに映った彼女の顔は全くの別人だったからだ。
おれは彼女のアカウントをブロックするとスマホをポケットに入れ、また丁寧にガラスを拭き始めた。
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