サレ彼が浮気相手との仲を全力で応援してくる

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第4話 盗み聞き

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 冬至に別れを告げられてから2週間。なんとなく学校でも距離を置かれている気がする。立夏と雨水のお陰でなんとか誤魔化せてるけど、やっぱり気分は晴れない。

 雨水からの告白もまだ返事はしていない。冬至のことは忘れなきゃと、頭ではわかっているけど最後の踏ん切りがつかない。L1NEの通知音が鳴る度にやっぱり期待してしまう。


「何飲むー? 取ってきてあげる」

 今日は立夏に誘われて雨水と三人でカラオケにやってきた。ここんとこ立夏はいつも私の事を気に掛けてくれるし、雨水との関係もぎくしゃくしている訳ではない。やっぱり持つべきものは幼馴染だ。 

「んじゃナチカ、デュエットしよーぜ」

「オッケー。何歌う?」

 今日は冬至のことは忘れて思いっきり楽しもう。



 隣の部屋から夏至と雨水の歌声が聴こえてきた。その声に耳を傾けているとドアが開き立夏が入ってきた。彼女は入って来るなり声を荒げる。

「ちょっとフユキ! なんで白露はくろがここにいんのよ!」

 横に座っていた黒髪の美少女がおれにピタッと体を寄せてきた。

「いーじゃん。僕もナチカちゃんのこと気になるしぃ」

 白露がくすくすと笑いながら答えた。美少女とは言ったが彼女は正真正銘の男だ。おれと同じクラスで初めて見た時は女だと思っていた。彼女はいわゆる両刀使いでその日の気分で女子になったり男子になったりしている。

「それよりリッカ、スマホはちゃんと置いてきた?」

「うん。ちゃんと見つからないようにしといたよ」

 そう言って彼女は白露とは反対側に座り、胸を押し付けるようにしておれの腕にしがみついてきた。そんな彼女に白露がにんまりと笑いかける。

「相変わらずおっきいねぇ。ちょっと揉ませて」

「なんであんたなんかに! これはフユキだけのもんです~」

「ちょっと静かに」

 おれが人差し指を口元に当てると二人はハッと口を押えた。立夏のスマホに繋いだおれのスマホから隣の部屋の会話が聞こえ始める。

『リッカ何してんだろ? 遅いね~』

『ナチカ……こないだの返事まだ聞いてないけど?』

『うん……やっぱりウスイは幼――』

『ナチカ!』

『ちょ、ちょっと待――』

 これはたぶんキスしてるのだろう。わずかに舌が絡む音が聞こえてくる。白露がおれの下腹部を指差しながら立夏に小さく手を振っている。

「リッカ。見て見て。すごいよ」

 立夏は少し驚いたような顔をしながら、下に上にと視線を動かしていた。

『あんっ……ちょっとウスイ、そこはダメ……』

 心臓が早鐘を打つようにドクドクと音を立て、おれは呼吸が熱くなるのを感じた。そして無意識の内に両脇にいた二人の肩を強く抱いていた。二人の顔が蕩けたような表情へと変わる。

『もうやめて! 私はやっぱりフユキが好きなの! もう帰る!』

『ごめん……』

 ドアが開く音がスマホから聞こえるとおれ達の部屋の前をナチカが通り過ぎて行った。おれはがっくりと肩を落とし項垂れた。

「あらら~ウスイくんでもダメだったかぁ」

 白露がストローでジュースをチューチューと飲みながら言った。一方立夏は頬を膨らませながら少し怒った様子だ。

「馬鹿ウスイ! 焦り過ぎなんだっつーの!」

 は~あ、と溜息をはきながら彼女は隣の部屋へと戻って行った。白露は彼女に手を振りながら見送るとおれの方へと向き直った。

「にしてもフユキくんの性癖って変わってるねぇ。あれくらいでもドキドキしちゃった?」

 おれが無言でいると白露は話を続けた。

「ねぇ。私がナチカちゃん落としてあげよっか?」

 おれが横目でちらりと見ると、白露はふふふと笑っておれの頬にキスをした。


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