「おかしな収束」~妻のスマホのロック画面

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寝起きのドラゴン

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 千年に一度目覚めるといわれているドラゴンがいた。

 言い伝えによれば、のドラゴンが目覚めれば野山は焼かれ、街は破壊の限りを尽くされる。その圧倒的な強さに成す術はなく、人々は蹂躙され国は滅びゆく。

 事実、およそ千年前にその国は滅ぼされた。生き残った人々は新たな国を一から作り復興を始めた。九百年以上の歳月をかけ大国へとのし上がり、今やその国は繁栄を極めつつあった。

 ドラゴンが目覚めるまで残り一年。かつて滅ぼされたようにはいかぬと、軍備を強化し強力な軍隊を作り上げた。世界に名だたる冒険者達をも集め、ドラゴンが目覚める前に討ち取ろうと画策した。


 しかしその目論見は脆くも崩れ去る。軍隊による攻撃も眠ったまま尻尾で薙ぎ払われ、冒険者達の魔法や剣技も翼の羽ばたきひとつで吹き飛ばされた。

 もはや打つ手はなかった。真っ先に国王は逃げ出し、人々は続々と国を離れいく。


 ドラゴン復活の時が迫る中、ある一人の少年がその根城へとやってきた。彼の名前は嘘つきヘルナス。

 彼は嘘をつくのが大好きで年がら年中、人を騙くらかしていた。もはや街では彼の言う事を信じる者はおらず、親ですら彼の本当の名前を忘れてしまったほどだ。

 
 彼がドラゴンの傍に立つと大きな欠伸と共にそれは目を覚ました。

「人間よ、われが眠りについて幾年いくとせが経ったのか教えよ。たばかっても無駄じゃぞ。我は嘘を見破れる」

 ドラゴンの問い掛けにヘルナスは自信たっぷりに答えた。

「あなたが眠りについてちょうど五百年が経ちました。お目覚めになるにはまだ早いかと」


 ドラゴンがぎろりとヘルナスを睨むように凝視した。だがにこにこと笑う彼の表情は変わらない。

 やがてドラゴンは翼を折り畳み静かに目を閉じた。ヘルナスはそれを見届けると街へと戻った。


「やったぞー! ドラゴンは再び眠りについた! 後五百年は目覚めないぞ!」

 ヘルメスは街中で歓喜の声を上げた。だが彼の言葉に耳を傾ける者はいなかった。馬車に荷を積み、人々は国から逃げていった。

 そして最後に残ったヘルナスも嘘をつく相手がいなくなり、結局国を去って行った。


 それから五百年の時が経ちドラゴンが再び目覚めると、そこには誰一人として人間の姿はなかった。







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