9 / 23
孤島の王様
しおりを挟むパシャール王は猜疑心の塊であった。
第二王妃を母に持つ彼は小さい頃から命を狙われ続けた。後継者争いはいくつかの派閥に分かれており、中でも強硬派である第一王妃派の力は相当であった。
第三、第四王妃の子はすでにこの世を去り、残る後継者候補は第一王妃の子、フランジとパシャールのみ。故にパシャールは毎日のように暗殺の危機に晒されていた。
だが彼は生き残った。フランジは成人を前に病に倒れ、遂にパシャールが王となった。
彼の治世は平和そのものだった。
優秀な官僚達、そして美しく優しい王妃にかわいい息子。国は豊かで外交も実にうまく行っていた。
しかしパシャールが心穏やかに過ごす事はなかった。小さい頃から培われた、人を疑う心。王となった今でも、それは変わらぬどころか年追う毎に増していく。
隣国へと出向いた時、護衛の騎士団長が不穏な動きを見せたとして処刑した。
とある催事で側近の官僚達が何やら企んでいるとし牢獄送りとした。
王妃が自分を殺し王子に国を継がせようとしていると騒ぎ立て、親子共々遠い国へと追放した。
やがてその狂気は国民にまで及ぶ。反乱を抑制する為、ありとあらゆる掟を作った。それは国民達がまともな生活を送れない程だった。
やがて人々は国を出る。農地は荒れ果て王国は衰退していった。
それを見かねた者達が遂に反乱を起こした。パシャール王は捕えられ絶海の孤島へと送られた。
「貴様はここで野垂れ死ぬがいい!」
パシャールを船から蹴落とした兵士が唾を吐きかけ去って行った。
そこはまさに無人の島。人はおろか獣さえいなかった。
そしてその夜、パシャールは生まれて初めて心穏やかに眠る事が出来た。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる