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【第二章】セレイム王国へ
セルビオスとフェン
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「フェン!」
そう、現れた声の主は、フェンだったのだ。
「……!フェンリル王ではありませんか!」
目の前に現われフェンに、セルビオスも驚きを隠せない。
「久しいな。セルビス。それと私は、もう王ではない」
フェンは、彼をセルビスと愛称で呼んだ。
何やら面識がある様子の二人。それも親しげだ。
「ええ。お久しぶりでございます。王座を降りられたのですか?」
「ああ。今はただのフェンリルだ。あと、その堅苦しい話し方はやめてくれ。お前がその話し方をしているのは気味が悪い」
「っははは!これは、失礼した」
「フェン、国王と知り合いなの?」
二人の関係性に疑問を持ったレイが、フェンに小声で聞いた。
「ああ。こいつとは旧知の仲だ」
「フェンリル前王は、フェンと呼ばれているのか」
「前王も要らぬ。今の私は、この子の契約獣だ」
「冗談はよしてくれ、友よ」
フェンの発言に、王らしからぬ顔になってしまったセルビオス。
「嘘ではない。なあ、レイ?」
「ええ。彼にフェンと名づけ、契約したのは私です」
「はぁあああああ」
セルビオスは、頭を抱え、盛大なため息をついた。
「くっくっ。やはり、お前はいい反応をしてくれるわ」
そんな彼の反応を楽しむフェン。
「笑い事ではないぞ!」
二人の息の合ったやり取りに、周りの者は置いていかれている。
「レイ殿、これはどういったことだ?」
小声でレイに状況を聞くカイン。
「私も分からない。フェンが国王と知り合いなんて知らなかったわ」
「……ああ、すまない。君たちを置いて二人で話してしまった」
フェンが現れたことで、先ほどまでの威厳はどこか行ってしまったセルビオス。
この話し方が彼の素らしい。
「い、いえ」
様子が変わった国王に、レイはまた少し戸惑う。
「君は、暗闇の森で育ったと言っていたな。育ての親は、彼フェンリルなのかい?」
「当たらずとも遠からず、と言う所です」
「ほう、ということは他にも教えてくれる者がいたのか」
「はい」
「それはどんな者だ?」
セルビオスは、レイの話に興味津々だ。
「……。暗闇の森に住む生き物たちです」
彼女は少し自信なさげに話した。
「私の耳が遠くなってしまったかな。すまない、もう一度言ってもらえるかい?」
あはは、と苦笑いを浮かべるセルビオス。信じられないといった様子だ。
「暗闇の森に住む生き物たちに、教わりました」
そんなセルビオスを見て、レイは彼の目をまっすぐに見ながら、今度ははっきりと伝えた。
「陛下は、言葉を交わせない生き物と会話ができる力があるという者のこと信じますか」
レイは真剣な目で彼を見つめている。
「君には、それを証明することが出来るか」
その言葉を受けセルビオスもまた、真剣な眼差しを彼女に送る。
「それは……」
言葉に詰まるレイ。
「すまない。少し悪戯が過ぎたな」
彼女の様子を見て、彼は柔らかい表情を見せた。
そう、現れた声の主は、フェンだったのだ。
「……!フェンリル王ではありませんか!」
目の前に現われフェンに、セルビオスも驚きを隠せない。
「久しいな。セルビス。それと私は、もう王ではない」
フェンは、彼をセルビスと愛称で呼んだ。
何やら面識がある様子の二人。それも親しげだ。
「ええ。お久しぶりでございます。王座を降りられたのですか?」
「ああ。今はただのフェンリルだ。あと、その堅苦しい話し方はやめてくれ。お前がその話し方をしているのは気味が悪い」
「っははは!これは、失礼した」
「フェン、国王と知り合いなの?」
二人の関係性に疑問を持ったレイが、フェンに小声で聞いた。
「ああ。こいつとは旧知の仲だ」
「フェンリル前王は、フェンと呼ばれているのか」
「前王も要らぬ。今の私は、この子の契約獣だ」
「冗談はよしてくれ、友よ」
フェンの発言に、王らしからぬ顔になってしまったセルビオス。
「嘘ではない。なあ、レイ?」
「ええ。彼にフェンと名づけ、契約したのは私です」
「はぁあああああ」
セルビオスは、頭を抱え、盛大なため息をついた。
「くっくっ。やはり、お前はいい反応をしてくれるわ」
そんな彼の反応を楽しむフェン。
「笑い事ではないぞ!」
二人の息の合ったやり取りに、周りの者は置いていかれている。
「レイ殿、これはどういったことだ?」
小声でレイに状況を聞くカイン。
「私も分からない。フェンが国王と知り合いなんて知らなかったわ」
「……ああ、すまない。君たちを置いて二人で話してしまった」
フェンが現れたことで、先ほどまでの威厳はどこか行ってしまったセルビオス。
この話し方が彼の素らしい。
「い、いえ」
様子が変わった国王に、レイはまた少し戸惑う。
「君は、暗闇の森で育ったと言っていたな。育ての親は、彼フェンリルなのかい?」
「当たらずとも遠からず、と言う所です」
「ほう、ということは他にも教えてくれる者がいたのか」
「はい」
「それはどんな者だ?」
セルビオスは、レイの話に興味津々だ。
「……。暗闇の森に住む生き物たちです」
彼女は少し自信なさげに話した。
「私の耳が遠くなってしまったかな。すまない、もう一度言ってもらえるかい?」
あはは、と苦笑いを浮かべるセルビオス。信じられないといった様子だ。
「暗闇の森に住む生き物たちに、教わりました」
そんなセルビオスを見て、レイは彼の目をまっすぐに見ながら、今度ははっきりと伝えた。
「陛下は、言葉を交わせない生き物と会話ができる力があるという者のこと信じますか」
レイは真剣な目で彼を見つめている。
「君には、それを証明することが出来るか」
その言葉を受けセルビオスもまた、真剣な眼差しを彼女に送る。
「それは……」
言葉に詰まるレイ。
「すまない。少し悪戯が過ぎたな」
彼女の様子を見て、彼は柔らかい表情を見せた。
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