森の愛し子〜治癒魔法で世界を救う〜

文字の大きさ
上 下
22 / 37
【第二章】セレイム王国へ

再び竜の間へ

しおりを挟む
 
「貴女は、先ほどの治癒師様」
 中から現れたのは、竜騎士団副団長のレヴィンだった。
「治癒師様はやめて、レイでいいわ。中の人たちはもう大丈夫そう?」
「失礼しました、レイ殿。ええ。おかげさまで。皆、食事もできるほどの回復を見せています。本当にありがとうございました」
 彼は、深く頭を下げた。
「それならよかったわ」
「ところで、レイ殿の隣にいる方はどなたでいらっしゃいますか?」
 と頭を上げたレヴィンは人の姿になったフェン、もといレオンに視線を移す。
「彼のことは気にしないで」
「先ほどは、見かけなかったのですが」
「私のことはレオンと呼んでくれて構わない。セルビオス国王の知り合いだ」
 レイは、触れないよう流そうとしたが、レオンが自ら名乗り出た。
「そう、なのですか」
 信じられないという顔のレヴィン。
「ああ」

「お二人は、ここに何か御用で?」
「いえ。団長さんと食事の約束をしたから、ここで待っているの」
「あいつが貴女を食事に誘ったのですか?」
「正確には、私とレオンが誘われたのだけど」
「あのカインが……」
 レヴィンは、有り得ないといった反応だ。
「副団長さんも、一緒に行く?」
「いえ、私は結構です。まだ仕事があるので」
「そうなの?だったら団長さんも、仕事があるんじゃないの?」
「まぁ、今日くらいは、大目に見ますよ。明日からは、休んだ分働かせますので」
「副団長さんは、意外と優しいのね。もっと厳しい方だと思っていたわ」
「今日だけです」

 そんな会話をしていたら、カインが着替えを済ませ戻ってきた。
「すまない!待たせた!……レヴィンいたのか」
「団長殿は、仕事が残っているというのに、これから食事に行かれるようですね?」
 黒い笑みを浮かべるレヴィン。
「っ!レヴィン怒っている、のか?」
「いいえ?貴方が仕事を置いて食事に行くことに対して、怒ってなどいませんよ?」
「すまない!レイ殿たちが今日は街に泊まるそうで、助けてもらった礼に案内しようと思って」
「はぁ。明日からは、きっちり働いてもらうからな」
「ああ、必ず!」
 レヴィンにたじたじのカイン。団長の威厳はどこへやら。

「団長さん」
「なんだ?」
「街に行く前に、少し竜騎士の人たちの様子を見て行っていいかしら?」
 レイは、竜の間にいる騎士たちの様子が気になるようだ。
「ああ。構わない」
「ありがとう」
 カインに許可をもらって、彼女は再び竜の間へ入る。
 すると―
「治癒師様!」
「聖女様!」
 レイが入ってきたことに気付いた騎士たちが声を上げる。
「人気者だな。聖女様?」
「からかわないで頂戴。レオン」
 レオンがレイをからかう。

 竜の間に入るとすぐにレイの前に、一人の騎士が来た。
「助けていただきありがとうございます!このご恩は一生忘れません」
 助けたレイに感謝を伝えに来たようだ。
「そういうの要らないから」
「ですが、助けていただいたのに何もしないのは、騎士の名に恥じます」
「だったら、食事をとって、早く寝て、騎士として万全の状態にならないと、いけないんじゃないかしら」
 冷たくいい放つレイ。
 しかし、紡ぐ言葉はとても優しい。
「はい!……治癒師様。回復したら、俺とお付き合いしてください!」
 彼女の言葉が嬉しかったのか、突然、告白をした騎士。
「は?!」
 それを聞いていたカインが、思わず声を出した。
「え。無理です」
 レイは、冷静にその告白を切り捨てた。
「治癒師様は、恋人がおられるのですか」
「いないけど」
「でしたら!」
「そういうのに興味ないの。ごめんなさい」
「そんなぁ」
 玉砕した騎士。
 彼の、熱烈な想いは届かなかった。

「(そう、なのか……)」
 彼女の言葉に、どこかで誰かも落胆していた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】失いかけた君にもう一度

暮田呉子
恋愛
偶然、振り払った手が婚約者の頬に当たってしまった。 叩くつもりはなかった。 しかし、謝ろうとした矢先、彼女は全てを捨てていなくなってしまった──。

王子様に恋をした【完結】

Saeko
恋愛
趣味は料理の平凡OLの私が王子様に恋をした。 彼とお付き合いをして一生懸命尽くしてきた王子様は、実は御曹司だった。 身分違いの恋が成就と思いきや、彼は幼なじみの令嬢とご婚約‼︎ ショックで立ち直れない私は、フラフラと道路に飛び出してしまい… ※改訂版 完結致しました。 ※数話ですが、加筆も致しました。 ※誤字脱字は、極力無いよう見直しを致しましたが、それでも漏れはあるかと思います。何卒御容赦下さいませ。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

少女漫画の当て馬女キャラに転生したけど、原作通りにはしません!

菜花
ファンタジー
亡くなったと思ったら、直前まで読んでいた漫画の中に転生した主人公。とあるキャラに成り代わっていることに気づくが、そのキャラは物凄く不遇なキャラだった……。カクヨム様でも投稿しています。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

処理中です...