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第2話 歪んだ愛情

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 冬至に画像を見せられて私はサーっと血の気が引いた。

「え……なにこれ? なんで?」

「小雪ちゃんが送ってくれたんだ。昨日偶然見たんだって」

 小雪は同じ中学出身で今は私と同じ高校に通っている。昨日もカラオケまでは一緒に遊んでいた。

「小雪が……」

 風の噂で彼女は冬至が好きだったと聞いたことがある。もしかしてはめられた?

「これは違うのフユキ! ちょっとふざけて入っただけなの! 絶対なにも――」

「ごめんナチカ! 君の気持に気づいてあげられなくて……」

 突然冬樹が頭を下げながらそう言った。てっきり責められると思った私は呆気に取られてしまう。

「え……?」

「ナチカはその人のことが好きなんだろ? なのにおれに気を遣って別れを切り出せなかったんだよな?」

「違うっ! ホテルには行ったけどほんとに何もなかったの!」

「ナチカ……本当のことを言ってくれ」

 冬至は今まで見たことがないくらいの悲しい顔をしていた。こんなにも辛い思いをさせてしまったことを私は後悔した。

「キスは……した。でも! いきなりで避けようがなかったの!」

 キスという言葉を聞いた瞬間、冬至の唇の端がわずかに吊り上がったように見えた。でもすぐにまた沈んだ表情になったから私が見間違えたのかと思った。

「本当にそれ以上はなにもしなかったの?」

「お願い信じて。ホテルに行ったことは謝る。ただほんとに興味本位で行っただけなの……」


 冬至は天井を見上げながらなにか考えているようだった。このまま別れを告げられたらどうしよう……手が震え嫌な汗が背中を伝った。

「ナチカ、おれ達は恋人でもあり幼馴染でもある。だから君がおれを傷つけたくないって思う気持ちもわかるんだ。でも自分の心には嘘はつかないでほしい」

「私が好きなのはフユキだけ! あんな男なんてなんとも思ってないの!」

「ナチカ……なんとも思ってない人とラブホなんかに行くわけないだろ? おれは平気だから君は彼と付き合うべきだ」

「いや! 私はフユキと別れたくない!」

 泣きじゃくる私の肩をフユキがしっかりと掴んだ。そしていつものように優しく微笑んだ。

「おれはまた幼馴染に戻れたらそれでいい。君たち二人を遠くから見守っているよ」

「やだぁ……フユキぃ、行かないでよぉ……」

 彼は静かに部屋を出て行った。後に残ったのは虚しいまでの後悔と床に落ちた私の涙だけだった。




 夏至の家を出でからおれは待ち合わせの場所へと向かった。店に入ると小雪は先に着いていた。おれを見つけるとにこにこと笑いながら手を振ってきた。

「どうだった?」

 おれがテーブルに座ると満面の笑みでそう訊いてきた。

「どうもこうもねぇよ。ナチカはキスまでしかやってないって言ってたぞ」

 小雪の顔が一瞬で焦りの表情へと変わった。

「嘘! あいつ最後までやったって言ってたのに!」

「だいたい動画も撮ってないから怪しいとは思ってたんだ。使えねぇな~あいつもおまえも」

「ごめん……」

 今にも泣きそうな顔で小雪がしゅんと下を向いた。おれは小雪が食べていたポテトに手を伸ばした。

「もういい。おまえには任せらんねぇよ。他のやつに頼むから」

「やだやだ! 次はちゃんとやるから捨てないでよ! ふーくん!」

「うるせえ! だったらちゃんとナチカを落とせる男探してこい!」

「わかった……私がんばるから」

 おれは小雪の顔を引き寄せると激しく口を吸いながら舌を絡めた。すると小雪は目をトロンとさせた。

「いいか? おれはナチカが他の男に抱かれているのを見たいだよ。想像しただけでも体が熱くなる。おまえだって早くおれに抱いて欲しいだろ?」

 小雪は何も言わずにこくんと頷いた。

「それともうひとつだけ言っておく。おれが愛しているのはナチカだけだ」

 そう言っておれは立ち上がった。小雪は再び下を向いていた。


 店を出ると夏至から「ごめん」という短いメッセージがスマホに届いていた。




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