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【第三章】王都国立学園へ
目覚めの朝
しおりを挟む―翌朝。
小鳥のさえずりで、目を覚ましたレイ。
「ここは……。そうだった、団長さんの家に泊まらせてもらったんだったわ」
客室のベットの上で、ひとりごとを呟く。
すると、ベットの下から何かが顔を出した。
「レイ!おはよう!」
ベッドの下から顔を覗かせたのは、コハクだ。昨晩、コハクも客室で寝て過ごしたようだ。
レオンはというと、
「フェ、じゃなかった。レオン、起きて」
「ん、ん?」
「朝よ。今日は森の皆に伝えに戻らないと」
「ふわぁ……。そう、だったな」
そう、レオンもコハクと同じく、客室でレイたちと夜を明かした。
レオンとレイが一緒に寝ることになった時は、コハクがとても羨ましがり、なだめるのに苦労したのだとか。
レイたちが話していると、客室の扉がノックされた。
「どうぞ」
彼女の返事を聞いて、ノックした人物が客室へ入ってきた。
「レイ様。おはようございます」
「おはようございます」
「朝ご飯の支度が出来ましたので、皆様の御着替えのお手伝いと、身支度が終わり次第、食卓へ案内をさせていただきます」
入ってきたのは、エイミーだった。
「お願いします」
「畏まりました」
エイミーは、手慣れた手つきでレイの服を身繕い、髪を整えていく。
「あれ?」
支度の準備をしてもらっているレイは、あることに気がついた。
「エイミーさん」
「なんでしょうか、レイ様」
「貴女って、もしかして精霊と契約してる?」
「どうしてお分かりに……」
エイミーは作業している手を止めた。
レイの言う通り、彼女は精霊と契約していた。
【精霊】精霊は、まだ解明されていないことが多い存在。
自然のエネルギーが実体化したものという説がある。
その訳は、上位種の精霊に限るが、水の精なら、大雨を降らし、反対に雨を止ませたり、風の精なら、風を静めたり、竜巻を起こしたりといった様に、自然の力を操る力を持つからだ。
彼らは、波長の合う人間に出会うと、その者に加護を与えることがあるらしい。
ほとんどの人間には、精霊の姿は淡く光る存在としてしか見えず、彼らの真の姿を見ることが出来る者は数少ない。
また、真の姿が人の姿に近ければ近いほど、力のある上位種になり、人間にも姿を見ることが出来る。
「貴女のそばにずっといるもの。貴方の仕事をしている姿が好きなのね。水の精かしら?」
「はい。もしかして、レイ様には精霊の姿が見えているのですか?」
「ええ」
「この子の姿が見える方に出会ったのは、初めてです」
「貴女にも見えているの?」
「いえ。私は光にしか見えません」
そう言って、水の精に手を伸ばしたエイミー。
精霊は、それに応えるように、彼女の手のひらに乗った。
「淡い水色の髪で、人魚のような姿をしているわ」
「あなたはそんな姿をしているのね」
彼女は、自身の手のひらに乗っている精霊を優しく見つめている。
「その子、貴女と一緒にいれるのが嬉しいみたいよ」
「それは私も嬉しいです」
レイから精霊の様子を教えてもらった彼女は、ふわりと優しく笑った。
「レイ様、支度の続きをいたしましょう」
「そうね。お願いします」
「はい」
そして、再び支度の準備へと戻った。
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