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番外編・百合花(さくらママ)
④
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「パパ今日も送ってね」
近頃「送って」「迎えに来て」「あれ買って」しか志郎に話しかけない長女のあおいがまたお決まりの文句を言っている。志郎はシンプルにうんとか、そういう感じで返事をする。塾の迎えの話だ。今までは百合花が保育園に行ってからそのまま迎えに言っていたが、時間帯が遅くなっただかで志郎が送迎している。志郎は二人に何かをこっそり買い与えているようだ。あおいは何をするにももうすっかり女っぽくなっていて、志郎は接し方がわからないのだ。次女のももは幼く見えるがすごく冷静なところが志郎は昔から苦手と見えて、とにかくこの二人と居ても間が持たないから何か買ったりしているのだと思う。
志郎は何故かものすごく女に苦手意識がある。女としての女ならいいのだが、同じクラスの女子だったり、同僚の女性だったり、とにかく自分と性的に接触しない女がダメなんだそうだ。それは意識しすぎなんだ、男も女も同じ人間なんだと話しても届かない。そして残念ながら家庭内には女しかいない。
ひょっとしたら百合花のことも、性的対象から外れたということは苦手と思っているかもしれない。そういえば最近志郎と話していない。セックスしていないから、仲良い会話が難しい。
「で、勉強はどうなの」
百合花が訊くと、あおいは逃げるように部屋に引っ込んだ。中学受験を考えている。あおいは成績がいいからいけると思うのに、あまりやる気がない。志郎は公立でいいじゃないと言っていたが、百合花は後々のことを考えると中高一貫、できれば大学付属のところがいいと思う。百合花のような仕事はハードで辛いが、高収入で生活には困らない。せめて自分くらいの大人になって欲しい。そのためには若いうちから私立に入れて意識を保っておくのが大事なのだ。
「あおいは公立に行きたいんだろ」
志郎が口を挟んできた。百合花は反論した。
「受験勉強したくないだけ、逃げてるだけでしょ」
「友達と離れたくないんじゃないの」
「すぐ新しい友達ができるじゃない」
志郎はきっと中学受験に反対なのだ。わかっている。しかし合格できる学力があるのに受験しないのは損な気がする。
志郎はそのまま立ち上がってトイレに入った。トイレが長くて毎度腹が立つ。百合花に意見してきたことが気に入らないのか、女を敵視していることが気に入らないのか、セックスを断ってきたことが気に入らないのか、とにかくこのままトイレからどこかの世界に行って二度と出てこなくてもいいという気分になった。
近頃「送って」「迎えに来て」「あれ買って」しか志郎に話しかけない長女のあおいがまたお決まりの文句を言っている。志郎はシンプルにうんとか、そういう感じで返事をする。塾の迎えの話だ。今までは百合花が保育園に行ってからそのまま迎えに言っていたが、時間帯が遅くなっただかで志郎が送迎している。志郎は二人に何かをこっそり買い与えているようだ。あおいは何をするにももうすっかり女っぽくなっていて、志郎は接し方がわからないのだ。次女のももは幼く見えるがすごく冷静なところが志郎は昔から苦手と見えて、とにかくこの二人と居ても間が持たないから何か買ったりしているのだと思う。
志郎は何故かものすごく女に苦手意識がある。女としての女ならいいのだが、同じクラスの女子だったり、同僚の女性だったり、とにかく自分と性的に接触しない女がダメなんだそうだ。それは意識しすぎなんだ、男も女も同じ人間なんだと話しても届かない。そして残念ながら家庭内には女しかいない。
ひょっとしたら百合花のことも、性的対象から外れたということは苦手と思っているかもしれない。そういえば最近志郎と話していない。セックスしていないから、仲良い会話が難しい。
「で、勉強はどうなの」
百合花が訊くと、あおいは逃げるように部屋に引っ込んだ。中学受験を考えている。あおいは成績がいいからいけると思うのに、あまりやる気がない。志郎は公立でいいじゃないと言っていたが、百合花は後々のことを考えると中高一貫、できれば大学付属のところがいいと思う。百合花のような仕事はハードで辛いが、高収入で生活には困らない。せめて自分くらいの大人になって欲しい。そのためには若いうちから私立に入れて意識を保っておくのが大事なのだ。
「あおいは公立に行きたいんだろ」
志郎が口を挟んできた。百合花は反論した。
「受験勉強したくないだけ、逃げてるだけでしょ」
「友達と離れたくないんじゃないの」
「すぐ新しい友達ができるじゃない」
志郎はきっと中学受験に反対なのだ。わかっている。しかし合格できる学力があるのに受験しないのは損な気がする。
志郎はそのまま立ち上がってトイレに入った。トイレが長くて毎度腹が立つ。百合花に意見してきたことが気に入らないのか、女を敵視していることが気に入らないのか、セックスを断ってきたことが気に入らないのか、とにかくこのままトイレからどこかの世界に行って二度と出てこなくてもいいという気分になった。
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