13 / 23
寝起きのドラゴン
しおりを挟む千年に一度目覚めるといわれているドラゴンがいた。
言い伝えによれば、彼のドラゴンが目覚めれば野山は焼かれ、街は破壊の限りを尽くされる。その圧倒的な強さに成す術はなく、人々は蹂躙され国は滅びゆく。
事実、およそ千年前にその国は滅ぼされた。生き残った人々は新たな国を一から作り復興を始めた。九百年以上の歳月をかけ大国へとのし上がり、今やその国は繁栄を極めつつあった。
ドラゴンが目覚めるまで残り一年。かつて滅ぼされたようにはいかぬと、軍備を強化し強力な軍隊を作り上げた。世界に名だたる冒険者達をも集め、ドラゴンが目覚める前に討ち取ろうと画策した。
しかしその目論見は脆くも崩れ去る。軍隊による攻撃も眠ったまま尻尾で薙ぎ払われ、冒険者達の魔法や剣技も翼の羽ばたきひとつで吹き飛ばされた。
もはや打つ手はなかった。真っ先に国王は逃げ出し、人々は続々と国を離れいく。
ドラゴン復活の時が迫る中、ある一人の少年がその根城へとやってきた。彼の名前は嘘つきヘルナス。
彼は嘘をつくのが大好きで年がら年中、人を騙くらかしていた。もはや街では彼の言う事を信じる者はおらず、親ですら彼の本当の名前を忘れてしまったほどだ。
彼がドラゴンの傍に立つと大きな欠伸と共にそれは目を覚ました。
「人間よ、我が眠りについて幾年が経ったのか教えよ。謀っても無駄じゃぞ。我は嘘を見破れる」
ドラゴンの問い掛けにヘルナスは自信たっぷりに答えた。
「あなたが眠りについてちょうど五百年が経ちました。お目覚めになるにはまだ早いかと」
ドラゴンがぎろりとヘルナスを睨むように凝視した。だがにこにこと笑う彼の表情は変わらない。
やがてドラゴンは翼を折り畳み静かに目を閉じた。ヘルナスはそれを見届けると街へと戻った。
「やったぞー! ドラゴンは再び眠りについた! 後五百年は目覚めないぞ!」
ヘルメスは街中で歓喜の声を上げた。だが彼の言葉に耳を傾ける者はいなかった。馬車に荷を積み、人々は国から逃げていった。
そして最後に残ったヘルナスも嘘をつく相手がいなくなり、結局国を去って行った。
それから五百年の時が経ちドラゴンが再び目覚めると、そこには誰一人として人間の姿はなかった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる